第5話 リゼットの危機


リゼットは、暗闇から急いで右前方の曲がり角へと身を隠した。

どうやら、国王の騎士兵の残党がまだいたようだ。


「めまいがする…恐らく私の魔力の残量はもう少ないな…」


段々と足音が近づいてくる。

そして、足音が曲がり角の手前で止まった。


「そこいるのはわかっている!さっさと出てこい!!さもなくば、壁もろとも吹き飛ばすぞ!」


「何を言っている、わしじゃ!わしじゃ!」


その曲がり角から現れたのは……剣を左腰に携えた、国王だった。


「国王様!これはこれは失礼致しました。」


警備をしていた騎士兵は、槍と中型の盾を持っていた。


「全く…国王に向かって『吹き飛ばす』とは、なんと無礼な者じゃ!」

(こいつのスキルは、パワー系か爆破系か…)


「申し訳ありません、つい先程、見知らぬ人影が国王様がいらっしゃったその角を曲がって行ったもので…」


「言い訳は聞かん! ところで、わしは地下牢を探しているのだが、どこにあるのだ?」


「地下牢ですか? 地下牢なら、この階ではなく2つ下の階にあります。」


「ほぉ、そうだったか。この階には何がある?」


「この階には、武器庫と食料庫が。1つ下の階には、国の宝や国の税金を納める金庫がそれぞれあります。3階は全て地下牢なので、行けば分かりますよ。」


「ほぉ、なるほど、なるほど。それはさぞ、警備を厳重にしないとな? いまの警備の配置は?」


「上で襲撃があったとの一報を受けて、各階の入り口に1人ずつ警備の兵を残し、あとの残りは全員、上の援護に向かわせました。

数分前ぐらいから、上の音が静かになりましたし、もうそろそろ戻って来る頃合いなのですが…それにしても遅いですね。

ところで、失礼ですが国王様。国王たるお方が地下牢へ何のようです?」


「そ、そうじゃな…、実はだな…」

(まずい、勘づかれたか…)

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