第35話
朝、おきると良い天気だったので、あおいは庭で朝食を取ることにした。
ベーコンエッグをのせたトーストを庭にしいたシートの上で食べていると、ロイドとアレックスがやって来た。
「おはよう、あおい。美味しそうなもの食べてるな」
「おはようございます、ロイド様」
あおいがロイドに挨拶していると、アレックスが割って入ってきた。
「おはよう、あおい。口元に卵の黄身が付いてますよ?」
アレックスは白いハンカチを取り出し、あおいの口元を拭こうとした。
「アレックス様、私は子どもではありませんよ?」
あおいはアレックスに口元を拭かれて、顔を赤くした。
「あおいは、今日の予定は決まっていますか?」
アレックスが言うと、ロイドも言った。
「今日は俺たちは栗拾いに行くつもりなんだけど、一緒に行くか?」
「はい! 行きます!」
三人はかごを持って、森に出かけて行った。
栗の木の林に着くと、あおいが歓声を上げた。
「すごい! 立派な栗の木! 実もいっぱい落ちてる!」
ロイドは辺りを見回して、ニヤリと笑った。
「じゃあ、早速拾おうか。アレックス様、競争しましょう!」
「そうですね、ロイドさん。競争ですね」
アレックスが言うと、ロイドは何か思いついた様子だった。
「勝った方に、あおいがキスするというのはどうだ!?」
ロイドの言葉にあおいが真っ赤になる。
「ちょっと、困ります!」
あおいは眉をひそめた。
「いいでしょう。あおい、私を応援して下さい」
アレックスは腕まくりをして、勝負に望んだ。
地味な戦いは続いた。
地面に落ちた栗のいがを靴で踏んで広げて、栗を拾う。
腰をかがめた作業を続けているので、二人ともしんどそうだった。
「そろそろお昼です! ロイドさんもアレックス様も終わりにしませんか!?」
あおいの声で、勝負はここまでとなった。
勝ったのはロイドだった。
「あおい、祝福のキスをしてくれ」
「……!」
あおいは、ロイドの手の甲に軽く唇を当てた。
アレックスは不機嫌そうだった。
「まったく。あおいは軽薄です」
アレックのぼやきを聞いて、あおいは怒った。
「勝手に人を優勝賞品にしておいて、何を言ってるんですか!?」
「まぁまぁ。でも、キスは口にするものだと思ったけどな」
「ロイドさん! 破廉恥です!!」
あおいとアレックスの声が重なった。
「まあ、栗も沢山採れたし、今日はこれで帰るとするか」
ロイドはかごを見せながら、あおいとアレックスに言った。
「私もかごいっぱい栗が拾えたし満足です」
あおいもにっこり笑った。
「私が拾った栗は城に持ち帰るとクレイグに叱られますので、あおいにあげます」
「本当ですか!? ありがとうございます、アレックス様」
さりげなく、あおいとアレックスは手をつないでいた。
「おいおい、いちゃつくのは二人きりのと気にしてくれよ」
ロイドが笑いながら茶茶を入れた。
「いちゃついてません!」
あおいはアレックスから手を離し、家に向かって一人で歩いていった。
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