第9話 パート・オブ・ユア・ワールド◆-2

◆◆◆◆◆◆◆◆



『──いふへっ、めね、よえごってぃ、いえのおぇがぁた!』


「な、なんだ!?こいつら!?」


 聖女様の足元に、童話の小人のようなものがわらわらと集まって来たのは。


『いふへふん、むぐふてぐん、げふぃぐりぃ?』


 それらと、当然のように会話する彼女。


『むぐふたぐん!』

『さふたぐん!』

『ぐふとのぐ!』


 聖女様の周りで騒ぐ小人達。


『やふぁいおぐ』


 彼女の口から出た言葉は、この前聞いた、お礼の言葉だった。


『げふね、めぐねす!』

『るるいえ、えいえ、すごってぇむ!』


 小人達が一体何を言っているかは分からないが、彼女が笑っているから、悪い話では無さそうだが。


『げへぐる、いぇぐ、びぃぐふるぅふねふ』


 振り返って俺にそう言う。


「いや、頼むから俺に分かる言葉で……」


『くな、がるぬ?』


 小人の少女が、手に持った笛で俺を指す。


 ……恐らく誰か聞いているんだろうが……


『げふに──』


 聖女様が何か言いかけたところで、殺到した小人達に俺の足元は包囲された。


『うくふむるに!のぐ!うくふむるに!』


 執事風の服を着た小人が、バトンのようなもので俺の足をバシバシ叩く。


「痛っ!な、なんだ?!」


『いあ、えへい、はりるげと!』


 払い退けた小人は俺をバトンで指す。


『げふ、はりる?』


 それに問いかける緑色の炎。


『はりるね、ふんぐりょうめ』


 剣呑な目つきで俺を睨む小人の少女。


『ふんぐりょうめ!』

『りょうめ!』

『ふんぐりょうめ!』


 何かを復唱しながら、俺の服を引っ張ったり棒で叩いてくる。


 あまり歓迎されていないようだ。


『えぷ、げふに、しょぐっふぇゆぇく、りふへぇ!』

『りふぇ!おぐのぐ!しょぐっ!』


「聖女様、こいつら何を言ってるんだ?」


「異端者は、言葉は、侵入者…地獄は、送る」


「敵じゃないって説明してくれよ」


「これは、面白い」


 くつくつと笑う聖女様。


「……そうだ、聖女様。俺にも言葉を教えてくれないか?」


 それから、俺は彼らの言葉を覚える事にした。


 それさえ、分かれば、聖女様や小人達の言いたい事が理解できるようになれるかと、思っていた。

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