第98話 小さな弟子のこと

小さな弟子のこと








「ふぁ・・・ふぁむ」




充実した眠りから目が覚める。


・・・現在の時刻は午前6時。


おおう、早起き。


いつもはアラームで7時半に起きてるんだがなあ。




寝具を変えると眠りも変わるってマジなんだな。


布団も枕も気持ちいいのなんのって。




「きゅん!」




おや、サクラもお目覚めだ。


頭を撫でてやると、もそもそ移動して俺の顔をベロベロ舐めてくる。


やめなさい起きたばっかりだから・・・




ふむ、2度寝の必要もないほどさわやかな目覚めだ。


何をしようか。


朝飯にはまだ早い。




1階には山中姉弟が寝ているから起こすとよくないな。


疲れてるだろうし。


よし、ここは一つ朝稽古といくかな。




着替えてサクラと一緒に庭に出る。


庭のあちこちを嗅ぎまわるサクラを見つつ、まずは準備体操だ。




十分に体をほぐし、ベルトに大刀を差す。




庭に正座し、目を閉じる。


サクラは本当に賢いので、俺が稽古していると絶対に間合いに入ってこない。


刀や木刀が危険だって、本能でわかってるのかもしれんな。




息を吐きながら左手で鯉口を切り、膝立ちの姿勢に移行しつつゆっくりと刀を抜いていく。


完全に立ち上がると同時に鞘から刀身は抜け、そのまま横一文字に朝の空気を切り裂く。


ぴう、という音は正確な太刀筋で抜刀できた証拠だ。


そのまま振り上げ、一歩足を踏み出しながら斬り下げる。


しばしの残心の後、血振りの動作をしつつ納刀。


ゆるりと柄頭を押さえて完全に鞘に納める。




これは技と言えば技なんだが、どちらかと言うと精神統一の儀式めいた側面が濃い。


どこの流派も初発刀(居合の一つ目の技)はこんな感じだしな。


これが終われば好きな技を練習していく。




俺の流派・・・南雲流にある技はトリッキーなものが多いが、ぶっちゃけ実戦ではけっこう役に立ってる。


少し剣術や剣道を齧った相手なら、型から外れまくってる分面白いようにハマってくれるしな。


なんたって知名度は零に等しいもん、南雲流。


神崎さんとかには知名度高いけどさ・・・




さてと、今日は何から試そうかな。


流石に飛燕は試せないけど・・・あれ剣鉈以外で使う気ないし。


傷とかついたら困るしな、おっちゃんの脇差。


あれを脇差で使う時は、本当に自分より格上が出てきた場合の最後の手段だ。




立った状態で目を半眼に開き、鯉口を切る。


左腰を引きながら抜刀しつつ、その勢いで右斜め前を斬る。


すぐさま翻ってしゃがみ込みながら背後を斬りつつ、その状態で右方向に横薙ぎ。


手の内で刃の向きを上下入れ替え、逆手の状態で左わきを通しながら斜め上の背後へ突く。


・・・よし、滑らかにできたな。


これは囲まれた状態で、1人目の鎖骨周辺を斬り、背後の敵の膝を斬り、そのまま横の敵の脛を斬り、背後の敵の下腹部を突き刺す動きだ。


さすがわが流派、下半身を攻めるいやらしい攻撃である。






その後も反復練習を繰り返して汗をかいた。


真剣の練習はだいたい終わったので、次は木刀に移ろうとしていると。




「かっけえ~!」




ベランダから声がする。




「お、新じゃないか。おはよう・・・早いなあ」




「おはようおじさん!そっち行ってもいい?」




「ああ、かまわんぞ。朝露で足を滑らすなよ」




ベランダから下りてきた新は、寄ってきたサクラを撫でつつこちらへ歩いてくる。




「びゅんびゅん音がするからなんだろうって思ってさ・・・すごいね、おじさん!僕、こんなに近くで刀を見たの初めてだ!」




そりゃまあ、大体の人間はそうだろうさ。


しかし聞こえていたのか。


そんなにデカい音を出したつもりはないんだがな。




「練習してるんだよね?・・・僕も見てていい?」




「別にいいけど・・・ちょっと待ってろ」




庭にある農機具庫へ行く。


たしかここに・・・あったあった。


小学校の時に使ってた木刀が。


我ながら物持ちのいい事であるなあ。




持ち帰り、新に渡す。




「一緒にやらないか?強くなりたいんだろう?」




「ええ?いいの!?」




「横でただ見られてるよりずっとな」




だが、まずは準備体操からだ。


子供は体が柔らかいとは言っても限度があるしな。




よし、準備運動終わりっと。


・・・しかし、どう教えたもんかな。


師匠みたいに・・・は絶対だめだ。


俺みたいな未熟者がやったら新は絶対死ぬ。


あの悪魔のような微妙な加減ができる師匠以外はやったらダメだ。


・・・師匠、あの爺めが。




というわけで、基本中の基本である素振りから教えることにする。




「ただブンブン振るんじゃだめだ。体の動きを意識しながら、1回々々をしっかりと振る、いいな?」




「うん!」




「振り上げながら右足を出して・・・振り下ろす時に右足を引く。こうして・・・こう!!」




ぶぉん!と朝の空気を切り裂く木刀。


わぁ、と目を輝かせる新。




「振り下ろす時は胸の筋肉を意識しつつ両手をキュっと握って、ここでぴたりと止める。適当にやるんじゃないぞ、楽して1000回振るよりしっかり100回振る方が身につく」




