詩「きみの音」

有原野分

きみの音

自転車の補助輪で

地面をがりがりと削るように

巨大な世界を描くあなたは

どうしてこんなにも優しいのだろうか


美しいものは人を狂わせる

優しさは狂人を綻ばせる


雨のような涙

涙のような雨


愛おしいこの世界で

落書きのような

雲と光

閃光

残光

その下で

あなたはまた色を重ねる


呼吸音が聞こえる

ぼくの呼吸と

ぼく以外の呼吸の音

心臓が動く音


木の擦れる音

太陽が昇る音

きみが遠くへ行ってしまう音


空の音

土の音

影の音


すべては摩擦

    生きる音

      死する音

        きみの音


優しい音が聞こえる

その音が愛おしくて

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詩「きみの音」 有原野分 @yujiarihara

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