第5話

「ヒノキの棒は、意外と強いぞ」5


 カエルとカバくんは同じ場所を行ったり来たりしている。

 そう、この行為は自身のレベルを上げるためのものである。行ったり来たりしているだけでモンスターや盗賊が現れるのである。

 カエルは大人しい眉毛の形をしているのだがモンスターや盗賊を倒す度に眉毛がキリッとしてきている。


 2人は野宿の準備をしている。

「カエルくんは最近、男らしくなってきてるね!」

「そう?やはり冒険によってたくましくってきたのかな?カバくんは何も変わらない?」

「僕はほとんど戦ってないしね!」

「カバくんは後に居てくれればいいよ!回復呪文を使ってくれたら俺がバッチバチ倒していくからさ!」

2人は生肉を上手に焼きながら笑っている。


 夜ー。

 カエルはオシッコに起きた。隣で寝ているはずのカバくんが居ない。荷物はそのままであったから、カエルは気にせずにオシッコをしてから再び寝た。


 それから毎晩カバくんは夜に居なくなるようになったが、朝には普通に戻ってきている。


 カエルは、カバくんはひっそりと夜な夜な修行をしているんだなと思って夜のことは聞かないでおいた。


 盗賊が3人現れた。


 カエルは盗賊がゆっくりと近づいてきて何か話し掛けようとしてる最中に襲いかかった。カエルはだいぶ強くなっていてヒノキの棒を振り回して鬼神の如く暴れ回ってアッという間に盗賊をやっつけてしまったのだが、ヒノキの棒が折れてしまった。

「くそ!折れちまった!」

「人のお古だもんね!新しいの買おうか!」

「そうだね!レベルも上がったし隣町を目指そうか!」

「うん!」

2人が行ったり来たりしていた場所を離れて隣町を目指した。


 夜ー。

 案の定、カバくんは居なくなっている。

 カエルは流石におかしいと思ってカバくんが帰るまで起きてることにした。


 朝ー。

 肉と野菜を焼いて朝食を作っていると、目の前にカバくんが現れた。

「うわ!!!」

「あ!ごめん!遅くなっちゃった!」

「ビックリした!!なになに!!なんで急に現れたの?」

「新しい呪文を覚えたの…」

「ワープ?」

「少し違って“キーターク”って言って家に帰れる呪文なの」

「もしかして毎日家に帰ってたの?」

「……うん。外で寝るのが苦手でこっそり帰ってた……ごめんよ」

「そうだったのか…でも、カバくんもレベルアップしてたのがうれしいよ!」

「ありがとう!」

「よっしゃ!朝メシ!朝メシ!」

2人は朝食を食べ始めた。

「そうだ!父ちゃんから聞いたけど隣町に元剣術の達人がいて、その人の作る木刀が凄く強いらしいよ!」

「まじか!それを買いに行くぞ!っていつになったらヒノキの棒を卒業出来るんだよ!」

カエルは折れた棒を両手で振り回した。


つづく

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