再会、任務スタート!
馬に
「でも何で急に堕ちた者が現れたんだ?」
「わからないよ。でも早く対処しないと近隣の人々が危ないよね。村長さんも無事だといいんだけど……」
「きっと無事さ。僕らで救い出すんだろ?」
「……うん!」
脚を早めて堕ちた者の拠点へ向かう。
楓は先に行って分析をしてくれている。流石放浪騎士だ。仕事が早い。
まさか再会祝いに高難易度依頼を投げてよこすとは思ってもみなかったが。
「
突然変異で闇の魔力を纏った人間。高威力魔法を使い、中には禁術を完成させた者もいる。普通堕ちた者の討伐は
闇の魔力を纏った魔法は兎に角タチが悪い。なんせ魔法を引きつけるのだ。堕ちた者が魔法を使っている限り、物理攻撃以外は意味を成さない。
しかし「弱き者の護り手」に所属する仄華、楓は物理攻撃専門の戦闘員だ。さらに僕の魔法は回復魔法であり、相手には効果をなさない。つまり今回の任務の勝敗を握るのは、「経験」と「連携」だ。
経験に関して、僕と仄華は劣強学院で充分過ぎる程、実技戦をこなしていたし、楓に関しては戦闘のプロだ。
連携も、僕ら幼馴染み3人だ。意思疎通はできている。
もう、負ける要素がないと言っても過言ではない。初任務にて堕ちた者討伐をこなせば、ギルドの名が上がる。
そうこうしているうちに、草むらに屈む楓の魔力を感じた。
「楓。状況はどうだ?」
「お、久しぶりー。状況は限りなく最悪と言える。回復魔法持ちが2人。スピードを上げる補助魔法使いが1人。高威力広範囲の爆発魔法を使うのが1人。あと厄介なのが……」
「グァォーー!!!」
けたたましい叫び声だ。耳を塞ぎたくなるほどの。
「今のやつ。ここから見えている上半身だけで5m。全体だとおよそ10mだろうな。面倒な
「やるしかないだろ。任せろ」
丁度ここは巨影の頭部を狙える高台の上だ。
手に魔力を集中させ、弧を描く。すると煌々と輝く弓が現れる。昔から愛用している「
詠唱開始。
「我を護りし精霊よ。汝の姿を現し、闇を祓う者となれ。英霊召喚」
真っ先にアグライアが現れ
「まーた仕事かい?仕方ないねぇ」と欠伸を一つ。
次にヘリウスが現れ
「おっ! 楓と仄華じゃん! 久しぶりだなっ!」と挨拶。
この2人は光の神だ。呼び出しに応じる速さも早い。
少し遅れてクロト、ラケシス、アトロポスが現れる。3人は姉妹だ。
「やっほー今日の仕事は何ー? あ、ライアー! ヘリー! 一年ぶりだね! 元気!?」と
我ながら思う。
(何で僕の精霊はこんなに陽気なんだ……)
勿論強いのだが。
「お前達、呼び出しの時に内容は伝えたろ……あの巨影を倒すんだよ」
「えへへー知ってるー」
さて、と一呼吸置き
「「「「「「いざ、光に満ちた明日へ!」」」」」」
この言葉を合図に僕は弓を引き始める。そこにアグライア、ヘリウスが手を添え、光の濃度を上げる。
その横でラケシスが巨影と堕ちた者に運命を割り振る。そしてクロトが矢の先と
充分に引き絞り、光の矢を放つ……!
放たれた矢は光の如く空を切り裂き、急所へ直撃する……筈だった。
突如起き上がった巨影に全ての矢が吸われ、あろうことか僕がいる場所が影となってしまった。
(まずい。太陽光が遮られた。魔力変換が使えない。英霊も僕の魔力が切れてしまったせいで強制返還されてしまった。駄目だ。僕はもう何もできない。だが、想定内だ。頼んだぞ、仄華、楓!)
刹那、巨影が僕の方に倒れてきた。
「あ、ごめん炫! 避けてー」
「馬鹿っ! 危ねぇだろ! か弱い僕をちゃんと護れ! って、え?」
目を見開いた。
僕の目には巨影と堕ちた者達の死体の山の上に立ってハイタッチを交わす仄華と楓が映っていた。
「全部倒したのか……?」
「うん全部倒した。思ったより動きが遅かったし。楽勝楽勝っ!」
異常だ。目視できるだけでも堕ちた者が100人はいた。それを1秒足らずで殲滅したのか?
思わず笑いが溢れる。
「………強すぎだろ………」
***
都に戻り、騎士団本部に成果を提出する。
「嘘!? あんた達、あの王室騎士が頭を悩ませた堕ちた者達の拠点を潰してきたの!?」
「あぁそうだ。案外簡単だったぞ」
「やめろ楓。今後の依頼内容に関わる」
「ま、まぁ報酬だよ。はい。中身は1000万円と手配書一覧。王室騎士からこの依頼を解決したものにはこの手配書一覧を渡せって言われてるの。それに書いてある依頼を中心にこなしていってくれ。以上!」
「1000万円か。初任務にしては良い方だな」
軽口を叩く楓を尻目に僕は悩んでいた。
(これ、僕要らなくないか……?)
楽しそうにお金の使い道に胸を躍らせる2人を、少し怖く思いつつも尊敬の念を大きくし、僕自身の未熟さに気付いた初任務となった。
そしてある事に気が付いた。
「あ、村長忘れてた」
「あ"ー! 村長にお別れする為に依頼引き受けたんだった! 村長ー!」
相変わらず完璧に仕事をこなせない3人だった。
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