第12話 人狩り襲来
翌日、平和だったはずの村が、悲鳴と血の匂いで満ちていた。
この村にSRスキルの所有者が居ることをどこかで知ったのか、ついに山賊のような恰好をした人狩り達が村にやって来たのだ。
村のほとんどの者はNスキルか無能力者だった。
そんな中、精度の高いSRスキルの所有者が1人だけ居たのだから、たちまち噂が村の外の広範囲まで広まったのだろう。
村の男どもは、村と家族を守るために反撃に出たが、抵抗した者たちは無惨にもあっさりと殺された。
農民であり、村に武器などもなく、またNスキルと無能力者達なのだ。勝てる勝因は、ひとつもない。
そして、すぐに村は制圧され、村人は中央の広場に集められた。
1人だけ鎧を着た、周囲とは服装の違うリーダー格の男が言った。
「他者のスキルを読むことができる、精度の高いSRスキルを持つ者よ、名乗りを上げて前に出て来い。」
鎧の男はさらに続けた。
「さもなくば、村を焼き払う」と。
「私よ。私は、アーシャ。鑑定士よ。スキルを鑑定できるSRスキルを持っているわ。私はどうなっても構わない、だから村の人たちに手を出さないで。」
アーシャはすぐに名乗りをあげて前へ出た。
これ以上、村人が殺されるのは見たくなかったのだ。
「そうか、お前か。では、確認だ。試しに俺のスキルを言い当ててみろ。」
アーシャは目を閉じて言った。
「… R(レア)スキル、『斬鉄の刃』。剣による斬撃に何でも断ち切る真空の刃を付加し、攻撃する単発スキル。一撃必殺の技で、連続や一度に複数の使用は不可。弱点は…」
「もういい、確かにそうだ…正解だ。よし、連れて行け!」
(いけない!大事な人が連れ去られてしまう!)
リゼットは、思わず考えるより先に身体が動いてしまった。
「約束は約束だ、山賊ども!村人に手を出すな、引け!」
と言ったリーダー格の男の横を通り抜け、アーシャを連れて行く山賊の大男へ殴りかかろうとした。
「アーシャを返せ!」
しかし、リゼットはまだ15歳のただの少女の身体。
大男へ殴りかかるには、スピードとパワーが足らなかった。
山賊の大男は、防御するように腕を曲げたかと思うと、リゼットの拳が触れた瞬間に腕を横へ薙ぎ払った。
リゼットは、薙ぎ払われた反動で地面に叩きつけられる。
「なんだこいつは?俺たちに刃向かう気か?」
「やめろ!その子は関係ない!」
「・・・・・。」
(物理攻撃では勝てない……なら、最終手段…スキル『捕食者』でこいつを喰えば…)
スキルを発動しようとした瞬間、アーシャは何かに気がついたのか、急いで首を横に振った。
「ダメ!辞めて、リゼット!」
地面から起き上がろうとしたまま、リゼットの動きが止まる。
「こいつ、いったい何しようってんだ?
なんのスキルか知らんが、スキルを使うっていうなら容赦はしないぞ。」
山賊の大男はやる気満々で、身構えた。
「やめろ!そいつは、私の娘だ。単なる〔無能力者〕、何もできない。だから、見逃してやってくれ。」
「なんだ、ただの無能力者か。つまらない…正確な『鑑定』スキル持ちが言うんだ。
間違いはないか…さっさと消えな!小娘が!」
リゼットは、そう吐き捨てられてもなお、一歩も引き下がらなかった。
「…返せよ。私の母を!」
なおも引き止めようと、体を起こし大男に向かって走り、男の腕にしがみつく。
「離せ!邪魔だ!お前に用はない。」
なおも振り払われ、再び地面に転がる。
起き上がろうとした途端…
「全く世話をかけさせてくれる。」
と先ほどいた鎧を着たリーダー格の男が、隣の山賊から何かを受け取り、こちらへ投げてきた。
それは単なる石ころに見えたが…
リゼットの顔のすぐ目の前で、それは爆発した。
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