「うん!」




「よーし、ゆっくりでいいからとりあえず50回やってみな・・・はじめ!」




えい!えい!と声を出しながら、新は真面目に素振りを続けている。


声でゾンビが寄って来ても庭の中だから安心だ。


それ以前にここら辺ゾンビいないけども。




「・・・えいっ!」




「よし、50回。いいぞ、素振りはやればやるほど必要な筋肉がついて上手くなるからな、しんどくなかったらできるだけ毎日やるんだぞ」




「うん!」




全部師匠と剣道部の顧問の受け売りだけどな。


実際俺もそうなったし。




しかしいい根性だ。


文句も言わずに、しっかり言われたことを守っている。


振りもたどたどしいところはあるが、初めてにしては上出来だ。




「よしよし、いい返事だ。なあ新、お前姉ちゃんのために強くなりたいんだよな?」




「うん!強い男になって姉ちゃんを守るんだ!」




良い答えだ。


・・・俺がこれからも定期的な稽古を付けてやれるかはわからん。


素振りは確かに強くなる手段だが、それだけでは時間がかかりすぎる。


普通なら部活なり道場なりで教えてもらえばいいんだが、この状況ではどちらも無理だろう。


平和になるまで何事も無ければいいが、もしもってこともある。




・・・ひとつ、簡単な技を教えておくか。


釘を刺した上で。




「強い男か・・・なら、俺と・・・男と男の約束、できるか?」




じっと視線を合わせる。




「・・・う、うん」




俺の雰囲気が変わったのが分かったのだろう、若干緊張しながら新が頷いた。




「これから、お前に技を教えてもいい」




「・・・いいの?」




「だが、これは危険な技だ。子供用の木刀でも上手く当てれば大人が死ぬこともある」




「・・・うん」




「だからこの技は、命が危険なときだけに使え。お前や、大切な人が本当に危険な時にしか使っちゃダメだ」




じっと目を見る。




「ただの子供同士の喧嘩なんかで使ったら・・・俺がお前をぶち殺す、いいな?」




「・・・」




「どうだ?」




「・・・わかった、教えて、ください!」




俺を見返す視線は、強く綺麗なものだった。


・・・よし。


これならいいだろう。




「それなら、いい・・・しっかり見とけよ」




新から離れ、庭の中央に立つ。






だらりと右手で木刀を持ち、息を吸う。




「構えは正眼・・・まずはこう構える」




正眼に構え、前に出る。




「このまま振り上げる・・・ここまでは素振りと同じだ」




ゆっくりと振り上げる。




「この時、敵は素振りみたいな振り下ろしが来ると思ってる・・・そのまま振り下ろせば、防御されちまう」




「そこで、振り下ろしに入る瞬間に・・・こうする!」




振り上げた剣の峰を右肩に乗せ、体をねじりながら体全体の力を使って袈裟斬りに切り替える。


びゅおう、と庭に音が響く。






南雲流、『空転』


斬撃の直前に太刀筋を変える技だ。


