第13話 その名は「イーター」

眩い光と大きな衝撃波がした。


真っ白な光と大きな衝撃波に、頭を揺さぶられリゼットは気絶した。


「こいつも回収するぞ、そのまま野放しにするのは後々厄介だ。それよりかは、目の届くところにしばらく置いて、『洗脳』で完全に戦意喪失させてからどこへでも売り飛ばせばいい。」


「リゼット!リゼットー!!」


「ほら、さっさと行くぞ。」


こうして、アーシャと幼き日のリゼットは人狩りに連れ去られてしまった。




幼き日のリゼットは、真っ黒な世界に倒れていた。


「あぁ、私は死んだのか。」


「いいや、死んではいない。」


背後から男性のような大きな声が聞こえた。

体を起こし振り返ると、そこにいたのは人間ではなく、とても大きな、巨大な黄金色のドラゴンだった。


「・・・!!」

思わず腰を抜かす、幼いリゼット。


「わ、私を食べる気か?」


「いや、そんなことはしない。」


それを聞いてリゼットは少しほっとした。


「なぜドラゴンが言葉を喋れる?」


「私は、お前の中にいるからだからだ。」


「?…意味がわからない。

ここはどこで、お前は誰なんだ?」


「質問の多いやつだな。ここは、お前の深層意識の世界。普段の意識より、さらにずっと深い奥底にあるところ。つまり、お前の心の中の世界だ。


そして、我が名は『イーター』(捕食者)。


お前のスキルの源になったドラゴンの精霊。

いわば、このスキルの管理人だ。」


「私のスキルは、単なるN(ノーマル)階級のはず。

それに、このスキルは何でも食べることができる

〔頑丈な胃袋〕みたいなもんだ。

精霊が源になるような、そんなに大層なスキルではないはずよ。」


「いいや、そもそも本質が違う。それはお前がそうとしか認識していないだけだ。


スキルに、強いや弱いなどの性能差はほとんどない。


正義に使えば善人に、悪に使えば悪人になれる。


いづれも所有者の使い方次第で、スキルは最強にもなれば最弱にもなる。


どうやら、お前にこのスキルは荷が重すぎたようだ。


いまのお前には、宝の持ち腐れだな。」


「…どう言う意味だ?」


「お前はスキルの認識を間違えているのだ。


お前は自分に与えられたスキルを理解しようともせず、他人を羨み、自分はハズレくじを引いたと思い込んで、スキルと向き合うこと自体を放棄していた。


だからお前は弱い。

大事な人、1人さえ助けられなかった。


ひと言で言うなら、隣の青い芝生ばかりを気にする愚か者だ!」


「黙れ…! 黙ってくれ…」


彼女は目に涙を浮かべながら言った。

いままでの行いを振り返ると、否定は出来なかった。

彼女自身もわかっていたのだ。


全てこのドラゴンが言った通りだと。


「・・・全ての物事には必ず道理がある。

スキルを与えられた意味もな。」


リゼットは、まだ泣きじゃくっていた。

まるで親に叱られた子供のように。


「知りたいか?お前のスキルの本質を。」


リゼットは、泣きながら黙って頷いた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る