第57話 やっぱり増える懸念のこと

やっぱり増える懸念のこと








・・・ふうぅ、何とか生き残ったぞ。


だがまあ、大分やられたな。




あの榊というオッサン、マジで達人だった。


『飛燕』という、おおよそ普通の剣術にはありえない初見殺しが決まらなければ・・・


負ける・・・死ぬか、もしくはこの程度の怪我では済まなかっただろう。




しかし、目と頭はまだいいがこの左手・・・


綺麗に中心を刺しやがって・・・神経とかは大丈夫なのか?


全く、最後っ屁が物騒すぎるな・・・オッサン。




「・・・!」




それにしても、いまだになんで勝てたかわからん。


もう一度やったら死ぬかもしれんな。




「・・・っ!!」




うあ。


脳内麻薬的なものが切れてきた。


だんだん痛くなってきたぞ、これは・・・




「・・・!!!!!」




それにしてもなんだかうるさいn






「しっかりしなさいっ!男の子でしょ!!」






「うぇっ!?」




頬を軽くはたかれて、我に返る。


・・・おお?




「・・・よかった、気が付きましたか」




そう言って心配そうに俺を見つめる八尺鏡野さん。


うわあ近い!睫毛長ァい!


・・・んん?あれ、さっきまで目の前にいた先輩は?


え、何この状況?




「田中野さん、気を失っていたんですよ?」




「あ、そ、そうですか・・・」




「意識の混濁はありますか?寒気は?」




「あ、いえ・・・大丈夫、です」




疲れと失血が原因かな?


心が平常に戻ってきたからなのか、全身が痛い。


脳内麻薬で麻痺していたみたいだ。




八尺鏡野さんは、テキパキと俺に包帯を巻いてくれている。


指揮官直々に看病してもらえるとは心苦しいなあ。


っていうかなぜ?


衛生兵的な人とかいないの?


まあ、やってもらって文句なんか言えないけども。




周囲では警官や自衛隊の方々が忙しそうに走り回っている。


あ、ライアンさんと森山さんもいるな。


2人とも無事だったのか・・・よかった。




「・・・左目と肩は大丈夫ですね。頭と掌の傷は・・・ここで応急処置します」




「え?頭もですか?これくらいすぐに塞がりますよ・・・」




「何を言っているんですか!傷の一部は頭蓋骨に到達しているんですよ!!」




八尺鏡野さんは怒鳴るように言ってくる。




え?嘘ぉ!?


あの感じでそんなに深い傷だったのか!?


・・・榊の刀、切れ味良すぎじゃない?




「・・・かなり痛みますが、我慢してくださいね」




え、八尺鏡野さんそのチューブはなに!?


あとそのホチキスの化け物みたいなのはなにぃ!?




「す、すいません・・・どーんとお願いします!」




だが甘んじて受けよう。


そんなに傷が深いんじゃ放っておいたら大変だあああああああああああああああああああああ!?


いってええええええええええええええええええええええええええ!!!!!


バツンバツンッっていう音も痛い!!死ぬ!!!


と、頭皮がホチキス止めされてる!!!




そのまま、俺はしばし激痛に身悶えした。


・・・死ぬかと思った・・・




え?ナイフも抜いて消毒する?


あ、わかりましたお任せいたしまぎいいいいいいいいいいああああああああああああ!!!!!


急に抜かないでえええええええええええ!!!






「気ぃ付いたか。ほれ、田中野・・・鞘も転がっとったわ」




治療に悶絶することしばし。


横から先輩が、さっき飛ばした脇差と・・・榊の日本刀を差し出してきた。


探してくれていたのか。


・・・くれるって言ってたよな、これ。




「・・・榊の持ち物ってのがアレですけど、貰えるものは貰っておきますか・・・」




「ほうじゃほうじゃ、武器に罪はないけぇな」




「今、何と言いました!?」




左手のナイフを引き抜いて処置してくれていた八尺鏡野さんが、恐ろしい形相で割り込んできた。


え?遺失物の横領が気に障ったのかな!?




