第36話

 あおいが家でクレープや錬金術の練習をしていると、城の使いが来た。

「あおい様。お手紙です」

「はい。あ、アレックス様からだ」


 あおいは手紙を開いた。そこにはアレックスの誕生パーティーが週末に開かれるので、是非来るようにと書いてあった。

「お誕生日か。誕生日プレゼント、何にしよう?」


 あおいはちょっと考えて、一年間有効なクレープの無料引換券をアレックスにプレゼントすることにした。

「アレックス様、甘いもの好きだからね」

 そう言いながら、あおいはプレゼント用にシュトーレンも作り始めた。


 週末になった。あおいはクレアに言われたとおり、町で買ったドレスを身にまとい、予約していた馬車で王宮に向かった。

 

 王宮は町中の人であふれかえっている。


「アレックス様、人気あるんだ」

 あおいは馬車を降りて王宮の中に入った。

「こんばんは! あおい、こっちこっち!」


「ロイド様、ローラ様!」

 あおいは二人にに手を振って、歩き出した。

「こんばんは。ローラ様、お久しぶりです」

 ローラがはにかみながらお辞儀をする。

 

 ロイドはあおいの格好を見て、素っ頓狂な声を上げた。

「何だ? その格好は? どこかの令嬢みたいだな」

「お城のメイド長さんに、王宮に来るときはドレスを着なさいって言われたんです」

 あおいはくるりと回って、微笑んだ。

「似合いますか?」


「ああ、よくにあっていますね」

 あおいの背中の方から声がした。

「アレックス様!? どうしてここに!?」

「まだ、式典が始まらないので、町の人々に挨拶をしに来たんですよ」

 アレックスはそう言うと、周囲に手を振って微笑んだ。そのたびに歓声が上がった。


「それでは、これで私は戻ります。あおい、くれぐれもお酒は控えて下さいね」

「はあい」

 アレックスは真顔であおいに釘を刺した。


「ロイドさんも、あおいがお酒を飲まないように見張っていて下さい」

 去って行くアレックスの姿を見送りながらロイドが言った。

「あおいの酒癖の悪さはよくわかってるからな。飲むんじゃないぞ、あおい」


 ロイドが渋い顔をしていると、ローラがあおいに訊ねた。

「そうなんですか? あおいさん」

「ローラ様までそんな事言わないで下さい」


 あおいは顔を赤くして、そっぽを向いた。

 

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