第8話

 ある日、あおいは午後の休憩をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「はーい、どうぞ」

 あおいがドアを開けると、青い顔をしたアレックスがそこに居た。


「アレックス様、顔色が悪いようですけど、どうしたんですか?」

「たいしたことは無いのだが、モンスターから毒の攻撃を受けてしまってね」

「とりあえず、家の中に入って下さい」

「ありがとう」

 あおいはアレックスをソファーに座らせると、冷蔵庫からあんパンを取り出した。


「はい、どうぞ」

「あおい? 私はお腹を空かせているわけではないのですよ?」

「あ、これ、毒消しあんパンです」

「毒消しあんパン?」

「はい」

 アレックスは苦笑しながら、パンをかじった。

 少しクセのある味だったが、美味しかった。


「おや、体が楽になってきたようです」

 アレックスは立ち上がってみた。

「よかった。毒消しを作ったら、毒消しあんこになっちゃって。持ち歩けるようにあんパンにしてみたんです」

 アレックスは我慢しきれず吹き出してしまった。

「ああ、もう! 笑わないで下さい!! 真剣に心配してたんですから!!」

「そうだな。ありがとう、あおい」

 アレックスはそういってあおいの頭をポンポンと撫でた。


「今度、ピクニックでも行かないか?」

 アレックスの誘いに、あおいはきょとんとした。

「いいですけど、急にどうしたんですか?」

「あおいの錬金術は面白くて美味しいから、もっと見せて欲しいと思って」

 あおいは頬を膨らませて抗議した。

「それって褒めてます?」

「そのつもりだが?」


 アレックスは元気になって、王宮に帰っていった。


「あれ? 二人でピクニックって、もしかしてデート!?」

 あおいは一人、顔を赤くしていた。

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