第48話 情報配達のこと

情報配達のこと








「ぐうう・・・やはりセメントの上で寝たのが悪かったか・・・?」




起床し、寝ぼけた頭で考える。


背中を伸ばすと、バキバキと体に音が響く。


昨日、屋上でうたた寝したのが原因らしい。


もう若くないしな・・・いやいやいや、まだ老け込むには早いぞ。




「わふ」




同時に起きたサクラが、フンフン鼻を鳴らしながら布団から出てくる。


まだ少し眠そうだ。




「おはよう、サクラ」




「ひゃん!」




ぐりぐりと頭を撫でてやると、覚醒したサクラが嬉しそうに飛び掛かってきた。


甘噛みをいなしつつ抱っこし、階段を下りる。


さあ、一日の始まりだ。






「おはよ!おじさん、サクラちゃん!」




「おはようございます、田中野さん」




「わん!」




「おはようございます」




休憩室の方からいい匂いがするので行ってみると、斑鳩母娘が朝食の準備をしていた。


ガス式のコンロでは、鍋がくつくつと音を立てている。


やっぱり朝は味噌汁だよなあ・・・


璃子ちゃんもかわいいエプロンを付けてお手伝いをしているようだ。




「いやあ、すいませんね斑鳩さん。昨日のことでお疲れでしょうに・・・」




「いいえ、翻訳ならお任せください。料理も好きですから」




にこりと微笑む斑鳩さんである。


うーむ、良妻賢母・・・ってやつか?


旦那さんは幸せだっただろうなあ。


前時代的と言われようが、やはり男は料理の美味い奥様に憧れるものである。




「私も手伝ったんだからねっ!」




お玉を持ったまま胸を張る璃子ちゃんである。


あああ、零れるぞ。




「朝からお疲れ様、璃子ちゃんもいいお嫁さんになりそうだなあ」




「なあにそれ?おじさん、ふるーい!」




満面の笑みで言われてしまった。


・・・結構ダメージがあるなあ。


サクラは周囲の匂いを嗅ぎ、テンションがマックスである。


はるか昔、一世を風靡したミニ〇駆のように床を疾走している。


すごいコーナリング性能だ。


サクラのご飯も用意してやらんとなあ。




「はーい、サクラちゃんのご飯もあるからねっ」




「ひゃおん!わふ!おぉーん!!」




璃子ちゃんはドヤ顔でドッグボウルを掲げる。


サクラはもう千切れんばかりに尻尾を振り回している。


なんとまあ用意がいいこと。




「おお、サクラのご飯まで用意してくれたのか・・・悪いなあ」




「袖千切り合うも多少の縁!ってやつだよ!」




・・・違うと思う。


何だよ千切り合うって。


江戸時代の修羅場かなにか?


斑鳩さんは外国人なのにことわざや四字熟語なんかに驚くほど精通しているけど、娘の方は微妙に間違えるなあ。




「おじさんっ、なにか私のこと馬鹿だって思ってない?」




「ぜーんぜん、今日もかわいいなあって思ってる」




「にゅふーん!許す!」




許されてしまった。


喜んでくれるのはいいが、ボウルからドッグフードが零れそうになってるぞ。


気を付けてくれ、サクラが失神してしまう。




「朝から賑やかでええのう」




「元気が出ますねっ!」




食器を並べる手伝いをしていると、七塚原夫妻が起きてきた。


・・・先輩のライオンヘッドがいつにも増してぼっさぼさになっている。


寝ぐせかな?




「先輩、すっごいっすね髪。寝ぐせですか?」




「大分伸びたけえな・・・わしゃあ、そろそろ切りたいんじゃが」




「だーめですっ!このまま伸ばしてポニーテールにするんですっ!」




「・・・ちゅうことじゃけえなあ」




巴さんが眉を怒らせて抗議している。


先輩がポニーテール・・・ポニーテールというかサムライの総髪だな。


ますます武術家っぽくなってしまう。


巴さんの美的センスはどうなっているんだ・・・




っていうか俺もそろそろ髪を切ろうかな?


