三毛猫は彼氏を見ている⑧




先輩が占い師を見て異様に嬉しそうにしていた。


「けーちゃんじゃん!」

「ど、どうもー・・・」


その目線を考えるとおそらくは占い師の容姿に惚れているという感じなのだろう。


―――二人は知り合いだったんだ・・・。

―――私はこの先輩を知らないのに? 


加恋が嫉妬している反面、どうも占い師の様子がおかしい。 空智の後ろに隠れている感じだった。


「どう? 俺の女になってくれる気になった?」

「いえ。 なりません」


占い師は毅然とした態度で言う。


「そんなことを言わずにさぁ。 俺優しいよ? 空智みたいに冷たくないし」

「あっくんは冷たくないです!」


前に空智と占い師が一緒にいるところをどうやら先輩に見られ、占い師の存在が知れ渡ったようだ。


―――というか、本物の彼女の私よりもこの占い師の方が知れ渡っているってどういうこと!?

―――空智の知り合いになんて、滅多に紹介してもらえないのに・・・!


空智と占い師は付き合っていないため先輩が占い師にアタックしているらしい。


―――このまま先輩、占い師をもらっちゃってください!


「どうしてそんなに空智がいいの? 確かに空智もいい男だとは思うけどさ」


先輩は日焼けしているイケイケ系で、空智よりもモデルのような占い師に合っていると思える。 二人が並んで歩けばさぞ絵になるだろうなと加恋は眺めていた。


「そりゃあ、カッコ良くて優しいから・・・」

「なら俺も一緒だよ。 変わらなくない?」

「いや、そうかもしれないですけど・・・」

「空智もいいだろ? けーちゃんをもらって」

「どうぞどうぞ」

「おい! あっくん!」


空智はニヤリと笑って占い師に小声言った。


「そろそろ白状したらどうだ?」

「ッ・・・」


―――白状?

―――・・・何のことだろう。


近くにいた加恋にもそれは聞こえていた。 先輩のアタックはエスカレートしていく。


「ほら、けーちゃん行こうよ」


先輩が占い師を引っ張って連れていこうとする。 占い師はついに我慢ができなくなったのか、声を低くして言った。


「あぁ、もう! 俺に付き纏うのは止めてくれ!」

「え?」

「俺は男だ!!」

「男・・・ッ!?」


―――!?


先輩は驚くと同時に加恋も驚いていた。 空智は驚いていないため最初から知っていたのだ。


―――男って・・・ッ!

―――確かに声は低いし、喉仏も出ているような気がする。

―――あれでもこの声、どこかで聞いたことがあるような・・・?

―――昨日の占い師だからじゃなくて、もっと前から聞いたことのある感じの・・・?


「男っていうのは本当か?」

「あぁ。 ウィッグを取ったら納得するか?」


そう言ってウィッグを取るが、化粧のこともあり何だかよく分からない感じになっている。 ただ先輩は一人呆然としていた。


「他にも胸パッドとか?」


そう言って胸パッドを取る。 どうやら本当に男だったようだ。


「本当に男だったのか・・・」

「あぁ。 これでもう俺のことは諦めた?」

「・・・」

「まだ疑うなら服も脱ごうか?」 


二人が話している間、空智は興味なさ気にスマートフォンを弄っていた。


―――いやいや、空智!

―――この事態は一体どういうこと!?

―――そんな悠長にスマホを弄っている場合じゃ・・・!


「いや、そこまでしたら流石に警察が・・・」

「じゃあこれで納得してくれた?」

「んー・・・」


先輩は考えた後、信じられないことを口にした。


「でも男の娘か・・・。 それもありだな」

「いや、ないから!」

「でもけーちゃんは空智のことが好きなんだろ? だったら俺でもいけるよな?」

「確かにそうなるけど、俺とあっくんの方が付き合いは長いし」


加恋はやり取りや声、雰囲気を感じながら確信していた。


―――・・・やっぱりそうだ。

―――この人は空智の親友の健斗くんだ!

―――占い師を紹介してくれたのも健斗くんだった。

―――それなら全てが繋がる・・・。

―――健斗くんも空智のことが好きだったの?


空智の周りにいるのが女性ではなく、男性、しかも友達だったということで加恋は複雑な心境を抱いていた。



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