2月 (2022年) 新書類

 先月(1月)に引き続き、新書類はかなり減りました。読む時間がないわけではないのですが……。



①佐宮圭/松浦壮『16歳からの相対性理論』(ちくまプリマ―新書、2021)


 タイトルの通り、高校生でもわかりやすくイラスト付きでアインシュタインの相対性理論(特殊・一般)を解説した本です。もちろん私は高校生ではありませんが、物理の知識は小学生並みなので超入門書として選びました。時間の流れは相対的なものらしいです。

 

 最近このちくまプリマ―新書にはまってます。



②寺内寿一『政友会と民政党』(中公新書、2012)

 かつての日本には、現在のイギリスのように二大政党制の時代がありました。「憲政の常道」という言葉は、中学校の社会でも習ったのではないでしょうか。まさにその時期、日本史上で今のところ唯一の二大政党制がしかれていました。片方は伊藤博文が反政党の政党として設立した立憲政友会、もう片方は憲政会から名前を変えた立憲民政党、この二つが議会で議席を争っていたのです。しかし、この二大政党制は政党側の自滅と軍部の動きによって、戦時中、自主的に手を取り合うこともできずに崩壊していきました。


 この本が出た時は民主党政権でした。自民党と民主党の二大政党制の可能性があった頃です。作者はその時代背景も含めてこの本を上梓したそうです。



③小川洋子『物語の役割』(ちくまプリマ―新書、2007)

 『博士の愛した数式』で有名な小川洋子さんが講演録を元に書いた、「物語」とは何かを考える本です。物語って何だろう、物語を書く意味って何だろう、と悩んでいる人がいれば、ぜひ手に取ってみる事をお勧めします。とても興味深い部分が多いのですが、一つ個人的に強く印象に残った文章を下に引用しておきます。



 「リンデンバウム通りの双子」(注:小川洋子氏の短編)の場合では犠牲になった

 家族の悲しみを書こうとか、人間の孤独を書こうとか、家族の絆について書こうと

 いうような、非常にわかりやすい一行で書けてしまうような主題を最初に意識して

 しまったら、それは小説にはならないのです。言葉で一行で表現できてしまうなら

 ば、別に小説にする必要はない。

              (中略)

 「主題は何でしょう、二十字以内で答えなさい」というようなテストがあったとし

 て、その二十字がまず浮かんでくるのであれば、それは小説として書かれる必要性

 を持っていないと思います。ですから、「テーマさえしっかりしていれば、いい小

 説が書ける」というのは幻想です。


 まず書いてみる、その試みが大事なのかもしれません。



④池上俊一『動物裁判』(講談社学術文庫、1990)

 

 13世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパでは、動物が人間の法によって裁かれる、動物裁判が行われていました。被告には、例えば人間を傷つけたブタやウマが立ち、これを弁護人が弁護するという、異様な裁判が、真面目に行われていたそうです。

 この本では動物裁判とは何か、なぜこんな珍奇な裁判が行われたのかなどを考察しています。かなり面白いです。新書で笑ってしまったのは多分初めてでした。もちろん、裁判が行われるに至った社会的背景には、決して笑えないものがあり、現代の私たちとも無関係ではないのですが……。ともかくあまり西洋史について知識がなくとも、なんとか読めるようになっていると思うので、この謎裁判が気になった方はぜひどうぞ。


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