前髪が伸びすぎてて視界が危うくなってきたんだよなあ・・・


いっそのことカチューシャでも付けてみるか?・・・いややめとこう。




「すみません、少し寝坊をしました」




いつも通りピシッと決めた神崎さんがその後ろから入ってきた。


気にしなくてもいいのになあ。


みんな昨日のことで疲れているんだろうし。


決まった予定なんてないから、楽にいこうよ楽に。


食料の備蓄も十分あるしさあ。




「お気になさらず・・・休めるときには休んどかないと」




黒ゾンビ以外にはここの塀は無敵である。


・・・その黒ゾンビが問題なのだが。


どうすっかなあ、マジで電気柵試してみようかなあ。


となると、大木くん辺りに相談に行くことも考えないといけないな。




「あれ?綾おねーさんは?」




そんなことを考えていると、璃子ちゃんが不思議そうに呟く。


そういえば遅いな・・・朝食の時間には毎回起きてきているのに。


体調でも悪いのかな?




「呼んだ?」




「ひゃわぁ!?」




先程まで無人だったはずの休憩室の襖が開き、後藤倫先輩がひょっこり顔を出す。


気配もなかったぞ・・・このニンジャめ。




「味噌汁の匂いを堪能していたらこんな時間に。おはよう諸君」




・・・先輩はいつも通りだなあ。


ふと、目が合ったと思ったら額にデコピンをされた。


痛い。




「なにするんすか、先輩」




「そこにデコがあったので」




どこぞの登山家みたいな言い訳をするんじゃない。


まったく・・・かれこれ20年くらいの付き合いになるが、俺はいまだにこの人が分からない。








「今日はどうしますか?」




皆で朝食を食べ、思い思いに休憩をしている。


俺は日課の素振りが終わったので、何故かいつも近くにいる神崎さんに聞いた。


・・・俺が稽古してたら絶対近くにいるよな、この人。




「そうですね・・・」




会社入り口の階段に座り、分解清掃していたらしい拳銃をカチャカチャと組み上げた神崎さんが考え込む。




「おそらく昼までには、斑鳩さんの翻訳作業も一段落するかと。今日の所はそれを確認して御神楽高校まで運ぼうと思うのですが・・・どうですか?」




朝食の後、斑鳩さんはまた2階に籠って翻訳作業を続行中だ。


璃子ちゃんが心配していたが、それと同時に働くママを少し誇らしげに見つめていた。




「あー、そうですね。タブレットの件もありますし、オブライエンさんにも見てもらいましょうか」




そう、書類と一緒に見つけたタブレットPCだ。


充電も完了し、さて見るかとなったのだが・・・


当然のことながらパスワードが設定されていたのだ。


しかも普通のパスワードではないらしい。


起動してすぐに、長々とメッセージが表示されたのだ。


斑鳩さんに翻訳してもらったところ、『所属部隊名と階級、認識番号を入力せよ』という文章に続いてパスコードの入力を求められた。




「入力に失敗すると、データを消去する類のプログラムもあります。ここで手を出すべきではないかと」




という神崎さんの言葉もあり、タブレットの方は駐留軍のオブライエンさんに丸投げすることにしたのだ。


下手を打って貴重なデータが消し飛びでもしたら恐ろしすぎる。




「そうと決まれば・・・特に何もすることがないな・・・」




畑仕事は先輩夫婦がやってるし、稽古は今終わった。


探索も、この時間からじゃ行けそうにない。


ううーむ・・・




「サークラー!カーム、ヒアーッ!!」




巨大ロボットでも呼び出せそうな声を上げると、遠くから答える声がした。


社屋の・・・屋上かな?


