第11話 アーシャ

リゼットには、義理の父が亡き後、面倒を見てくれた母のような存在の女性がいた。


名前は「アーシャ」…

25歳と若く美しい女性で、性格も優しく周囲の評判もよかった。そして、他者のスキルを鑑定する能力を持っていたのだ。


それは、貴重なSRスキル『鑑定』だった。


その解析精度も99%で素晴らしいものだった。

彼女は、アーシャのスキルがとても羨ましかった。


そして、アーシャの家に住み始めた12歳の時に、もしかしたら自身にも稀少なスキルがあるのではないかと、希望を胸に鑑定してもらった。


このとき初めて、リゼットは自身がNスキルの『捕食者』であったことを知った。


そして、いろいろな物を捕食し、スキルを試す内にわかった。

このスキルは、魔力を消費するだけで、特にこれといって何かができる訳でもない、ただ何の意味もないスキルだと。


リゼットは、自分は「外れくじを引いたんだ」と思い、それから3年間、スキルを使うことは一切なかった。


ある日、そんな自分にアーシャは不思議なことを言った。


「ちゃんと自分のスキルに向き合いなよ。いくらよそ見してても、それに意味はないよ。


本質を見極めなくっちゃ、固定観念なんて捨てて、自由な発想で!


でないと、自分で作り出した檻に囚われて、いつまで経っても望む答えなんてないんだよ。


それに、持って生まれるってことはさ、きっと何か意味があるんだよ。諦めないで!」と。


初めはその言葉の意味がよくわからなかった。

ただ使うことのないスキルに残念がる自分を励ましてくれている、それだけはわかった。


アーシャは、おそらく、この時すでに『捕食者』の持つ「スキルの本質」、そしてその可能性を知っていたのだろう。


模範解答を見せるのは簡単である。だが、もしそうすれば考えることを辞め、その模範解答だけに縛られてしまう。

だから、アーシャはあえて答えを言わなかったようだ。


そして翌日、リゼットに転機が訪れた。

決して喜べない転機が…

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