本来はすべての構えから派生するものだが、今回はこれだけでいいだろう。


下段からの派生なんか、体が出来上がってないと筋を痛めるし。






「この時、狙うのは相手のここ・・・首筋、鎖骨、もしくは耳だ。俺くらいの力があればどこに当てても殺せるが、これは子供の力でも脅威になる」




「重要なのは振り上げまではゆっくり、切り替えるときは素早く動くこと。そして、振り切るときは腕だけじゃなく体ごと力を乗せることだ」




ぽかんとこちらを見ている新に近付く。




「いいか、これは剣道の技じゃない、剣術の技だ。人が人を殺すために、嫌になるほどの年月をかけて編み出した技だ」




新の肩に手を置く。




「軽々しく使うもんじゃない・・・わかったな?」




新の喉が動いて、唾を飲み込む音がした。




「・・・わかったよ、約束・・・守る!」




・・・いい目だ。


これなら大丈夫だろう。




「よし。あと、この技の練習は周りに誰もいないところでやれ」




初見殺しが初見じゃなくなるからな。






「さーてと、じゃあ今度は普通に使える技を教えてやろう。まず、俺が構えるから好きに打ってこい」




明るい声を出して木刀を構える。


今度は効果的な打撃場所だ。


技と呼べるもんじゃないが、我が南雲流は打つ場所まで性格が悪いからな。




「い、いいの?」




「遠慮すんな、これでもお前の人生2回分は木刀振ってるんだぞ」




「うん!・・・えーい!」




かこんとはじく。


胴体狙いか。




「やあっ!」




お次もそうだ。




「ええい!」




次もだな。




「よーしストップ・・・今のはダメダメだ、簡単に防がれる。絶対に当てないから、まっすぐ立って動くなよ」




「うん!」




直立不動になる新。




「相手の嫌がる場所を打つんだ。まずは手の先、次は太腿、それから・・・」




ゆっくりと寸止めしながら解説する。


手足の末端、太腿、脛、肘、内股。


子供の力でも十分威力が出せる場所ばかりだ。


・・・こうしてみると、やっぱ性格悪いわうちの流派。




「よーし、じゃあ今教えた場所をどれでも好きなだけ打ち込んで来い!新は子供だから下半身を狙う方が効果的だぞ」




「うん!えーい!!」








いかん、朝から熱が入りすぎてしまった。


汗だくだ。


新も頑張りすぎてバテ気味になっとるな。




「きゅ~ん!きゅ~ん!」




しかもずっと構ってもらえなくてサクラがすねた!


こっちの方が大変だ!!




「ごめんよ~ごめんよ~」




「わふ!わぉん!」




誠心誠意撫でまわしてブラッシングをしたところ、だいたい5分くらいで機嫌は直った。


・・・ちょろかわいい!!!!






沸かしたぬるま湯を付けたタオルで汗を拭き、デオドラントスプレーを吹いておく。


今日は友愛に行くからな、こういう所はちゃんとしておかないと。




さて、朝飯だ。




本日のメニューはアルファ米と即席みそ汁、それに自衛隊の肉の缶詰だ!


