第33話 大ピンチのこと 後編

大ピンチのこと 後編








『銃で撃たれるとなあ・・・痛いと言うより熱い』




いつだったか師匠がそんなこと言ってたっけか・・・


っていうかああ言うってことは撃たれたことあるんだよな、師匠。


あの時は俺には一生縁のない話だと思ったが・・・まさかまさかである。


確かに熱かったなあ、痛くもあったけど。


猟銃で撃たれた時はただ痛いだけだったけども。




そう、俺はもう気絶から復帰している。


気付けば、壁に寄りかかるような姿勢で眠っていた。


治療のためだろうか。




ちらりと肩を見れば、綺麗に包帯で固定されている。


心臓の鼓動に合わせ、ちょいと無視できない痛みを感じるが。


・・・加えて、ひきつれに似た痛みもある。


焼いて止血・・・してくれたんだなあ、神崎さん。


しんどかったろうに、俺ができたらよかったのになあ。


また気絶しちゃったからなあ。


気絶癖がついたらどうしよう。




しかしまあ、ああもバンバン撃たれたのに致命傷がなくてよかった。


いや、この傷だって化膿したらやばいんだが。


まあね、即死以外はかすり傷でござるよ。




で、当の神崎さんなんだが・・・






「んぅ・・・」






俺に寄りかかって就寝中である。


口元にはさっきの俺由来の血液が付いたまま。


俺の処置に使ったのであろうライターを握りしめて、すやすや夢の中だ。




・・・さて。


どうしたもんか、この状況。


正直お疲れであろうことは容易に想像できるので、できればこのまま寝かせてあげたい。


美人が俺の至近距離で眠っているという、俺の精神に大ダメージを与える状況ではあるが甘んじて受け入れてやりたい。




だが、そういうわけにもいかん。




先程俺たちに向けてバズーカ的なものを2発もブッパしてくれやがった謎の集団。


あいつらが何をしてくるか皆目見当がつかないのである。


バズーカ・・・って正式名称だったっけか?


それ以外にも、俺を撃ったライフルもあるだろう。


遠距離攻撃の手段を持った謎の武装集団が、200メートルも離れていない所にいるのだ。


どうしたものかな。




ここが何階建てのビルかわからないが、最上階ではある。


外の階段は、あいつらの攻撃によって破壊されていることだろう。


よしんばまだ階段が残っていても、向こうから丸見えの状態で無事に下まで到達できるとは考えにくい。


俺がこの程度の怪我ですんだのは、ただ単に運がよかったからだ。


幸運が2度も続くとは考えにくい。




となると・・・だ。


脱出するには、このビルの中を下って行くしかないってことだ。


どれくらいゾンビがいるかもわからない、薄暗いこのビルをだ。


ヘルメットは銃弾によって破損しているが、ライトは無事だから最低限の明かりはある。


不安だが、現状これしか手はないな・・・




「ん・・・ぅ」




やっべ、神崎さんが起きそう!


以前は俺が近付いただけで起きたから、今は相当疲れているんだろう。


どちらにせよ、この状況はまずい。


・・・とりあえず寝たふりだな!


咄嗟に目を閉じる。




「ぁ・・・私、どうし、て・・・」




寝ぼけ声を出した神崎さんが、きょろきょろしているのが感覚でわかる。


しばらくぼうっとしていただ、自分がどんな状況か気付いたようだ。




「~~~~っ!?」




凄い速さで俺から飛びのいた神崎さんは、声にならない悲鳴を上げた。


そんな嫌がらんでも・・・まあしょうがないけどさ。


よし、俺も『起きる』か。




「んん・・・んあ、神崎さん」




今まさに起きましたよ?的な雰囲気を醸し出しつつ、ゆっくりと目を開ける。


アカデミー賞ももらえそうな俺の演技・・・どう出る!?




「た、田中野さん!・・・よかったぁ・・・」




神崎さんは目を潤ませて俺を見つめている。


・・・演技、ヨシ!




