第14話 『捕食者』の真の力

真っ黒な世界の中で、黄金色の巨大なドラゴンが15歳の幼き日のリゼットへ言う。


「そもそも、『捕食』。いや、〔食べる〕ことを、お前はなんだと思う? 食べた後は、どうなる??」


「それは…お腹が空くから食べ物を食べて、そうして食べればお腹が満たされる。ただ、それだけ。」


「食べることでお腹が満たされるのは、体の生理的な反応だ。食べた物はどうなる?」


「えーっと…体に吸収されて栄養になる。」


「ようやく、答えが半分でたな。」


「え??」


「食べた物は、一時的に胃に貯蔵され、やがてそれらは消化され、体に吸収されやすい様々な物質に分解された後に吸収される。

そうして、最終的には己の体の一部になる。


体を動かすためのエネルギーや自身の細胞を修復・生成するための栄養になったりとな。」


「……つまり、このスキルは『捕食』でどんな物でも食べれることが、主要な力ではない?」


「そういうことだ。それは、あくまで手段。

手段は〔目的〕を達する為の1つの選択でしかない。」


「〔目的〕は…エネルギーや栄養にすることか?」


「ようやくスキルの本質が、わかったみたいだな。

お前、いままでスキルを持つ者やモンスターなんかを、まだこのスキルで喰らったことがなかろう?」


「あぁ、モンスターは危険だから近づかなかった。


スキルを持つ人間なら、身近に何人かは居たが、流石に仲間を喰らおうとは微塵も思わなかった。


ついさっき、とっさに敵の人間をスキルで喰いかけたが、アーシャに止められたし…」


「やはりか…だから、スキルの開花が遅かった。


お前がスキルで喰らった全ての物は、やがてお前の〔血となり肉となる〕。


この真意…いまなら分かるよな?」


「・・・まさか…!?」


「あぁ、そういうことだ。それが『捕食者』の真の力。ただ単に食べるだけのスキルじゃない。」


「なんと……たが、変だ。

スキルの制約に、持てるスキルは1人1つだけと決まっているはず…

そんなことできないんじゃないか?」


「お前のスキルは、あくまで『捕食者』1つだけ。

スキルで取得した物は全て、体内にストックされる。」


「えーっと…???」


「…簡単にいうなら、『捕食者』のスキルが最頂点に君臨し、後から取得した物は全てその傘下に入るって訳だ。」


「…なるほど。ぶっ壊れた性能のスキルだな…

こんな性能の良いスキル、レア度で言えばLG(レジェンド)級なのに、なぜいまのレア度がN(ノーマル)なんだ?」


「それはだな……あえて頼んでそうしてもらった。」

ドラゴンの声が急に小さくなった。


「…え、いまなんて??」


「宝の持ち腐れにするなよ?」


「え、あ…うん。」


「あぁ、それと1つだけ警告だ。人間の肉は喰らうな。

もし人間の肉を喰らい、それを吸収すれば、お前は人間ではいられなくなる。」


「え? では、スキルを持つ敵の人間を喰らうことはダメなのか?」


「我は人間の肉を喰らい吸収するなとしか、言っておらん。」


「つまり…?」


「愚か者!少しは自分の頭で考えろ。

スキルの本質は、我が全て教えた。


疑問の答えを全て根掘り葉掘り教えてやることは、教育とは言わない。」


「・・・・・。」

リゼットはうつ向き、目を逸らした…


「それはそうと、お前、周りの人間と比べていままで何か違うことはなかった?」


「・・・ん〜…多少、他者に比べて視覚や聴覚なんかが良かったかな。」


「やはり…外見に変化がないところを見ると能力や中身だろうな。」


「それはどういう意味だ?」


「お前は、そもそも人間ではない。」


「…え? では、いったい私は何なんだ?」


リゼットは、愕然とした。

その正体は…

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