第10話 リゼットの過去
話は、10年前の過去に遡る。
彼女は、小さい頃の記憶があまりない。
産まれた場所はおろか、産みの親の名前さえも。
ただ、自身の名前と最後に「強く生きるんだぞ…」と言われたことだけは覚えていた。
それ意外の記憶はない。
リゼットは、ある日、たまたま山へ食材を探しに来ていた男に、洞窟の中でタオルに包まれているところを発見され拾われた…と聞いている。
そして、この男が、義理の父が住む村で育てられた。
裕福とは言えなかったが、衣食住にはあまり困らなかった。
教育を受けながら農業の仕事を手伝い、リゼットが12歳になった頃、体の弱かった義理の父がとうとう体調を崩して他界した。
血は繋がっていなかったが、まるで本当の父親のように接し、ここまで育ててくれた。
彼女が三日三晩、泣き続けたのは言うまでもない。
涙が枯れた頃、村から少し外れたところにある、山の一角へ埋葬し、弔いを行った。
埋葬後、墓石の前で彼女は花を手向けて言った。
「亡き父よ、あなたは私の産みの親ではないが、私にとってはあなたが本当の父だった」と。
手を合わせ深くお辞儀をした後、彼女は村へと戻っていった。
彼女が住むこの村は、日照りが続く厳しい気候だったため、農作物はあまり育たなかったが、周囲の自然豊かな山や川の食材で不足を補い、暮らしていた。
村人は皆、協力的で仲が良く平和な村だった。
奴らが来るまでは…
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