俺は一抹の心苦しさを覚えながら、神崎さんに笑いかけた。






「どうですか、具合は?」




「神崎さんのお陰で大丈夫ですよ」




しばし目を潤ませた後、神崎さんは通常モードに戻った。


その途端、急いで顔を拭いていたが。


そらねえ、血塗れだったしなあ。


そんなこんなで平静を取り戻した神崎さんは、俺に具合を聞いてきている。




「足は問題ありません、頭も首もまあ痛いですけどなんとか・・・でも問題が・・・」




「・・・鎖骨の傷、ですね」




「ええ、しばらくは左手を封印しなきゃですな」




正直ぶっちぎりの重症である。


この部分はすべての腕の動きに連動する。


鞘引きにも、鯉口を切るにも。


それに、両手で刀を構えることも現状難しい。


いくら神崎さんが出血を止めてくれたといっても、無理に動けばすぐに傷は開くだろう。




「田中野さん、世界がこうなっているので輸血もできません。失血は死につながります」




「ああ、そうかあ・・・そうでしたね」




なまじ不自由なくのほほんと生きてきたから、そんなことも忘れていた。




「緊急用の人から人への輸血道具も、今手元にはありません」




「おお、やっぱあるんですね」




「秋月まで戻ればあります・・・田中野さん、血液型は?」




「Aですね」




「よかった・・・!私もAですので、緊急時はお互いに利用できますね」




何故か嬉しそうな神崎さんである。




「それで・・・不安な点は多いですが、それでも今我々がすべきことは・・・」




「一刻も早く、こっからトンズラすることでしょうね」




「はい。今回攻撃してきた集団がどう出るかわかりません・・・とにかく一旦引くべきかと」




どうやら神崎さんも同じ考えのようだ。


俺だってこんな怪我抱えたまま探索なんて御免である。


俺は〇タローンでも〇ュワちゃんでもないからな。


とっとと逃げよう。




・・・が、腹が減っては戦はできぬ。


この先何があるかわからんので、今のうちに食っておくことにしよう。




神崎さんの背嚢に入れていたエナジーバーとコーヒーで、簡単な食事をとる。


正直さほど意味はないと思うが、『鉄分入り』と表示されているものを選んだ。


ちょっとでも血を作っておかないとな。


初期治療のお陰で出血量はそれほどでもないが、今もじくじくと出ていることだろうし。


・・・それに現状はあくまで応急措置である。


マジで何が起こるかわからんからな。




もっと怪我をして動けなくなることも考えられる。


その場合は、神崎さんだけでもなんとかして・・・




「駄目ですよ、田中野さん。それは、駄目です」




鋭い目で言われてしまった。


・・・つくづく表情に出るのな、俺って。




「駄目ですか」




「・・・私が同じことを考えたら、田中野さんはどうしますか?」




「そりゃあ、抱っこでもおんぶでもして連れて帰りますけど」




「そ、そうでしょう?だから駄目です!」




抱っことおんぶ、どっちがセクハラにならないのかな・・・?