絶望的に野菜が足りないので、100%無添加トマトジュースを飲むことにする。




「すみません、ずっと寝てしまって・・・」




さっき起きてからずっと申し訳なさそうな志保ちゃんである。




「気にしない気にしない。疲れてたんだからな」




「おじさん、この缶詰おいしい!はじめて食べた!!」




「おう、自衛隊に感謝すんだぞー。コメのおかわりはいっぱいあるからしっかり食えよ、志保ちゃんもな」




「うん!」




「は・・・はい!」




うんうん、子供はよく食うのが一番。




「わぅふ・・・はふん」




お前もな、サクラ。






食後の休憩を終え、友愛に行くことにする。


今回は俺を入れて3人なので、親父の普通車を使う。


車いすも運ばないといけないしな。




助手席に新、後部座席に志保ちゃんを乗せる。


新は大事そうに木刀を抱えている。


俺が持ってても何の役にも立たんので、進呈することにした。


安物だが、そこまで大事にされると木刀も喜ぶだろうな。








安全運転で無事友愛に到着した。


ゾンビに対しては道さえしっかりしてりゃ全く問題にならん。


晴れの日だと、追いかけてくる距離もせいぜい50メートルくらいだしな。


これが雨になると何故か延々付いてくるので地味に恐ろしいが。




「おはようございます田中野さん、サクラちゃ~ん!・・・あれ?親戚のお子さんですか?」




サクラの時だけ顔がキモくなるな、森山くん。


神崎さん相手は別ベクトルでキモいけども。




「ああ、捜索依頼にあった子たちだよ。昨日発見して保護したんだ」




「おお!よかったねえ君たち、もう安心だからねえ!」




こういう時は警察官してるんだよなあ。


これでもう少し腕っぷしがあれば本当に頼れるんだが・・・




駐車場に車を停めると、ちょうど玄関から神崎さんが出てきた。


降りて挨拶する。




「神崎さん、おはようございます」




「おはようございます、田中野さん・・・今日は違う車ですね?」




「ええ、捜索者を連れてきました」




まず新が降り、神崎さんを見て固くなる。


かっこいい美人の自衛官だもんな、そりゃビックリするわな。




「お・・・おはよう、ございます!」




「おはよう、よく来たわね」




にこりと笑いかける神崎さんに、顔を赤らめる新。


うん、男の子だなあ。




「大丈夫?志保ちゃん、立てる?・・・新ー、車いす出してくれ」




「うん!」




後部座席はシートが柔らかいので、深く座りすぎて義足が持ち上がりにくいらしい。


ふむ、無理に立とうとしてどっか痛めたら大変だ。


せっかく叔母さんと再会するのにな。




「よし、じゃあ俺に掴まって・・・」




「は、はいぃ・・・」




志保ちゃんが俺の肩に手を回し、掴まってくる。


そのままゆっくりと立ち上がり、車の外へ。




「よし、どうする?車いすに乗るか?」




「あっ、だっ、大丈夫です、歩けます・・・」




背中に手を回して立たせ、振り向くとすっごい至近距離に真顔の神崎さんがいた。


なんか目がコワイ!




「うわぁ!?」




体ぶつけるところだった!




「彼女は・・・義足ですか、私が手を貸します。女同士のほうがいいでしょう」




言うなり、神崎さんはすっと志保ちゃんに肩を貸す。




「あ、すいません」




「いいのよ、気にしないで」




はえー・・・さすが神崎さん、行動が早い。


できる女は違うなあ。


申し訳ないがお任せしよう。




例によって寄ってきた森山くんにサクラを預け、荷物を載せた車いすを押して校内へ向かう。


職員室に行って宮田さんに伝えないとな。






「よく来たね、2人とも。ここは安全だから、なにも心配しなくていいよ」




職員室にいた宮田さんは、姉弟をにこやかに出迎えた。


そのデカさに最初ビビっていた新も、宮田さんの優しそうな声に緊張を解いたようだ。


うん、初見だとびっくりするよなあ。




「山中志保です、よろしくお願いします」




「山中新です!お世話になります!」




「うんうん、いいお返事だね。すぐに叔母さんを呼ぶから、ここで待っていなさい」




そう言うと、宮田さんは近くの警官に何事か指示した。




「おじさん、あの人大きいねえ」




「デカくて強くて優しい・・・新よ、あの人がかっこいい男の理想の姿だ。いやむしろ最終形態と言っていい」




「へえぇ・・・僕、頑張るよ!」




「おう、目指せ身長2メーター、だな」




頑張って強い男になるんだぞ。






それからしばらくすると、廊下をバタバタと走る音が響く。




「新ぁ!志保ぉ!」




勢いよくドアが開いて、眼鏡をかけた女性が飛び込んできた。


あ、なんか見たことあるぞこの人。


えーと・・・あ!美玖ちゃんたちに絵本の読み聞かせをしてくれてた中の1人だ!


