第50話

 あおいは馬車で家まで送って貰うと、大きな荷物を取り出して玄関の前に置いた。

「それにしても、大きくてふわふわだなあ。何が入ってるんだろう?」

 あおいは大きな荷物を家の中に運び込んで、包みを開き始めた。


「ぬいぐるみかな? でもそれにしては軽かったし、私はそんなに子どもじゃないし……」 あおいは包みを開いて驚いた。

 中に入っていたのは桜色のドレスと靴とストールだった。


「うわあ、素敵!! 春のドレスね!? アレックス様、こんな高価な物を下さるなんて、良かったのかしら……?」

 あおいがドレスを持ち上げると、ひらりと一枚のはがきが落ちてきた。

 <いつもありがとう、あおい。今度はこのドレスを着てパーティーに来て下さい。アレックスより>


「アレックス様、助かるなあ。いつも同じドレスだったこと気付いてらっしゃったんだな」

 あおいは一人恥ずかしさに頬を染めた。

「早速着てみよう!」

 あおいは着ていたドレスを脱いで、桜色のドレスに着替えた。

「凄い! サイズぴったり! 何処で調べたのかしら?」

 あおいはちょっぴり採寸の正確さに引きながらも、鏡の前に移動してクルクルと回ってみた。


「動く度に裾がふんわり広がって、優雅なドレスね。気に入ったわ」

 あおいは嬉しくて、鏡の前で微笑んだり、ポーズをとったりしていたが、ふと我に返った。「いけない、ドレスを汚す前にしまいましょう」

 あおいは着ていたドレスと、新しく貰ったドレスをそれぞれ手入れしてからクローゼットにしまった。


「それにしても、こんな高価な物のお返しって、何をあげれば良いのかしら?」

 あおいはクローゼットの前で、考え込んでしまった。

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