しかしまあ、そう言われては何も言えないなあ。


信頼してないってことじゃないんだけどなあ・・・




「・・・言い方を変えましょうか。田中野さんが死んだら、私も死にます」




とんでもない発言をされた。




「だから、2人で生き残らないと駄目なんです」




「・・・1本、取られましたね」




「ふふ、これで私の1本勝ちです」




畜生め。


そう言われちゃあ、敵わないな。


頑張るとしようか。


神崎さんに死なれたら寝覚めが・・・いや、その時には俺も死んでるのか。


ううむ、閻魔大王の前で切腹する羽目になるかもしれん。


それに、神崎さんに何かあったら花田さんに合わせる顔もないし。




「じゃあ、とりあえずここから生きて帰りましょうか」




「はい!」




そういうことに、なった。






食後の休憩も終え、いよいよ出発することになった。


部屋の中で立ち上がって全身の状態を確認する。




両足・・・破片が突き刺さった方が痛いがさほど問題なし。


走ったり飛んだりしても、多少は大丈夫だろう。




頭・・・大事な大事な髪の毛が吹き飛んだが、頭蓋骨まで傷は及んでいない。


派手に出血したが、傷自体は問題ない。


・・・大事な髪が吹き飛んだけど。


その上治療のために大分切られたけど。




首・・・動かすと痛いが、ここも大事な血管は傷ついていない。




鎖骨の上・・・これが一番の問題だ。


動かすと痛い。


押すと痛い。


何をしていてもべらぼうに痛い。


しかも傷が開いたら大出血だ。


ある程度治るまで、両腕で刀を振ることはできそうにない。


正直三角巾とかで固定したいくらいだ。


無事に帰れたらそうしてみよう。




とまあ、これが現状の俺のボディである。


我ながらガッタガタだなあ。


防弾チョッキ付けてても貫通するとは予想外だった。


走ったりするのは大丈夫そうだが・・・戦闘となると厳しい。


ノーマルゾンビなら脇差や片手持ちの兜割でなんとかなりそうだが、もしも黒ゾンビが出たら・・・


傷が開く覚悟で左手を使うしかないのかもしれんな。


ただ、生きて帰るためには必要なことだ。






左手が使い物にならんので、兜割を右腰に差す。


脇差は逆手で抜きやすいように腰の後ろに。


手裏剣の類は、全て右手が届く範囲内に収めた。




ただ、現状近接戦闘は難しいので拳銃を用意する。


・・・持ってきてよかった。


装弾程度なら左手は使えるが、両手で構えることができないので片手撃ちになる。


・・・ただでさえ低い命中精度がさらに低くなるな。




「こっちは準備できましたよ、神崎さんの方はうおお!?」




「・・・?なんですか?」




最終確認をして振り向くと、そこには完全武装の神崎さんがいた。




恰好こそいつものラフな姿だが、細部が違う。


上半身のベストや下半身のズボンのポケットには、所狭しとマガジンが挿入されている。


腰のベルトにはアタッチメントが取り付けられており、手りゅう弾がずらりと装填されている。


太腿にマウントされたホルスターには、例のベトナム帰還兵モデルの大型ナイフ。


ライフルは、銃床を伸ばした状態で背中に回されており、いつもの拳銃にはサイレンサー。


まさに戦場に挑む戦士の様相であった。




「デエエエエエン!」




「な、なんですかっ!?」




思わず第三次大戦を引き起こしそうなムキムキマッチョマンを思い出してしまった。




「と、とにかく・・・行きましょうか」




気合の入った神崎さんを伴って部屋を出ようとすると。




「駄目です、田中野さんは私の後ろです!いいですね?」




「アッハイ」




ものすごい至近距離から噛んで含めるように言われてしまった。




「田中野さんは、私を守ってくれました・・・!」




じゃき、と拳銃のスライドを引く神崎さん。




「今度は、私にあなたを・・・守らせてください」




「・・・はい、よろしくお願いします」




か、かっこええ・・・


曇りのない瞳に、決意を滲ませる神崎さん。


それはまるで、戦乙女のようだった。


・・・大分装備が近代的だけども。




俺はその姿を見ながら、『ああ、これじゃあ高校にファンクラブができるのも無理はないな・・・』なんて思ってしまったのだった。




「何かひどく失礼なことを考えていませんかっ!?」




「ナンノコトヤラ、ソレデハイキマショウカ」




「田中野さん、私の顔を見てください、田中野さん?」




「ワガナハ田中野・一朗太・ナイトハルト、イクゾー!!(デッデデデデデ!カーン!!」




「急にいい声を出さないでください!・・・ああもう!」




なんとか誤魔化せたな・・・誤魔化せたか???


