第2話 アイ・アム・ア・ロック◇-2

◇◇◇◇◇◇◇◇


 庭園を照らす光は橙色に変わっていた。


 夕方まで寝ていたらしい。


『マナ様、お目覚めになりましたか』


 "笛吹きの小人達"が私の顔を見る。


『……良い寝起きじゃない』


『お労しや、姫さま。現世はマナ様にはさぞかし生きづらい事でしょう』


 執事風の服を着た小人がそう言う。


『現世じゃない場所があるみたいだね、スカール?』


『その、わ、我々の世界と言いますか』


『じゃあ私を連れてってよ』


『無理ね、貴女が封じてるんだし』


 笛を持った女の子の小人が断言する。


『貴方達は……それに、あの"演奏"は違うの?人を眠らせる魔術じゃないの?』


 魔術、それを司る人ならざる者達の封印、それが聖女の役目。戦乱を沈める為に必要らしい。


 私が封印してるなら、普通に出てくる彼らは一体なんなんだろう。


『マナ、私達が人じゃないって言い切れる?』


『エーリカ達は小さいし、お父様やお兄様とは違う……』


『大きければ人間なの?』


『分からないけど……』


『答えられないなら、そういうことよ』


『マナ様に対してそのような言葉遣いは良くない』


 緑色の火の精がエーリカをたしなめる。


『トスチャも辞めたら?マナはその方がいいかもよ』


『遠慮させてもらう』


 トスチャは火の玉になってそれから黙ってしまった。


『じゃ、じゃあ、魔術!魔術教えてよ!使えれば──』


『申し訳ありませんが、マナ様。お時間です。扉の向こうで"お待ち"いただいていた方が、お目覚めのようです』


 スカールが告げた言葉は、私をどうしようもない現実に引き戻す。


『……そう。ありがとう』


 私が寝てる間、彼らが"演奏"を聞かせて眠らせていたんだろう。


『いいえ、お安い御用──』


「◾︎◾︎、分からない◾︎◾︎"一人◾︎"喋っていたな?この◾︎◾︎」


 開け放たれた扉の向こうにいたのは、"婚約者"。


 金色の髪に青い目の青年、第三王子のハインリヒだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る