「あ、す、すみません!ちゃんと警察に届けて半年後に受け取りま・・・」




「そっちではありません!榊と言いましたか!?下の名前は!?」




「え、ええっと確か・・・洋二郎だか洋一郎だか・・・」




「あっこで死んどるオッサンですわ」




それを聞くや否や、八尺鏡野さんは榊の死体まで走っていった。


・・・ひょっとして、知り合いかな?


悪いことしちゃったかな・・・でもあの場合は仕方がないと思うし・・・


取りあえず行ってみるか・・・




先輩の手を借りて立ち上がる。


・・・うお、こりゃ傷以外にも筋肉痛の気配がするな。


特に榊相手に無理をしたからか、関節が痛んでいる気がする。


・・・明日、起き上がれるかな。




「・・・間違いない、本人だ」




何やら榊の死体を見下ろして考え込んでいる八尺鏡野さん。


独り言がカッコイイですね。




「あの、お知り合い・・・でしたか?」




「・・・ええ、まあ、知り合いと言えば知り合いですね」




声をかけると、深刻そうな声が返ってくる。


やっぱり知り合いか。




だが、続く答えは俺の予想をはるかに上回る物だった。






「榊洋二郎は、服役中でした・・・龍宮刑務所で」






「・・・え、受刑者だったんですかこいつ」




成程ね。


そりゃあ、警察なら知ってるだろうさ。


っていうか、服役中ってことは・・・




「刑務所が破られたっちゅうことですかいの、八尺鏡野さん」




俺の心中を代弁するかのように、先輩が発言する。




「・・・そのようですね。この騒動発生時から、あちらとは連絡が途絶していましたが・・・」




おいおい。


囚人がここにいるってことは・・・


受刑者全員が野に放たれてるかもしれないってことじゃないか!?


洒落にならないな、それは・・・


前にも宮田さんに聞いたが、あそこは重犯罪者まみれの刑務所だぞ!?




「龍宮の治安が壊滅してる原因の一端が、わかったような気がしますよ・・・」




「徒党を組んで暴れとる奴らの中にも、こがぁな奴が紛れとるんじゃろうの・・・」




俺と先輩は、揃って嘆息した。




「八尺鏡野さん、ちなみに榊は何の罪で服役していたんですか?」




「罪状は、33人に対する嘱託殺人、公務執行妨害、そして殺人です」




・・・とんでもねえ奴だ。


嘱託殺人ってなんだったっけか・・・?


えーと確か・・・人に頼まれてその本人を殺すってやつだったっけか?


しかし33人とは多いな。


あ、それってもしかして・・・




「『終末の家』時代の集団自殺に絡んでます・・・?」




「ええ、そうです。榊は信者の依頼に基づき、自殺志願者の・・・わかりやすく言えば介錯を実行しました」




ああ、そういうことか。


あれ?でもそんなことニュースで報道していたか?




「依頼者に未成年も複数含まれていたこと、被害者が多いことから裁判が長引いていまして・・・加えてあまりにセンセーショナルな事件でしたので、報道規制が実行されていたはずです」




