第4話 再会

 今回帰省した目的の一つが友人の滝本と会うためであった。

 滝本は高校時代の友人で社会人になった今では連絡を取り合う唯一の中であった。

 高校を卒業するとき、また会おうと言い合うのだが、ほとんどの人間とは会わなくなるものだ。名古屋の大学に進学したのでそれは余計そのような状態であった。

 そしてそれは大学を卒業するときも同じだった。

 社会人となり、それぞれ忙しくなるとよほどのことがないと会わなくなるものだ。友人というのは放っておくと減っていくものだ。


 友人の滝本とは環状線の寺田町で待ち合わせをした。

 彼の行き着けの焼き肉屋にいくことになった。

 滝本の職業はルポライターでいつも面白い話をきかせてくれる。


 店に入り、僕たちはガスコンロをはさみ座った。店員が鉄板をコンロにのせる。

 滝本はチューハイを僕は烏龍茶を注文した。それとタン塩、カルビ、ハラミ、テッチャン、センマイを注文した。

 しばらくして飲み物と肉が運ばれてきた。

 肉を焼き、頬張りながら僕たちはお互いのことを話した。

 滝本はルポライターとしてけっこう売れっ子になりつつあり、テレビやラジオなんかにも呼ばれるようになったいう。

 僕はいわゆる普通の会社員なのであまりかわりばえはないが。

 僕はふと、みっちゃんのことを話した。

 話のネタにでもなるだろうと。

 滝本はおもしろそうに僕の話を聞いた。

「たしかに、人間の記憶ってのはあいまいなものさ。思い込みや先入観でかわっちまうていうしな。俺も何人も事件の目撃者が話がころころかわるってのを見てきたんだよ。テレビかなんかでいらない知識をみちまって証言がかわってしまったというのはざらさ」

 そういい、ハラミとライスを滝本はかきこんだ。

 僕はわかめスープを追加で頼んだ。

 滝本の話ではここのわかめスープは絶品だということだった。

「それに記憶ってのは忘れることができるからいいのかもしれないな。全部コンピューターみたに覚えていたら、やってらんないぜ」

 滝本が言った。

「それはおまえがクラスのマドンナにふられたってことかい」

 僕はわかめスープをすすりながら、言った。

 たしかに滝本の言う通り、ここのわかめスープは絶品だった。

「おいおい、そいつはいわない約束だぜ」

 赤い顔で滝本は言った。


 ひさびさの再会で僕たちはかなり話し込んだ。

 店を出て、別れ際にお前の幼馴染みの話、おもしろそうだからちょっと調べてやるよと滝本は言った。

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