まあいい、おふざけは終わりだ。


これからビル内を一気に降りなければいけないんだから。


気を引き締めていこう。






プシュン、と間の抜けるような音。


それと同時に、前方のゾンビが頭を撃ち抜かれて倒れる。




「新手です、撃ちます」




プシュシュ、と連射。


廊下に面したドアの影から顔を出した2体のゾンビが、同じように成仏した。




「・・・残敵なし、です」




静寂が戻る空間で、しばし目を閉じて周囲の気配を探る。


・・・後藤倫先輩のようにはいかないが、これくらいの範囲ならわかる。




「気配もありません、OKです」




「了解、進みます」




一切の足音を立てず、神崎さんが先に立って歩き出す。


俺もそれに続き、なるべく音を出さないように歩く。




壁には、『13F』の表示。


縁起が悪い階層である。


あ、俺ブッディズムだった。


じゃあ関係ないな。




これで廊下のゾンビはいなくなった。


俺達は、速やかに階段へ向けて移動する。




「あの、神崎さん、あいつらが撃ってきたのってバズーカってやつですか?」




周囲に気配が無いので質問してみる。




「いえ、あれは・・・対戦車擲弾発射機だと思います。映画などでゲリラがよく使うものです」




「ああ、発展途上国で大活躍のアレですか・・・じゃああいつらは軍隊ですか?」




よく映画で見るアレだな。


筒状の発射装置に、しゅっとしたラグビーボールみたいな弾頭を入れて使うやつ。




「いえ、我々も駐留軍もアレは装備していません。いかんせん命中精度が悪いので・・・その分価格は安いですが」




「っていうことは・・・」




「恐らくこの街にいる暴力団でしょう」




「あー・・・」




以前ころころしたヤクザ共かあ・・・


確かに末端の三下まで密造拳銃が行き渡ってるくらいだから、銃器は豊富にありそう。


しかしヤクザかあ・・・




「おおかた無線を傍受して、神崎さんを目当てにしたとかそういう所かな・・・」




「わ、私をですか?」




「神崎さんの声、綺麗ですもん。あいつら女には目がなさそうだし」




下半身直結型短絡思考にありがちなことだ。


なるほどね、階段を破壊したのも神崎さんを殺さないため。


俺はどうでもいいから撃たれた・・・と。


はあ、単純な脳味噌だなあ。


少し羨ましいよ、生き方がシンプルで。




「き、綺麗、わたしが・・・」




神崎さんが何かを呟いているが、恐らく嫌悪感だろう。


自分がまるでモノのように狙われるなんて、そりゃあ嫌に違いない。


女性は大変であるなあ。




「となると、絶対待ち伏せしてるな・・・気を引き締めていきま・・・神崎さん?神崎さーん?」




「は!はひ!皆殺しにしましょう!!」




おお、気合十分だな。


俺は神崎さんに殺されないように紳士でいよう、そうしよう。




やけに気合の入った神崎さんに先導され、階段へと足を踏み入れた。






「ようやく半分ですね」




『5F』という表示を見ながら呟く。


目の前には例によって処理されたゾンビ。


拳銃の残弾が気になって神崎さんに聞いたが、「そうですね、気を付けましょう。あと120発しかありませんし」と言われた。


・・・通りで背嚢がパンパンなわけですわ。


ライフルの方は1発も撃っていないし、こりゃマジでワンマンアーミーだわ。




それにしても、ゾンビが意外に少ないな。


俺達が静かに動いているのもそうだけど・・・たぶん大多数は部屋に閉じこもってるんだろう。


僥倖であった。




「ええ、油断しないようにゆっくりと移動しまs」




そこまで神崎さんが話した時に。


階下から銃声が響き渡った。




俺達は一瞬で口をつぐみ、耳を澄ませる。




「~~~!!」「~~~~~!!!」




階段を通じて、わめき声が聞こえる。


さっきの奴らだろうか。




「(私たちは今まで音を立てていません、気付かれていないはずなのでここらで待機して一網打尽にしましょう)」




「(アイコピー!)」




「(・・・随分珍しい了承ですね)」




「(好きなアニメでよく言うんですよ、今度見ましょうか)」




「(是非)」




そんなことを言いながら、俺達は一旦階段から5階へと進む。




廊下を確認したところ、ゾンビの気配はなかったの。