・・・ふむ、そうか。


よくわからんが、そういうことなんだろう。




「脱獄し、古巣に合流したということなんでしょうね・・・」




満足そうに死んでいる榊を見ながら、八尺鏡野さんは顔をしかめた。




「龍宮刑務所には、旧関係者が他にも何人か収監されていましたから・・・これは、大変なことになりそうです」




榊みたいな奴らが、同じように合流している可能性もあるってことかよ・・・


考えるだけで頭が痛くなってくる。


全員が全員こんな武闘派じゃないと思うが・・・




「しかし、この榊とやり合って生き残るとは・・・流石は田宮先生の弟子ですね、田中野さん。こいつは逮捕されるまでに多数の警官を死傷させた男ですよ」




・・・今から10年以上前だから、全盛期はとんでもなく強かったに違いない。


っていうかその場で射殺してろよ。


そうすりゃこんな面倒も起こらなかったんだからさ。




「・・・いやいや、長い刑務所暮らしで鈍ってただけじゃないですか?先輩方ならもっと簡単に倒せたと思いますけどね」




特に六尺棒を持つ七塚原先輩なら、刀ごと粉々にできたと思う。




それに、なんというか榊からは『生きる気力』的なものがあまり伝わってこなかった。


生死を分けたのは、それが原因かもしれない。


死んだときもなにか変だったし。


やはりハングリー精神は重要なんだなあ。




「わしがのした連中にも、ちいと手強い連中が混ざっとったわ。同じ手合いかもしれんのう」




俺より時間かかってたし、そうなのかもしれん。


俺も人の事は言えないけど、先輩の返り血が凄い。


人数も多かったんだろうなあ。




「ともかく、後続がやってこないうちに行動しましょう。銃器の回収や・・・被害者の埋葬も」




そうだ。


ここに来た目的はそっちだった。


突発的な戦闘に気を取られていた。




痛み始めた体を無視し、俺はふれあいセンターへ歩き出す。


あんなカス共はどうでもいい。


避難民や警官・・・それに、子供たちを葬ってあげなければ。






ふれあいセンターの体育館。


多数の遺体の中に、あの時の女の子を見つけた。


昨日と同じように、静かに眠っていた。




「アア、アアアアアアア!!!・・・God please help them!!!!」




俺を心配してついてきてくれたライアンさんが、後ろで膝から崩れ落ちた。


振り返ると、両手を組んで涙を流している。


・・・キツイよなあ、そりゃあ。


俺は昨日見たからまだ堪えていられるが、それでも気を抜くと叫び出しそうだ。




「待たせたのう・・・すぐに、葬ってやるけえな」




先輩も、あの時抱えていた子供たちに話しかけている。




「人間の・・・人間の所業ですか、これが」




森山さんは、重なり合った遺体の前で怒りに震えている。


外との扉を開けたことで、より鮮明に見える体育館の中はまさに地獄だった。




体育館の各所から、すすり泣きや怒りの声が上がる。


警官、自衛官、そして駐留軍。


皆が皆、一様に彼らの死を悼んでいる。




よかった。


俺の周りには、いい人間しかいないらしい。


これをやったカス共と同じ種類の屑はいないみたいだな。




「ごめんなあ、遅くなっちゃったよ」




声をかけ、女の子の遺体を持ち上げる。


・・・軽い、なあ。




・・・ん?




