4-ⅩⅢ ~一方そのころ、安里たちは~

「やれやれ。蓮さんたちとははぐれてしまいましたねえ」


 安里修一と朱部純は、気絶したテレビクルーの面々を砂浜に寝かせていた。夕月たちキャストも一緒である。全員、水は既に吐き出させた後だ。


 咄嗟に安里が拾うことができたのはこのメンツだけだ。蓮と愛、それに夢依とボーグマンは、海に落ちた時に流されてしまったらしい。

 とはいえだ。全員が無事であることは把握ができている。


 ボーグマンと夢依は一緒にいるようだし、蓮も愛と一緒にいるので、互いに大丈夫だろう。ひとまず島に上陸してしまったが、残りのメンツも島を目指すだろうことは分かっている。


「……気絶してて良かったわね、あなたの伯母さん」

「ええ、本当ですよ」


 朱部の言葉に、安里は頷いた。


 彼女たちを運ぶとき、安里は転覆したボートと同化した。そのままボートを侵食すると、再構築を利用して体勢を立て直す。朱部はすかさずボートとなった安里に、クルーを乗せていった。

 一方で安里も、ボートから触手を伸ばして夕月たちを絡めると、そのまま自分の下へと引き寄せる。近くまで寄せれば、引き上げるのは朱部の役目だ。

 あとはそのまま潜水艦のように天蓋を造り、水中を進みながら島へと移動したのである。


「それにしても、結構な深さですよね、この海」

「マングローブがある場所とない場所では、全然深さが違うみたいね」

「おそらく、昔はもっと地表が高かったんでしょうね。この島の部分は、大きな島の一郭なのかもしれません」


 永い年月をかけて、海面が島を浸食していったのだろう。そして、現在残っているのが、この小さい島のみとなっているのか。


「それで、これからどうするの?」

「決まってるでしょう。待ちですよ」


 安里は腕を黒く変化させると、そのまま自分の腕を引きちぎる。それを放り投げると、砂浜にあっという間に黒い大型テントが出来上がった。


 腕を再生させながら、安里はにっこりと笑う。


「せっかく浜辺にいるんですから、BBQとでもしゃれこみましょう」


 ついでに釣り竿も作ると、朱部に放り投げた。


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