第15話 リゼットの正体

リゼットは愕然としていた。


「なんだって!?私は見るからに人間だろ?」


「いや、違う。お前には心臓が2つある。それは人間ではなく、竜族の特徴だ。」


「なぜそんなことがわかる?」


「魔力を体中に巡らしているのは、血液と同じく心臓だ。だから、魔力の流れを感じとることができるものは、心臓の場所を感知できる。」


「そんな…私が人間じゃないなんて…」


「お前はな、15年前…まだ人間と竜族、双方の国同士の親交が良かった時代に、人間と竜族の間に産まれた子だ。」


「え?」


イーターと名乗るドラゴンの精霊は語り始めた。

リゼットは黙って聞いていた。


当時は、人間の国も竜族の国も仲が良くてな。

人間からは建築や装備・装飾などの様々な技術を、竜族からは、その巨体を生かした狩りで大きな野生動物の肉などの食料の提供や運搬技術を。

互いの良さを活かし、それぞれ不足を補う形で協力し合っていた。


双方とも王族同士の親交が良く、国交が安定し平和な日々を送っていたのだが、一部の人間達はそれに不満を感じ、納得していなかった。


人間達は、いつか竜族が裏切り牙を剥くのではないか、そして自分達が竜族に支配されるのではないかと…

人間は、頭が良いが小柄で力がない分、その恐怖心と懐疑心は異常なほどに強かった。


竜族と言っても、いまの我のようにとても巨大だった訳ではない。

我も元々は5mほどだった。他のドラゴン達は、平均的に3mほどで、食事も肉ばかり食べるのではなく、植物や果実を食べるなど、人間とあまり変わらない生活をしていた。


国のトップである双方の王族達は、どちらも対立する気も支配する気も全くなかった。


交流を行う中で、竜族の王は、その姫である女性…リゼッタの気品あるお淑やかさと優しさに魅力された。


一方で、リゼッタ姫の方も竜族の王の勇ましさと艶のある硬い皮膚、そしてその筋骨隆々のギッチリとしたドラゴンの肉体に惚れてしまった。


その関係が親密になるのに、時間はあまりかからなかった。


そして、その後、竜族の王と人間の姫であるリゼッタが結婚をした。


これは政略的な結婚ではなく、お互いに惹かれ合い、本人らが婚姻を望んでのことだった。


双方の両親も結婚に反対はしなかった。


「本人らが望むのならばそれで良い。種族が違えど本人の幸せこそ、我々が望む幸せである。」と。


これが両国の架け橋となる、当初の王族達は皆そう思っていた…


しかし、戦火を迎えることになる…

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