第8話 優秀な候補達
私の答えは一つしか持ち合わせておりません。
「お断り致します」
「なんでだよ?! 君だって僕の事が好きだろ? 良く一緒に居たじゃないか!!」
「そもそも貴方は候補の一人でしたから、貴方の事を知ろうと一緒に過ごす時間を作っておりましたが、恋するような感情は今も昔も特にないですわね。それに当時から婚約者候補は貴方を含めた六人おりましたので、その中でジャンが特別という事も一切ありませんでしたわ」
本来ならば、学園に通う前までに二人か三人までに候補を絞る予定だったのです。私の両親が健在であれば……いえ、不慮の事故でしたもの。誰もが予想出来ませんでした。
「…うそだ…」
「あら、学園に通う前に我が家で開いた送別パーティで貴方も他の候補と会ったでしょう? 伯爵家の三男とか子爵家の次男とか…挨拶だけでなく、何かの話題で盛り上がっていたじゃない。気付いてなかったの?」
基本的に候補と会う時は一人ずつ会っておりましたが、あの日のパーティは別でした。それまでは辺境領に行けば私が居ましたが、卒業するまで王都暮らしになりますもの。ジャン以外の候補の皆さまは余念なく、私との連絡手段等を確認されておられました。
「え。……あ! アイツらが…? と、年上だったから、友人とか親族とかそんなだと、ばかり……」
「そうね、私と同じ年齢の候補は貴方だけだったけど、五つ程上ぐらいなら普通でしょう?」
「ワシとしては、ガーランド君がおススメだがなぁ」
「あら、私はセンドリック君を推してますわ。物腰が柔らかく、見目も良いですし」
お祖父様とお祖母様が薦める候補は、私としても好ましく思う男性です。実は学園に通っている三年間に候補の皆さまを見極め、二人までに減らしたのです。――私が学園に通っているからといって、全く会えない訳ではありませんもの。わざわざ、私の誕生日に合わせて、王都に来られた方もおられましたし――残ったこのお二方とはずっと手紙や贈り物等のやり取りもしておりました。
因みにジャンには、学園に通い出してすぐ手紙等送っても一切返事がなかったのもあり、一番最初に私の中で候補から外しておりました。その後に実家からの手紙で事情を知り、正式に外す事が決まったのです。
…そうですわね、本当はお昼に話そうと思っていたのですが、先に伝えておきましょう。
「お祖父様、お祖母様。実はもう一人、新たに候補が出来ましたの。学園の卒業パーティーで婚約が解消されて独り身になられまして。成績も性格も、大変優秀な方ですのよ。候補のお話しは伝えてありますので、申し入れの手配をお願いしますわ」
「あぁ、最後の手紙にあった彼か…。分かった、こちらから申し入れをしておこう」
これで最終候補は三人ですわ。候補の追加は予定外でしたが、卒業パーティのあの婚約破棄も予想外の事。一つ年上ですが、共に何度も様々な意見を討論し合った仲でもありますので、互いに気心は知れています。
もし候補から最終的に外すことになっても、一度でも我が家との縁が出来た事は相手側にとっても損はありません。自立する上での支援も致しますし、職の紹介や、新たな婚約相手の手配も相手が望めば用意致します。
本来ならばジャンにも他の方と同じように、我が家から支援をするはずでしたのにね。私が卒業するまで、例え候補から外れても変わらず離れを提供した事が、我が家からの温情であり支援だったと言えるのかしら。
でもそれも、今日でおしまいです。
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