第2話 夢の中で

自分の部屋に入り、扉を閉めて、ベッドに横になると、菜々子の気持ちは少し落ち着いてきた。


(何でこんなにカルガモの親子を見ているとイライラするんだろう・・。)


菜々子はモヤモヤする原因を考え始めた。

母ガモの後ろにピッタリとくっついて、一列になり、ひたすら着いていく赤ちゃんガモ達。

それを見守り、応援する周りの人間達。

引っ越しの時だけカルガモ優先の車道。

引っ越し先に辿り着くまで追いかけ続けるテレビカメラ。

カルガモの様子に一喜一憂する母親。


何を思い返してもイライラが増すばかりだった。思考はまとまらない。気が付くと菜々子はベッドの上で眠っていた。




菜々子は夢の中でカルガモの赤ちゃんになっていた。赤ちゃん達の一番後ろに並んでいて、先頭にお母さんカルガモがいた。


突然、行列が動き始めて、菜々子も置いていかれないように必死で後に着いていった。


皆スムーズに母ガモに着いていく。菜々子は着いていくだけで、息が切れて、しんどくて、置いていかれそうになる。


「待ってよー!」と声を発したが、母ガモも赤ちゃんガモ達も振り向きもしない。

菜々子は、必死で足を動かし続けるしかなかった。


周りにいる人間達は誰もカルガモの行列など見てはいない。

視界にすら入っていないようだ。

車は普通に走っているし、スマホを見ながら歩く人に菜々子は危うく踏まれそうになった。

声援など聞こえないし、川まで誘導なんてしてくれない。


それでも、菜々子以外のカルガモ達は粛々と前に進んでいく。

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