第11話 ドミニオン・オブ・ソード◆-2
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「馬鹿にしないでいただけますの!?もう少しお兄様に分かるよう、配慮した言い方をしますの!不親切ですの!」
動き出そうとした俺を遮り止めるアンナ。
「それに、こちらはお前の実力は把握した上で言っているんですの!」
「……どう言う意味でしょうか」
「実行すれば、二度と会えませんの。誰に、とは言わなくともお分かりでしょう?お父様に謁見も許しませんの」
「っ!」
……俺の考えることくらいはお見通しというわけか、選択肢は最初からないと。
「いいから、僕に分かるように話せ。会話の基本も理解していないのか貴様」
こいつは本当に理解してなかったのか……?
「……この広い帝国を無事に出る為には、食料や生活用品、それと乗り物が必要です、検問も通過できるようにしなければならない。外へ出れても他の王族の捜索が及ばないように、他国の庇護下に入る必要があります」
「騎士隊や指揮官、それに脱出の全権とはなんだ?」
「追手の目を掻い潜るのに、囮がいります。全権は……ことが始まれば、そちらの指示を聞いていられないので。王族の勅命という大義名分が有れば、支障は無くなります」
何で交渉相手を諭さないと行けないんだ……?
「……なるほど、常識が違うと不幸なすれ違いが起こるものだな」
こいつの頭はどうなってるんだ……?
しかし、よくこれで王座を簒奪しようとか思ったな。
「流石、お兄様!学習が早いですの!」
「ふん、当然だ」
何故か得意げなハインリヒ。
「それで、それがお前の要求する褒美というわけだな?」
こいつ、話を聞いていなかったのか?
「前提です、これくらいは用意がないと要望通り行方不明、という結果にする事は出来ません」
……そうだ、それだけの手を掛ければ、行方不明という結果を"作り出す"事は可能なんだ。
前王妃のように。
彼女も同じように何かしらの理由で失踪扱いになっている可能性もあるが……
「お前の言いたい事は理解できた」
「ならば──」
「だが、そこまで費用をかけるのなら殺した方が楽だ」
「……は?」
必要最低限の事を言っただけで殺した方が早い?
「確かに、貴様らには褒美が必要なのは理解できたが、そこまでの手は掛けられん」
「褒美ではなく必要経費だと何度言えばっ……」
これまで俺は何の話を……いやこれ以上は危険か。
「それを決めるのはお前ではない。こちらが保障する身の安全は、あくまでその命だけだ」
「……申し訳ないですの。これ、命令であって、依頼ではありませんの。"わざわざ"お前に仔細な情報を直接伝えて、話までしている段階で我々からすれば、一方的ではありませんの」
常識が違うというのは、そういうことか。
「……それほど手を掛けられないというのも承知しました。その上で、こちらから報酬として"お願い"するのは、亡命先の確保、当面の資金、そして旅に必要な"足"、通行証です」
「ふん、よかろう。最初からそのように言っていれば良いのだ。僕は用事があるからこれで。また追って連絡する、ではな」
勝ち誇ったような顔をして、ハインリヒは部屋を出て行った。
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