第7話 ローリング・ストーン◇-2


◇◇◇◇◇◇◇◇


「……お前、死にましたの。第二王女◾︎腕◾︎掴む◾︎◾︎。暴力ですの。◾︎◾︎ですの、◾︎◾︎。お姉様◾︎◾︎間◾︎──」


 アンナはオードを睨みつける。


「◾︎◾︎◾︎、◾︎◾︎◾︎申し上げます、◾︎◾︎◾︎、この帝国◾︎◾︎ける権力◾︎聖女様◾︎◾︎するもの。◾︎◾︎たりとも聖女◾︎◾︎◾︎◾︎して侵すべからず、◾︎◾︎◾︎帝国◾︎◾︎では?」


 オードは一歩も引かず堂々と言う。


「神殿騎士◾︎◾︎◾︎知った◾︎◾︎◾︎口◾︎聞きやがりますの。あくまで◾︎◾︎民草◾︎◾︎◾︎するもの、◾︎◾︎◾︎それ◾︎従う◾︎◾︎◾︎ありませんの」


 二人が難しい言葉を使い始めるものだから、私にはイマイチ意味が分からなかった。


 けれど、何となくオードが私を守ろうとしてくれているのだけは理解できた。


「◾︎◾︎◾︎持つ◾︎◾︎陛下のみ、違いますか?」


「皇帝位◾︎正統◾︎◾︎市民、軍隊、◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎によるものですの、今◾︎暴君◾︎称されるお父様◾︎◾︎◾︎◾︎なものですの」


「貴女◾︎事実、◾︎◾︎◾︎、◾︎◾︎◾︎、◾︎◾︎たる聖女◾︎危害◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎としている。護衛◾︎命じ◾︎◾︎◾︎神殿騎士◾︎◾︎◾︎、◾︎◾︎◾︎、帝国人◾︎◾︎◾︎見過ごす◾︎◾︎◾︎行かない」


「白痴◾︎、暗君、◾︎◾︎◾︎"正義"◾︎味方◾︎◾︎◾︎◾︎騎士……はぁ、◾︎◾︎国◾︎末期ですの」


 オードの手から逃れ、吐き捨てるように言うアンナ。


 なにやらよく分からないけど、オードが口喧嘩に勝ったような感じらしい。


 アンナがあまり見たことの無い、悔しそうな表情をしていた。


 けれど、そんなことをして大丈夫なんだろうか、あれでも王族なんだから……


「お姉様、今日◾︎そこ◾︎◾︎◾︎◾︎免じてやりますの、"宿題"◾︎次来る◾︎◾︎◾︎、それじゃ……いや、そこ◾︎◾︎◾︎、後◾︎私◾︎部屋◾︎来ますの。◾︎◾︎ですの」


 アンナはオードに何か言うと、逃げるように去っていった。


「……聖女様。無事か?」


「おぉど…あんな…危険…分かうない…」


「聖女様◾︎許せば、何◾︎問題◾︎無いだろう?」


 苦笑いするオードは真面目な口調でそんなことを言う。


 私が許す、なんて言葉に大した意味なんて無いのに。


 もし、ちゃんと話すことが出来れば、彼がこんなことをしなくても済むんだろうか。


「……お願い…あう」


「聖女様◾︎ご命令◾︎◾︎何なりと」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「私…聖女…です」


「また"は"が抜けてるぞ」


「抜けう、した?」


「抜けてた」


「私、聖女はです」


「違う、私は」


「私は聖女はです」


「"は"が多い」


「は…いう…?なんで?私達…言葉いう、ない」


「……なんでって聞かれてもな……」


 オードは解答に困ったように苦笑いする。


「聞く、できう、なう、した」


「その調子で喋るのも出来る様になろうな」


「できう。今、話す、すう」


「出来る、な。いつもより下手になってるぞ」


 言葉を教わり始め、彼らが何を言っているのか聞き取れるようになった。


 これまで、話を聞く回数も時間も足りていなかっただけだったらしい。


 薬も減って、頭もあまり痛くならなくなった。


「私です聖女」


「……まだまだ、かかりそうだな」


 オードはそんなことを言うけれど、私にとって大きな前進だった。


 石は転がり始めた、そんな気がしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る