神崎さんが驚いて目を丸くしている。


かわいい。




「わふ!わんっ!」




しばらく待っていると、玄関から元気にサクラが飛び出してきた。


・・・マジに来るとは思わなかった。




「おうおう・・・お散歩行くか?」




「きゃん!ひゃおん!!」




俺を確認して飛びつくサクラに問いかけると、彼女は嬉しそうに鳴いた。


・・・うちのこ賢すぎませんかね?






サクラと近所をゆっくり散歩した。




近所のゾンビはちょいちょい成仏させたのもあって、平和なものだった。


この前の黒ゾンビ行進みたいに、遠征でもされない限りは大丈夫だろう。


・・・フラグになりそうだからこれはもう考えるのやめとこうか。




近くの林で稽古をしている後藤倫先輩も見かけた。


ゾンビがいるかもしれんのによくやるわ。


あの人、普段は何考えてるかあんまわからんけど稽古は超真面目にやるんだよなあ・・・


手ごろな木に恐ろしい勢いで両足の蹴りをぶち込んでいた。


一打ごとに、そこそこ大きな木がぐわんぐわん揺れていた。


あの木、遠からず枯れそう・・・


どっかの猿叫剣法じゃねえんだからさ・・・


っていうか足は大丈夫なのか・・・?


まあ大丈夫だろうな、先輩だし。








「お待たせしました、翻訳完了です」




散歩から帰ってしばし。


ご機嫌なサクラと遊んでいたら、若干疲れた様子の斑鳩さんが書類の束を持って現れた。




「うわあ、ありがとうございます。早いなあ」




「普段使っているPCがあれば、もう少し早かったのですが・・・内容の方はなんとか理解できると思います」




謙遜しているが、俺達からすれば神様だ。


ほんと、助けてよかったなあ。




「内容は・・・大体初めの文書と同じものでした。より細かくゾンビの体組織や能力を記録したものです」




「なるほど、新情報はありましたか?」




やはりいつの間にかいた神崎さんが質問している。


・・・マジで急に現れるよな、この人も。


後藤倫先輩といい勝負だよ、ほんとに。




「いえ・・・ざっと見た範囲では、特に」




「最初の文書が大まかなまとめだった可能性が高いですね、それは」




よかった・・・と言っていいかわからんがよかった。


一気に新情報がバンバン出てきたら流石に胸やけを起こしてしまう。




「お疲れ様です斑鳩さん、ゆっくり休んでくださいよ。今晩は俺が飯作りますから」




「・・・でしたら、お言葉に甘えますね。期待していますよ?」




斑鳩さんは悪戯っぽく微笑んだ。


まるで少女のような表情だが、その目の下には隠しきれない疲労がクマとなって浮かんでいる。


サクラを進呈するのでぐっすり寝ていてほしい。




「任しといてくださいよ」




ぐっと力こぶを見せつけて笑う。




「わた、私もお手伝いしますから!」




神崎さんが慌てて言ってきた。


・・・そんなに拙者の料理が不満でござるかぁ?




