第3話 国王の秘密


痛みは後から襲って来た。

両腕を再生させ止血しようとするが、体が変だ。細胞の再生速度が上がらない。


「な…ぜ…?斬った感触はあった、なのになぜ…お前は無傷なんだ?」


「まだまだ甘いな…どうせ、以前の戦いやそなへんに転がっている骸を見て、あなたは私のスキルを単なる切断系スキルとでも思ってたんでしょ?」


「!?」


「残念だけど、それは間違いよ。あっているのはせいぜい1%といったところ。」


確かにいまの状況はおかしい。

切断系のスキルだとするならば、斬られた断面は綺麗なはずだ。

だが、まるで野獣に食いちぎられたかのように、両腕が引きちぎられている。


「あなたのスキル『神速』が、自身の細胞の再生速度まで上げれるとはね…そこまでスキルを扱えるとは見事だったわ。目覚めた時にそのまま逃げ帰れば、見逃してあげたのに。わざわざ、また殺されに来るとはね。それほど国王に忠義が厚いのかしら…」


「なぜ、俺のスキル名を!?」


(訳がわからない…状況がおかしい。

腕は引きちぎられ、なぜか再生が使えない。

そしてなにより、なぜ俺のスキル名を知っている??)


「おかしい、なぜだ? 所有できるスキルは、1つだけのはずだ。」


「えぇ、そうよ?」


「なら、なぜこんなおかしなことが起こっている?」


「死ぬ前に1つ、良いことを教えてあげる。私のスキルの本質を。まぁ、私のスキル名を知ったところで、あなたに勝ち目はないから。私のスキル名は…

『・・・』さ、怪物だよ。」


そう言った途端にリゼットの腕から、まるで吐き出すかの様に、アルフレッドが持っていた剣と彼の引きちぎられた腕が出現し、ドサッと床に落ちた。


「ひぃ!そんなばかな、ありえない。そのスキル量は、もはや、レジェ…うおぇ!」


彼の言葉が続くことはなかった。

急に血を吐き、もがいた後に絶命した。


「あぁ、そうだったわ。念のために、毒も仕込んどいたんだった。忠義に厚い人間は嫌いじゃないけど…敵だったから仕方ないわね。」


骸に成り果てたアルフレッドから、身を翻して国王の方へ、一歩一歩近づいていく。


コツコツとなるリゼットのブーツの音は、まるで処刑台への階段を登っていく足音かのように国王は錯覚した。


「何が目的なんだ?金か?名誉か? お前が望むものをなんでもくれてやろう。」


「望むもの?なら、腐ったあんたの命だわ。」


「なぜ、わしの命なんだ?」


「10年前、15歳の私と1回会ったことあるんだけど、私のこと覚えてない?」


「・・・?」


「あぁ、ひと目しか会ってないものね。あなたは檻の外で取り引きを、私は人が敷き詰められた檻の中…」


「まさか、あの時の…!? たが、お前は…スキルを持たない、ただの無能力者だったはず! なぜいまはスキルを…。」


「さぁね?なんででしょう?」


彼女は子供のように首を傾け、ニッコリ微笑むとあっさりと国王の首を跳ね飛ばした。


骸になった国王に続けて言う。

「ずっと前のことだし、おかげで強くなれた。だから、もう恨んではいないよ。

だけど、火遊びが過ぎた…まだ同じことをしていたとはね。

……それは決して許さない。」


リゼットは、王宮の地下へと向かった。

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