三毛猫は彼氏を見ている④




だが一番高い場所である本棚にやっとのことで登ってみてを加恋は首を捻ることになる。


―――あれ?

―――特にやましいものはない・・・?

―――まぁ流石に、目に見えるところにはないか・・・。

―――じゃあベッドの下とか? 


折角登ったのに、と思いつつも本棚から降りてベッドの下に潜り込んでいく。 僅かな隙間に潜り込めるのは猫の特性のようだ。


―――うわッ!?


そこで驚いた。


―――何これ綺麗ー!

―――空智が綺麗好きなのは知っていたけど、普通ここまで綺麗にする!?

―――ベッドの下だよ!?

―――掃除機が届かなくて諦めるところなのに!

―――というより、おかしいなぁ・・・。

―――私に積極的にならないから浮気とかしているのかと思ったけど、違うのかなぁ?

―――じゃあどうして? 


ベッドから抜け出し捜索を再開する。 机には加恋が置いたツーショットの写真立てが並んでいた。


―――ずっと飾っていてくれるなんて嬉しい。

―――・・・でも家に遊びに来ていいとは言うけど、お泊りはさせてくれないんだよね。

―――その理由はやましい何かがあると思ったんだけど、この部屋に他の女の人がいた形跡はないし・・・。

―――深く考え過ぎかなぁ? 


結局特に何も見つからずベッドでゴロゴロしていると空智が戻ってきた。


「一人にしてごめんなー」


―――あ、戻ってきた!


ベッドから軽やかに降り走って迎えにいくとひょいと抱えられる。


「慣れない部屋で寂しかったか?」 


猫に慣れたのか手付きが優しくなっていた。


―――空智の猫の扱いが心地いい・・・。


空智は髪を乾かすためにドライヤーの電源を入れた。 そして、加恋めがけて風を送ってきたのだ。


―――わわッ、止めてぇ・・・!


送風状態ではあるが毛がふぁさふぁさと動き痒いのだ。 空智はそれを見て嬉しそうに笑っていた。


「ごめんごめん。 ちょっと意地悪してみたくなっちゃって。 だけどずっと見ていると可愛いな」


―――何、そのトキメキ台詞!

―――人間の時にも意地悪してくれてもいいのにぃー!


「お前って三毛猫だろ? ミケって呼んでやるよ」


―――名前を付けてくれた!

―――嬉しい!


慣れてきたおかげか空智は積極的に加恋に触るようになった。 だか楽しそうに加恋に触れる空智を見て胸が締め付けられた。


―――・・・ズルいよ、猫だけ。

―――私にも目を向けて?

―――・・・私にも、こんな風に積極的になってよ。


最初は加恋も積極的な空智に満足していた。 だが徐々に猫の自分に嫉妬するようになってきたのだ。


―――もう嫌だ・・・。

―――今は何時・・・?

―――早く12時にならないかな・・・。


時計を見るともうすぐ12時になろうとしていた。


―――もうすぐだ!

―――驚かれるかもしれないけど、ハッキリと言おう。

―――もっと猫の時みたいに私にも積極的になってほしいって。

―――猫になった経緯を話すのは後だ!


人間に戻ったら空智が潰れると思い距離を取る。


「ん? どうしたんだよ、急に離れて」

「・・・」


―――来た! 


12時になった。 だが目の高さも変わらず身体に全く変化がない。


―――・・・あれ?

―――薬の効果は12時間って言ってたよね?

―――それが終わったら人間に戻るんじゃなかったの!?


「どうしたんだよ、ミケ。 もう少し俺と遊ぼうぜ?」


空智に再び抱えられた。


―――え?

―――ちょっと待ってちょっと待って!

―――今私に触れると危ないから!

―――人間に戻った時に空智が潰れちゃう!

―――というか、どうして戻らないの!?


加恋はテンパっていた。 どうしようかと困っていたその時、玄関のチャイムが鳴る。


「誰だ? こんな昼間に。 誰からも連絡は来ていないよな?」


―――・・・あれ、私の姿を見られたらマズいんじゃ・・・?


ここはペット禁止だということを思い出し焦り出す。 空智は加恋をそっと布団の中へ隠すと玄関へと向かった。 布団の隙間からこっそりと様子を窺う。


「やっほー! あっくん!」


するとそこにはモデル級の美しい女性が立っていたのだ。



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