女の子の胸の傷に違和感を覚えた。


正確には服に付いた血痕だが。


これは・・・まさか。




女の子を床に下ろし、周囲の遺体に手をあわせてどける。


この子がいたのは・・・ここらへんだったな。


始めに引っ張り出したあたりの遺体を調べると、見つかった。




「・・・立派な、お姉ちゃんだったんだな、本当に」




女の子より、いくらか年齢が下の・・・


男の子の遺体がそこにあった。




その胸には、やはり刺し傷がある。




「怖かっただろうに・・・なあ」




女の子の刺し傷は、背中から。


男の子の刺し傷は、正面から。




この子は、自分より小さな子を抱きしめている状態で刺されたのだ。


最期の瞬間に、それでも守ろうとしたのだ。




震える手で男の子を抱える。


シャツの胸に、名前が書かれていた。


女の子のシャツにも、確認すると同じ苗字が書かれた名札が付いていた。




この2人は、一緒に埋めてあげよう。




「気付かなくてごめんなぁ、2人とも・・・ごめん、なあ」




女の子も抱え上げ、2人とも胸に抱く。




・・・畜生。


枯れたと思ってたのに、まだ涙が出てきやがるのか。


左目の傷に沁みるぜ、畜生。




「センセイ!ワタシガ・・・!」




俺の左手の包帯に血が滲んだのを見たのか、ライアンさんが涙を流しながらこっちへ来る。


近付いたことで、俺の抱えている子供たちに気付いたのか・・・雷に打たれたようにそこで止まってしまった。




「いいんです、ライアンさん。この2人は俺が運びます、俺が、運びたいんです」




「アアア・・・ナンデ、子供・・・こ、こんな、こんなこと、ガ・・・!!!」




ライアンさんは、恐る恐る俺に近付き。


子供たちの顔を見て、さらに目を見開いてさらに泣き出した。


・・・自分の子供のことを思い出しているんだろう。




人間じゃねえ、こんなことができるのは人間じゃねえ・・・許せるかよ、こんなこと。




「・・・ライアンさん、他の遺体を運び出してください、俺は、この子たちを」




「は、ハイ・・・」




どこか夢の中にいるような気持でそのまま外へ歩き、八尺鏡野さんを探す。


・・・いた。


警官たちに指示を出している。




「八尺鏡野さん、避難民の埋葬場所は・・・」




「あ、田中野さん、無理はなさらない・・・で・・・」




振り向いた八尺鏡野さんは、俺の抱えている子供を見て動きを止めた。




「う、後ろの、後ろの運動場へ、はこ、運んで、ください」




つっかえつっかえ話していたが、ついに耐えきれなくなったように口を押さえる。




「なんてこと・・・なんて、こと」




彼女はふらつきながらこちらへ歩いて来て、子供たちの髪に触れた。




「・・・ゆ、ゆっくり・・・ゆっくり、眠りなさい」




涙を零しながら、しばらく子供たちの顔や体をさする八尺鏡野さん。




「・・・重機で穴を掘って、埋葬します。それまで、並べて・・・おいてくださいますか」




「はい、わかりました」




涙を拭うと、そこにはいつも通りの八尺鏡野さんがいた。


赤い目が痛々しい。


・・・強いなあ、この人。




子供たちを抱えて運動場に向かう途中、風に乗って後ろからつぶやきが聞こえてきた。






「・・・覚悟しておけよ、生かしてはおかん。必ず、必ず殺してやる・・・かなら、ず」






気丈に振舞う八尺鏡野さんの背中から、立ち上る殺気が見えた気がした。


警官だって人間だもんな。


・・・指揮官って、辛いなあ。




運動場の片隅に、遺体を並べておく場所があったのでそこに姉弟を横たえた。


痛ましそうに彼らを見ている警官に、絶対にこの2人を離すなと伝言し、俺はまたふれあいセンターへ戻った。




皆と一緒に何も考えないようにしながら、ひたすら体育館の遺体を搬出。




老若男女、様々な避難民の遺体を抱えて何度も往復した。


彼らの死に顔を見ながら、『みらいの家』への憎悪がどんどん高まっていくのを感じていた。




ゾンビに殺されるのは、自然現象のようなものだ。


確かに悲しいが、それは野生動物に食い殺されるのと同じような悲劇だ。




だが、同じ人間に、それもあんなふざけた理由で殺されるのは・・・不憫でならない。




「―――仇は、取ってやるからな、絶対に」




苦痛に満ちた顔で事切れている男性を背負いながら、俺は誰に言うともなくこぼした。






どれくらいの時間が経ったのか。


1階の遺体の搬出は終わり、2階の遺体の搬出と銃器の回収作業が始まっていた。




「おい、もうやめとけ田中野」




そっちを手伝おうとしたら、先輩に肩を押さえられた。




