第49話

 ニューイヤーパーティーの日になった。

「おはようございます、あおい様」

「え? おはようございます」

 お城の使いが馬車であおいを迎えに来ていた。


「ちょっと待っていてください」

 あおいは急いでドレスに着替え、大量のクレープをかごにしまった。

「あおい様、クレープの方は私が運びますので、パーティーのお支度をお続け下さい」

「ありがとうございます」

 あおいは口紅を塗ると、髪をとかした。


「おまたせしました」

「では、参りましょう」

 馬車はお城に向かって走り出した。

 お城のまわりには村人が集まり、新年を祝っていた。


「あおい様、中へどうぞ」

「はい」

 あおいは言われたとおり王宮に入った。

 王宮の中は色とりどりの花が飾られていて、ご馳走も沢山並べられていた。

 ふと、ふりかえるとあおいの作ったクレープも、いつの間にか置かれていた。


「あおいさん、新年おめでとう」

「メアリー様!? おめでとうございます」

 あおいが振り向くと、アレックスとケイスとメアリーが揃って微笑んでいる。

「新年おめでとうございます、アレックス様、ケイス様」

「おめでとう、あおい。今年もよろしくお願いしますね」

 アレックスはそう言ってあおいに握手を求めた。


 あおいが手を握り返すと、メアリーが割って入った。

「アレックス様、あちらにもご挨拶しないといけない方がいらっしゃってますわ」

「そうですね、メアリー。では、あおい、またお会いしましょう」

 アレックスはそう言って、あおいに背中を向けた。


「はい、アレックス様」

 あおいの返事を聞いて、アレックスは振り返った。

「後でクレイグから渡されると思いますが、プレゼントがあります。受け取って下さいね」

「え!? プレゼント!? いいんですか?」

 あおいが驚いていると、アレックスは微笑んだ。


「ええ。これから必要だと思いますので」

「アレックス様、早く行きましょう」

「では、失礼します」

「じゃあな、あおい」

 アレックスとケイスは、メアリーの後について歩いて行った。


「挨拶もすんだし、ご馳走を食べたら帰ろうかな?」

 あおいはテーブルに並んだケーキや、鳥の丸焼きを頬張った。

「美味しい!!」

「お取り込み中、もうしわけありません。あおい様」

「……クレイグ様!?」

 あおいは口の中の物を慌てて飲み込むと、クレイグに挨拶をした。

「新年おめでとうございます、クレイグ様」

「おめでとうございます、あおい様」

 クレイグは大きな包みを持っていた。


「こちらはアレックス様からのプレゼントです。どうぞお受け取り下さい」

「ありがとうございます。中身は何ですか?」

 あおいは受け取った包みを持ってみた。わりあい軽くて柔らかい。

「家に帰ってから開けて下さい」

「はい、ありがとうございます。アレックス様にもよろしくお伝え下さい」

 あおいがそう言うと、クレイグは礼をして去って行った。


「荷物も増えちゃったし、そろそろ帰ろうかな」

 あおいは大きな包みを持って、家に帰っていった。


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