階段の踊り場がよく見える場所に、2人して身を潜めた。


あいつらの目的は十中八九俺達だ。


こうして待っていれば登ってくるだろう。


さっき神崎さんが言ったように、音を立てていないので最上階に潜んでいると思われているのかもしれない。




ライトを消すと、周囲が暗闇に包まれる。


俺と、神崎さんの微かな息遣い以外は全くの無音である。


〇ウシカ思い出すなあ・・・






「なあなあ!見たかよさっきのゾンビ!あったまバーンって!!」




「お前ばっか撃ってんなよなぁ、俺にも撃たせろや!!」




「2人ともうるせえぞ!次は俺に殴らせろや!!」




何度かの銃声の後。


階段を上る音と、馬鹿みたいな喋り声が聞こえてくる。


馬鹿みたいじゃないな、馬鹿だ。




「アアアアアアア!!」「ひゃっは、来た来たオルァ!!」




「ホームラン~!!」「ヒャハハハッハ!!!」




賑やかすぎる。


祭りか何かと勘違いしてるんじゃないか。


これがパリピってやつか。




音を出してやってくるゾンビを処理している。


頭の方はアレだが、戦闘能力は地味に高そうだ。


武闘派ってやつかあ。


まあ、馬鹿でもゾンビには勝てるかもしれないが・・・




「しっかし音がしねえなあ、死んでんじゃねえ?」




「野郎の方は何発か当てたってサイジョウさんが言ってたけど、女の方は無傷だろ?」




「上で震えてるんじゃねえの?俺たちがあっためてやんなきゃな~!!!」




・・・頭が痛い。


もうやだ、聞いてるだけで脳にダメージが来る。


前方にいる神崎さんからも、なんか呆れているオーラが伝わってくる。




声から察するに3人。


気になるのは『サイジョウ』とやらだ。


どうやら3人とは一緒にいないらしい。




「(1人は生かしておきますか)」




「(・・・はい)」




すっげえ嫌そう。


俺だって嫌だよ。


しかし情報は取っとかないと。




声が段々近付いてくる。


盛大に音を立てているので丸わかりだ。


この危機感のなさで今までよく生きてこれたな、こいつら。


まあいい、それも今日で終わりだ。




神崎さんが膝立ちになり、拳銃を構える。




「どんな娘かな~俺巨乳がいいなあ~!」




「声は可愛かったからなぁ、袋でも被せりゃ不細工でもいけっるぎゅ!?」




「俺はケツがでk!?」




2連射。


それによって頭を撃ち抜かれた2人が、永遠に動かなくなる。




「・・・はえ?なに?なに?」




神崎さんがそのまま前に跳ぶ。


階段の手すりを足掛かりに、空中へ。


背嚢とライフル抱えて、とんでもない身体能力だな。




「ぎゃ!?あが!?」




恐らく空中で2連射し、男の体に着地したのだろう。


鈍い音がした。




俺も立ち上がって近付く。


走りたいけど走ると怒られるし・・・




4階から5階への階段の踊り場で、3人の男が倒れている。


恐ろしいことに2人は目を正確に撃ち抜かれている。


相変わらずの射撃技術だ。




残る1人は肩と足を撃ち抜かれ、神崎さんに抑え込まれている。


大声を出されないようにか、その口には拳銃が突っ込まれている。




「んん!んんんんんん~!?」




「うるさい、殺すぞ」




「~~~~!?」




「黙れ」




拳銃を持っていない左手で、男の肩に開いた銃創をぶん殴る神崎さん。


飛び出るんじゃないかってくらい目を見開いた男が、悲鳴を押し殺す。




怖え。


神崎さん超怖え。


だいぶ怒ってるみたいだ。




「死にたくなければ質問に答えろ、そうすれば考えてやる」




「~~~っ、んんう」




見開いた目から涙をこぼしつつ、男は頷いた。




「今から拳銃を引き抜く。聞かれたこと以外喋るな・・・いいな」




男の顔を覗き込み、神崎さんがゆっくりと拳銃を引き抜いた。




「た、たすけえっ!?!?!?」




「聞かれたこと、以外、喋るなと、言った」




命乞いしかけた男の額をノーモーションで殴りつけ、全く感情の籠っていない声で告げる神崎さん。


男はまるで石像のように動きを止めた。




「・・・さあ、話してもらいましょうか」




そして神崎さんの尋問が始まった。

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