たしか小学校の先生とか言ってたような・・・この人が叔母さんだったのか。




「朋子ねえちゃん!」「朋子ねえさん!!」




真っ直ぐ走ってきた朋子さんは、2人をきつく抱きしめた。




「よ、よかったあ・・・!2人ともぉ・・・無事でよかったああぁ・・・・」




ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、朋子さんは2人の頭を抱え込む。


志保ちゃんも新も、緊張の糸が切れたのだろう。


初めに新が、しばらくしてから志保ちゃんが泣きだした。


美しい光景だ・・・






「今回もお手柄ですね、田中野さ・・・あの、タオルいりますか?」




「大丈夫です宮田巡査部長、田中野さん、これをお使いください・・・さあ」




「あ・・・あぢがどうございまづ・・・がんざぎしゃん・・・」




ああもう、目から汗が溢れて止まんねえわ。


朝運動しすぎたからかなあ?




よかったなあ、2人とも。


本当に、よかったなあ。




「おじじゃん、なぎずぎだよ~」




「ないでない!ごれは心のあぜだ!!」




新が俺の顔を見て泣き笑いしている。


こら!警官諸君俺を見るな俺を!!


潰すぞ!目を!!






「ありがとうございますぅ!田中野さんのおかげですぅ!!」




目を真っ赤にした朋子さんが、俺の両手を握ってぶんぶん振り回している。


・・・俺の目もこんな感じなんだろうなあ、恥ずかしいのう。




「いいえ、新と志保ちゃんが2人で頑張ったからですよ。じゃなきゃ俺が見つける前に駄目だったでしょうからね、褒めてあげてください」




「ええ・・・ええ!まさか志保も詩谷にいたなんて・・・姉が戻るまで、2人は私が責任を持って面倒を見ます!」




ぐっとガッツポーズをしながら朋子さんは力強く言った。


本当にいい保護者がいてよかった・・・


毎回こうならいいんだけどなあ・・・






「僕、強くなるよおじさん。また稽古つけてね!」




「おう、姉ちゃんも叔母さんも男のお前が守ってやるんだぞ、新」




「田中野さん、なんてお礼を言ったらいいか・・・また来てくださいね」




「ああ、体に気を付けるんだぞ、志保ちゃん」




2人まとめてぎゅうと抱きしめた。


・・・まるで弟と妹が同時にできた気分だな・・・あ、甥と姪か。


これからも元気で過ごしてほしいな。






俺に手を振りながら、連れ立って校舎の奥に歩いていく3人に手を振り返す。


これから積もる話もあるだろうし、水入らずにしてあげよう。






さて、今日はこれからどうし・・・ギャア!?


あれは・・・ギャル子!!


3人の歩いていく先から、ずんずんと俺めがけて歩いてくる!!




「神崎さん探索行きましょ!!!」




「はいっ!あ、ええ!?ええええ!?」




力強く答える神崎さんの手を取り、ダッシュで校内から逃げる。


あっやべ、セクハラじゃんこれ!!


校舎から出たところですぐに手を放す。




「森山くんあじゃじゃしたーあ!!」「ひゃうん!」




「お、お疲れ様です・・・?」




そのまま流れるようにサクラを回収し、車に乗り込む。




「ちょっと!まちなさ・・・」




門を出るときに何やら聞こえた気がするが、たぶん精霊のささやきだろう。


そうに違いない!!!!




「あれは大木さんの・・・なるほど、そういうことでしたか、そういう・・・」




「・・・なんか、怒ってません?神崎さん」




「・・・知りませんっ」




「え、ええっ!?」




どこへ行くかも決めていない車内で、俺は神崎さんを必死でなだめた

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