朝のひととき

「パンがよかった」


「ううん。ただいつもめんどくさくて。おいしいよ」


ゆうべ残った野菜炒めと小さめのオムレツ。


味噌汁には余った野菜を入れた。


「シジミの味噌汁とかおいしいよね。


でも、今日は玉子スープがいいな。チャーハンだから」


「中華風の」


「そう、中華風の」


「ずっとごはんでいいの」


「いいよ。ごはんのほうが太らないっていうし」


「気にすることないよ。太ってないし」


「そんなことないよ。最近はダメ。カレシいないせいかな。


緊張感がないっていうか、見られてるって感じがなくて」


そうかな。そんな変わってないよ。


ぼくはパジャマを着た彼女の後姿を目で追っている。


彼女は自分の部屋に入って行った。


ぼくはキッチンのテーブルの上をかたづけて、洗い物をはじめる。


今日は何をすればいいんだろう。


また買い物とごはんのしたく。


それでもいいんだけどな。


たしかに、少しは気が張ってきた。


彼女がスーツに着替えて部屋を出てくる。


「いってらっしゃい」


「いってくるね」


「帰りは遅いの」


「昨日と同じくらいかな。お願いね、チャーハン」


彼女が部屋を出ていく。


ドアが閉まる。


少しホッとする。


コーヒーでも飲もうかな。


時間はたっぷりあるんだし。


でもあるのかな、コーヒー。


昨日は買ってこなかった。


インスタントコーヒーぐらいあるよね。


でもさ、何してるんだろう、ぼくは。


もしかしたら彼女もそう思っているのかもしれない。


戸棚のすみにインスタントコーヒーを見つけた。


下の方が固くなりかけているけど、


飲めないことはないだろう。


キッチンの椅子に腰をおろしてコーヒーをすする。


そうか、洗濯しなくっちゃ。

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