ま、とりあえず御神楽高校へ向かうとするか。


早目に重荷を手放しておきたい俺である。


斑鳩さんに改めてお礼をし、軽トラの準備に取り掛かる。


今回は俺と神崎さんでいいだろう。


先輩方には、防衛とお留守番をお願いする。


・・・サクラ、目をキラキラさせてるとこ悪いけど君もお留守番だから。






「車で走る分には平和に見えるんですけどねえ」




「そうですね、黒ゾンビの姿も見えませんし・・・」




流れていく街並みを見ながら呟く。


今日もわが愛車は快調である。


放置車両を躱しつつ、市街へ向かってひた走る。




「しかし硲谷には人がいませんな・・・みんな逃げたかそれとも・・・」




―――ゾンビになったか殺されたか。


思わず出そうになった言葉を飲み込んだが、神崎さんにもわかっているだろう。


ああ、俺は詩谷出身で助かったなあ。


なんというか、段階を踏むことができた。




対してここら辺の人は・・・


ヤクザ、襲撃者、さらには黒ゾンビ。


いきなりハードモードだ。


たまたまなのか、それとも別に原因があるのか。


どうにも好戦的な人間が多いんだよなあ、こっち。


何が原因なんだろうか。




「お、犬だ」




親子だろうか。


牧羊犬みたいな犬が、子犬と一緒に街角を歩いていた。


何故かはわからんがゾンビは人間以外を襲わない。


動物にとっては安全だよな。




「・・・かわいいですね」




「ええ、本当に」




元気なのはいい事なんだが、この騒動がもし終わったとして・・・


野生化した元ペットが問題になるだろうなあ。


ここら辺は大丈夫だが、熊や鹿がいる地域なんてもっと大変だろう。


あっちは野生だけども。




ま、そんな先のことより目先のゾンビだ。


じゃれる子犬を優しく舐める母犬を見ながら、俺はアクセルを踏み込んだ。








「で・・・どうします、アレ」




「今日はこの格好ですし、このまま進んでも問題ないかと」




問題なく御神楽高校に着いたが・・・前とは違う状況に車を停めた。




目の前の正門。


そこに黒山の人だかりが見える。




始めはゾンビかと思ったが、口々に聞き取れる言葉を叫んでいるので人間だとわかった。


エンジンを切って窓を開けると、風に乗って叫び声や怒声が聞こえてくる。




「いいから入れろ!」「まだ入れるだろ!!」「子供が中にいるのに!!なんで親は駄目なんだ!!」




「お帰り下さい!この避難所は満杯です!!」「申し訳ありませんが、お入れするわけにはまいりません!!」




避難民と門番が、正門を挟んで怒鳴り合っている。




ううむ、詩谷でも見慣れた光景だな。


どこの地域でも、避難所は満杯らしい。


心苦しいが・・・全員を助けられるわけがないし、難しい問題だ。


入れてしまえば際限がなくなるし、その結果避難民全てが餓死なんてことになったら目も当てられない。


人員も物資も有限なのだ。




「・・・よし、これでいいでしょう」




何やら背嚢をごそごそ探っていた神崎さんは、マイクと繋がった拡声器を取り出した。




「ゆっくり進んでください、轢くと後が大変ですから」




このままここで待っていても仕方がない。


俺達はここに泊まるわけでも住むわけでもないから、とっとと用件を終わらせよう。




『道を開けてください!こちらは陸上自衛隊です!』




窓から身を乗り出した神崎さんの声に、正門へ集まっていた人たちがこちらを向く。


一様に怒りの形相だが、神崎さんが拡声器の他に拳銃を握っているのを見て息を呑んだようだ。




『詩谷の神崎です!貴重な情報の提供に来ました!』




今度は正門を守っている駐留軍と自衛隊に向け、叫ぶ。


責任者から話を聞いていたのか、彼らは表情を緩めて動き出した。




『了解です!今から開門しますので、そのままでお待ちください!!』




門の中から同じような声が帰ってきたので、ブレーキをかける。


どうするのかと思っていたら、門が開き始めた。


周囲の避難民がそれを見て一斉に動こうとして・・・動きを止めた。




「下がってください!」




「下がって!」




「下ガレ!!」




警察、自衛隊、そして駐留軍。


そのそれぞれが、拳銃やライフルを構えて威嚇している。


駐留軍の人に至っては弾帯がじゃらりと下がっているでっかい機関銃を抱えている。


すげえ迫力・・・っていうかあの人、ライアンさんじゃないか。




「こ、国民に銃を向けるのか!?」




「やめて!撃たないで!!」




「なんでだよお!!理不尽だ!!!」




