第6話

「ヒノキの棒は、意外と強いぞ」6


 カエルとカバくんは隣町へ続く畦道を歩いていると、大きな魔女帽子を被っている女の子が座り込んでいる。


「あれ?あの子ってレンゲちゃんじゃない?」

「レンゲちゃんってラーメン屋の?」

「うん」

「マジかよ!アイツ生意気だから俺苦手なんだよな!」

「確かに生意気だけど、僕達より3歳も年下だから卒業冒険には早すぎるよ」

「確かに何で居るんだろう?」

そう会話をしながら座り込むレンゲちゃんのそばまで来た。


「レンゲちゃん!こんな所で何してるの?」

カバくんが話し掛けた。

 レンゲちゃんが振り返ると“うわ!”とあからさまに嫌な顔をしている。

「お前ティッシュ持ってる?」

レンゲちゃんはカバくんに手を伸ばしながら言った。

「あ?ああ!ほら」

カバくんはカバンからティッシュを取り出してレンゲちゃんに渡した。

 レンゲちゃんはティッシュを受け取りダッシュで草原に入っていった。

「なんだよ!ウンチ我慢してたのか!うける!!」

カエルは大きな声で冷やかした。

「カエルくん!女の子にその言い方は可哀想だよ!」

「だってアイツ!俺を見る度に貧乏人!って言ってくるからさ!こういう時に仕返しだよ」

「カエルくん!勇者になりたいんだから寛大な心を持たないとだよ!」

カエルは恥ずかしそうに頭を搔いた。


 すっきりした顔でレンゲちゃんが戻ってきた。

「今度からもう少し柔らかいティッシュをもってあるきな!こんな硬いのじゃお尻が痛くなるじゃない!貧乏人!」

レンゲちゃんはティッシュをカバくんに投げ返した。

「レンゲちゃん!まずはお礼を言わないとだよ?」

「うるさい!」

レンゲちゃんはそそくさと歩いていった。


「やっぱり生意気な子だな!なにか闇を抱えてるんだぜ!ありゃ」

「まぁ、あの子なりの考えがあるからね」

「……最近カバくんは大人になったなぁ」

「強さのレベルアップじゃなくて心がレベルアップしてるみたいだよ」

「俺なんてやたらと握力ばっか上がって頭がレベルアップしてないよ!うけるでしょ?」

「カエルくんがいるから心強いよ!」

「ありがとう!相棒!」

2人はまた歩き出した。


 森の中を歩いていると、再びレンゲちゃんがうずくまっていたー。

「アイツまたウンチかな?」

「こら!」


「レンゲちゃん今度はどうしたの?」

「……」


ぐぅ~。


「お腹空いてるの?」

レンゲちゃんは何も言わずに頷いた。

 カエルはパンを差し出した。

 レンゲちゃんはパンを遠くへ投げ捨てた。

「あ!おい!なにすんだよ!」

「お肉が食べたい!!」

「なんだコイツ!引っぱたいてやる!」

カエルはヒノキの棒を2本構えた。

「なにそれ!折れてるじゃん!貧乏人!」

「コイツむかつく!!」

「カエルくん!だめだめ!!心の修行だよ!寛大に寛大に!」

カエルはキィーッ!となりながら棒をしまった。

「ちょうどここら辺でキャンプしよう!僕とレンゲちゃんで野営の準備するから、カエルくんは食料調達良いかな?」

「何でコイツも一緒なんだよ!」

「まあまあ、一晩くらいいいじゃない!」

カエルはカバくんになだめられながら食料調達へ出掛けていった。


つづく

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ヒノキの棒は、意外と強いぞ! 門前払 勝無 @kaburemono

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