「頭と左手、傷が開いとるぞ・・・またホチキスされたいんか」




手をやると、頭の包帯が湿っていた。


掌の包帯は、遺体の血が混ざっているので自分ではわからない。


左目も包帯を巻かれているので、視界も狭いから自分では確認しようがない。




「おまーはもう十分やった。後は皆さんに任せい・・・失神でもされたら、余計に迷惑じゃろう」




言葉は優しいが、肩に置かれた手はビクともしない。


どうあっても俺を動かす気はなさそうだ。




「・・・了解です、車を移動しときますね」




「おう、ついでに一服でもしとれや」




先輩に断って車に乗り込み、エンジンをかけて邪魔にならない場所に移動させる。


エンジンを止めてシートに体を預けると、今まで無視していた痛みや疲れが一気に出てきた。


このままここで寝入ってしまいそうだ。




寝ては困るので煙草を咥え、火を点ける。




見るとはなしに入り口を見ていると、警官や避難民の遺体が続々と運び出されていく。


あのカス共の死体は後回しにするのだろうか。


いっそのことまとめて体育館ごと燃やしてやりゃあいいんだ、あんな奴らは。


・・・俺ならそうするが、さすがにあの人たちは積極的に放火はしないだろうけども。




しばらくして、川原さんの遺体が運び出されるのが見えた。




彼の遺体は複数の警察官によって大事そうに運ばれ、そしてその誰もが涙を流している。


運び手だけじゃなく、その周囲には多くの警官の姿がある。


森山さんも・・・運びながらおいおい泣いているのが見えた。


ここまで聞こえてくる。




慕われていたんだなあ・・・川原さん。


立派な人・・・だったもんな。


いつか、子供たちを連れて墓参りに行きたい。


こんなくそったれな状況が終わったら、いつか。




駐留軍や自衛隊も、作業の手を止めて敬礼で見送っている。


雰囲気で、彼や彼ら警察官が立派に責務を果たそうとしていたことが分かるんだろう。


まるで、映画の中の光景だ。


離れた所に立っている八尺鏡野さんも、何度か涙を拭うような動きをしつつ敬礼していた。




それを見ながら、気が付いたら拳を握り締めていた。


ぽたぽたと、左手から血が垂れる。




「・・・根絶やしに、してやる」




いい人が、いい人たちが死んだ。


子供も老人も、死ななくてもいい人たちが死んだ。


いや、『殺された』




「せめて、せめて・・・その、仇は取る」




運動場に続く葬列を見ながら、俺はそれだけを考えていた。






避難民や、警官たちの遺体が埋葬されていく。


この施設の倉庫にあった重機と人海戦術によって運動場に掘られた、大きな穴に。


俺も手伝おうとしたら、森山さんやライアンさんに必死で止められた。


どうやら、俺の見かけはなかなかの重傷らしい。




・・・そんなに酷くはないんだけどなあ。


以前に撃たれた時に比べれば、これくらいなんともない。


さっき握れたことを考えると、左掌の神経や骨は無事のようだし。




あの姉弟の遺体も、土がかけられていく。


監視のためか、俺の横にいたライアンさんが堪え切れぬように嗚咽を漏らした。


森山さんも、ポロポロと涙を零している。


子供が死ぬのは、特に辛いよなあ・・・




「っ・・・May your soul rest in peace・・・ウゥ、アァア・・・」




ライアンさんが嗚咽交じりで呟いた。


恐らく鎮魂の意味だろうか。


それを聞きながら、俺はその小さな遺体が見えなくなるまで手を合わせていた。






「さて、高柳運送に帰りましょうか、先輩」




埋葬が済んだので、一足先に帰ろう。


カス共の死体は残っているが、俺はもう放置することにした。


申し訳ないが、後は皆さまにお願いしようと思う。




「何を言いよるんなら、おまーはこれから御神楽に行くんで」




「・・・へ?」




「八尺鏡野さんが首に縄付けてでも連れて来いって言いよったぞ・・・しっかり傷の手当てをするんじゃろうが」




・・・そういえばそんなことを言われたような気がしないでもない。




「黴菌でも入ったらやれんじゃろうが、ホラ行くで田中野・・・わしが運転するけぇな」




「はぁい・・・」




サクラたちに会えるのはもうちょっと後になりそうだ。


俺はおとなしく先輩に連行されることにした。




「さっき無線で連絡も入れとったみたいじゃしな。神崎さんの声が無線機越しによう聞こえよったで」




・・・帰りたくなくなってきたなあ。


心配されてるんだろうなあ。




俺は、重い足を引きながら軽トラへ歩き出した。

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