8月(2021年) 新書類②
⑧伊藤之雄『真実の原敬』(講談社、2020)
現代の日本に必要だと思う政治家だと思いました。同時に、暗殺されることなく生き続けてくれていたなら、戦前の政治動向はかなり変わったかもしれないとも思います。彼ほど海軍や陸軍、元老と同等に渡り合った人物は、恐らくいなかったでしょう。
⑨鈴木由美『中先代の乱』(中央公論新社、2021)
かなりマイナーな乱ですよね。歴史好きにはたまりません。あとがきによると、筆者は乱を起こした北条時行について論文を書こうとしたところ、止められたそうです。それほど、史料もないということなのか。
中先代の乱は、鎌倉幕府最後の得宗北条高時の子時行が、幕府再興を求めて起こした乱です。最初は幕府を滅ぼした後醍醐天皇を対象とした戦いでしたが、後に後醍醐天皇の南朝と手を組み、足利氏と対決しました。南北朝期の大カオスがまさに現れていると思います。
⑩細川重男『鎌倉幕府の滅亡』(吉川弘文館、2011)
⑨関連です。
鎌倉幕府の実態を見ることで滅亡の原因を探る本です。鎌倉幕府はかなり中央集権色が強く、たとえば六波羅探題についても中央から担当者を派遣していたとか。
また、将軍が力を失い、執権すらも実権を失う中で、御家人体制もかなり変容していたことがうかがえます。それに元寇や皇位継承問題などが絡んで、混乱していったという時代の流れがあったようです。詳しくは本書をお読みください。
⑪森茂暁『南朝全史』(講談社、2005)
⑨⑩関連です。南朝は大覚寺統—後醍醐政権(建武の新政)—南朝—後南朝という風に推移していきます。後南朝は足利義満の南北朝統一後、結果としてだまし討ちのような形になったことに憤慨した後亀山天皇とその子孫が繋いだ南朝の子孫です。
驚きなのは、戦国期まで南朝の影は付きまとったということ。それほど南北朝の分裂期の混乱は激しかったのだろうと推察できます。
⑫小田部雄次『皇族』(中央公論新社、2009)
こちらは、主に明治期から現代までの皇族について、非常に詳細に記述されています。同時に、今後の皇位継承について考える上で、多くの示唆を与えてくれます。
将来の悠仁親王妃のプレッシャーについても述べられています。女性天皇が認められない以上、避けられないところですが……。どうなるのでしょう。
⑬山本健太郎『政界再編』(中央公論新社、2021)
今月最後は、政治関連の本でした。1993年の55年体制終焉から現在までの政党の離合集散の流れを記しています。
興味深いところはたくさんあったのですが、あまり言いすぎると政治的になってしまうかなあと思ってしまうので、控えておきます。
ただいくつか言うなら、自民党はやっぱり強いんだなあということです。また、民主党政権のトラウマが野党側には強いのだろうかということ、そして今年、大荒れになりそうな衆議院議員選挙の動向が楽しみだということです。
今月のベストオブ新書は『戦争はいかに終結したか』です。そういう分野に興味の厚方は読んでみることをお勧めします。
また今月は読めませんでしたが、中公新書でまたまた面白そうな本が出ました。9月に紹介しますね。
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