第10話
天気の良い日だった。今日は討伐隊に参加することになっていた。
あおいが冒険に行く準備を済ませたころ、ドアがノックされた。
「おはようございます、あおい」
「おはようございます、アレックス様」
あおいはドアを開けた。
「あおい、準備は出来ていますか?」
「はい。あら? ロイドにローラも?」
あおいの問いかけに、アレックスが答えた。
「今日はゴブリン退治なので、町で有名な冒険者に声をかけたのです」
「ええ!? ロイドとローラって有名人だったの?」
「まあ、一応な」
ロイドは鼻をこすりながら、得意そうに言った。
「ゴブリンは森の奥に現れたそうです。それを退治に行きます」
ローラが遠慮がちに言った。
「分かりました」
あおいは大きなバスケットを抱えて、アレックスの後についていった。
「アレックス様、ゴブリンの退治くらい兵隊に任せないのですか?」
「たまには戦いをしないと、腕が鈍ってしまいますので」
アレックスの言葉にロイドが茶々を入れた。
「そう言いながら、あおいの料理を食べたいだけじゃないのか?」
アレックスは笑ってロイドに答えた。
「そうですね。あおいの錬金術にも興味がありますね」
話しながら歩いていると、森の奥までたどり着いた。
「この辺りにゴブリンが出るそうです」
「それなら、これを食べて下さい」
あおいはバスケットから、三つの焼きまんじゅうを取り出した。
「これは?」
アレックスがあおいに尋ねる。
「攻撃力が上がる、カレーまんじゅうです!」
あおいが配ると、3人はそれを頬張った。
「辛い!」
ローラが泣きそうな顔をした。
「でも、美味いな」
ロイドとアレックスはパクパクとカレーまんじゅうを食べた。
「おお、体の芯から力がわいてくる!」
アレックスは武者震いをした。
「丁度良く、ゴブリンも現れたぜ!!」
ロイドが剣を構える。
出てきたゴブリンは3匹だった。
「行くよ! 炎の壁!!」
ローラが魔法を使う。
「今のうちに剣で倒して!」
「はい、行きますよ、ロイド!」
「こっちは任せろ、アレックス!」
ロイドとアレックスはあっという間にゴブリンを倒してしまった。
「なんか弱かったな」
ロイドが言うとアレックスも言った。
「それは、あおいのカレーまんのおかげだったのではないでしょうか?」
「そうだな。一太刀でゴブリンが倒れたもんな」
あおいは立ち尽くしていた。
「皆さん、お強いんですね。私、見てるだけで何も出来ませんでした」
「あおいの錬金術のおかげです」
アレックスが言うと、ロイドが付け加えた。
「でも、腹が膨れるのが難点だな。沢山は食べられないぞ」
「分かりました、工夫してみます」
あおいは真摯にロイドの台詞を受け止めた。
「そろそろ帰りませんか?」
ローラが言った。
「そうですね、帰りましょう」
アレックスを先頭にして、一同はあおいの家まで帰って行った。
あおいの家に着くと、あおいは残っていた薬草クレープと、ポーションゼリー、エリクサー金平糖を一人分ずつに分けて、お土産にしてあげた。
「ありがとう、あおい」
アレックスが声をかけると、あおいは赤くなった。
「あれ? ふたりってそう言う関係なの?」
ロイドが驚いたように言った。
「いいえ!? どういう関係も、お友達ですよ!?」
あおいが慌てて否定すると、アレックスが笑ってあおいの頭をポンポンと軽く叩いた。
「私のことはお友達ですか?」
アレックスは面白がっている。
「もう! アレックス様なんて知りません!」
「それじゃ、今日はここで別れることにしよう」
アレックス達は町に帰っていった。
「あーあ、びっくりした」
あおいは残った薬草クレープをもぐもぐと食べた。
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