避難民は口々に叫んでいるが、流石に銃の迫力には敵わない。


悪態をつきながら、じりじりと下がっている。


門番さんたちは慣れているんだろう、無表情でジリジリと進んでいく。




『どうぞ!お入りください!!』




避難民が追い立てられて遠ざかったころ、拡声器から声がかかる。


避難民の恨めしい目線を感じながら、ゆっくりと入場した。


睨まれてもその、困る。






「では、行ってきますね・・・田中野さんは本当に校内に入らないんですか?」




「いやあ、面倒臭いんで・・・お気になさらず」




怪訝そうな神崎さんを見送る。


本当に面倒臭いんだもん。


この前みたいに神崎さんの甥っ子に絡まれたりするかもしれんし。


それに俺はカテゴリー上民間人だ。


入ってどんなトラブルに見舞われるかわからん。


そんな目にあうくらいなら、ここで煙草でもふかしている方が平和である。




「わかりました・・・それでは、なるべく早めに戻りますね」




「お気になさらず~」




あのアタッシュケースを持ち、神崎さんが校舎に入っていく。


さて、一服一服。






「センセイ!」




うん、さっき見かけたから認識されてると思ってたんだ・・・


交代の時間になったのか、ライアンさんがにこやかに走ってきた。


うーん、懐かれたもんである。


ちなみに前に聞いたんだが、ライアンさん俺より年下だった。


見た目がごついから驚いたわ。




「ハローライアンさん、お元気ですか」




「とてもとても元気、です!センセイもお元気そう!」




固有名詞センセイは相変わらず恥ずかしいな・・・


いや、恥ずかしいというか心苦しい。


俺はまだ先生と言われるほど修めているわけではないのだ。


師匠程・・・とまでは言わないが、せめてあと20年は鍛錬せんとな・・・




「今日はデゲーコですか!?」




・・・おいおいおい、俺は師匠じゃねえぞ。




「いえいえ、今日はちょっと・・・あー、情報、シークレット・・・インフォメーション?をデリバリーに」




「オウ!ミッショですね!!」




密書とな。


・・・合っているのか、なあ?


まあ間違ってはいないが。




「まあ、そんなわけです・・・煙草どうですか?」




「イタダキマス!センセイ!!」




だからそれやめてくんないかなあ・・・




「あ、田中野さんじゃないですか」




森山さんもやって来た。


顔見知りが増えたので待つ時間も苦じゃなくなってきたな。


いやまあ、普通に1人でもいいけど。




「や、どうも森山さん・・・煙草いります?」




「うわあ、ありがとうございます!・・・マンドレイク喫ってる人初めて見ましたよ」




そんなわけで、男3人で一服することにした。


ついでに情報交換もしておこうかな。


収納スペースから缶コーヒーを取り出し、振舞う。


なんとなく乾杯して、それぞれ煙草に火を点けた。




「ええ!?あの黒いの、正面から殴って倒したんですか!?」




「え?ええまあ、銃の方が大変じゃないですか?とりあえず頭か首をへし折れば普通に死にますし・・・」




「いやいやいや、普通無理ですって・・・僕も死体で試しましたけど、まるでトラックのタイヤ殴ってるようなもんでしょ!?」




「やはりセンセイはスゴイ!amazing!!」




・・・そうかなあ?


銃で急所を狙うより手っ取り早くていいと思うんだけどなあ・・・


なんかどんどん化け物扱いされていくぞ、俺。


ガチの化け物連中を知っている身としてはなあ、俺程度ではとてもとても・・・




「軽トラに、刀・・・あの人だ!」




そんな風に話していると、遠くから声が聞こえた。


俺のことかな?




校舎の入り口に目を向けてみると、そこに1人の女生徒がいた。




髪はまるで男の子のように短くカットされている。


女子高生にしてはかなりの長身に、肌が健康的に黒く焼けている。


あの顔・・・どっかで・・・




記憶を探っていると、その子は意を決したように俺の方へ歩いてくる。




「あ、あのっ!」




・・・あ、思い出した。


この子は・・・




「ボク、あきら・・・高山あきらって言いますっ!!」




俺の拳銃の持ち主。


高山巡査長の忘れ形見。


遺書と一緒に大事にしまわれていた写真のように、元気そうな彼女がそこにいた。




うあー・・・出会っちゃったかあ・・・




俺は、短くなった煙草を携帯灰皿に押し付けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る