第96話 無職散歩と子供のこと

無職散歩と子供のこと








「ひゃん!きゃん!」




「おーし、ちょっと待ってろよ~」




ドッグボウルにカリカリを入れて、クッキーみたいな予防薬を入れるっと。


そんで上から缶詰をちょいと・・・


うし、完成!




できたご飯をサクラの前に置く。




「・・・おすわり!」




てこ、と座るサクラ。




「・・・お手!」




たし、と前足を俺の手に乗せるサクラ。




「・・・待て!」




かわいらしい座り姿で、しっかりと待つ・・・ヨダレがすげえや。


なんか悪い事してる気になってきた。




「よおおおし!」




「んぎゅうる・・・ふわぅ!」




猛然とご飯に突撃するサクラ。






尻尾をぴこぴこ振りながらご飯を食べるサクラを見て、俺はつくづく思う。




・・・うちの子、天才じゃなかろうか。




ちょっと教えただけでお手もおすわりも待ても覚えたぞ。


ううむ、元々賢かったのかな。


柴は賢いってどっかで聞いたことがあるから、豆柴もそうなんだろうか。


柴は柴だし。




「まあいいや、賢かろうがアホだろうがサクラの可愛さには一切関係ないし」




「ひゃん」




『なんですか?』みたいな顔で振り返るサクラ。


おいおい、どうやったら目の間にご飯が付くんだよ。




「なんでもないよ、ホラ食べた食べた」




「もふ!」




食いながら返事したぞ、器用だなあ。






親戚の姉ちゃんが昔、犬を飼うと婚期が遅れると言っていたのをふと思い出す。


確かに、これだけ手のかかる可愛いのがいると恋愛とか結婚とかどうでもよくなりそうなもんだ。




まあ、その姉ちゃんは犬好きの旦那を捕まえて今や3人の子供と6匹の犬に囲まれているが。


・・・元気にしてっかなあ、姉ちゃん。


確か、なんとかっていう沖合の島に引っ越したんだよな。


島か・・・ゾンビがいなけりゃ天国だがな・・・


いや?島のゾンビさえ片付ければ楽園かもしれない。


うむ、いつか暇ができたら行ってみようかな。


漁港には船がいっぱいあるし。




サクラも連れていけたらいいなあ。


ビックリするぞ、向こうの犬はボルゾイとシュナウザーだし。


でかかったもんなあ、写真で見たけど。




「ひゃん!」




「お、綺麗に食べたなあサクラ、いい子だいい子」




足元に纏わりつくサクラを撫で、眉間の食ベカスを取ってやる。


おっと、ミルクも飲ませなきゃな。






ソファーに横になり、映画を見る。


何度も見ている、肺ガン末期のエクソシストが大暴れするやつだ。


これ好きなんだよなあ・・・


主演俳優の映画は全部見てるが、中でもこれが一番のお気に入りだ。




サクラは俺の腹のあたりで丸まって夢の中だ。


かわいいなあもう、なにしててもかわいいなこの生き物。




お、ここここ。


この中指をおっ立てるシーンがたまらん・・・最高。




ふう、何度見ても面白いな。


また半年後くらいに見よう。




さーてと、今日はオフだ。


これからどうしよう。




時計を見るとまだ10時だ。




サクラは起きて部屋の中をあちこちうろうろしている。




「もふ!ももふ!!」




ん?なんだ一体・・・はは。




リードを咥えたサクラが、キラキラした目でこちらを見ている。


尻尾も大忙しだ。




・・・うん、そうだな。


今日は何もないし、雨も降りそうにない・・・いっちょサクラと散歩するか。


結構遠くまで行ってみようかな。




「よーし、散歩に行くかサクラ」




「ひゃん!」








ご機嫌なサクラにリードを付け、道に下ろす。


さてと、どっちに行こうかな。


あまり入り組んだ場所だとゾンビの奇襲が怖いし、とりあえず土手沿いをゆっくり歩くかな。




家の裏から土手に上り、左へ曲がる。


右にずううっと行けば秋月町だ。


今回は川に沿って歩こう。


見晴らしもいいし。




ポシェットも餌も水も用意したし、武器も木刀と脇差、剣鉈、手裏剣がある。


おまけにリュックも。


完全装備である。






「う~ん、平和だ」




先を歩くサクラの尻尾を見ながら土手を歩く。


日差しも気持ちいいし、空気もさわやかだ。


花粉症持ちじゃなくてよかった。




キラキラ輝く詩谷川。


風にそよぐ草花。


うん、まるでゾンビ騒動なんてないような穏やかさだ。




鳥の鳴き声が風に乗って聞こえる。


車の音や飛行機の音は聞こえない。






「・・・アアアアアアアアアアアア!!!」






遠くからゾンビの叫びが聞こえてくる・・・




うん、ゾンビ騒動あったわ。


一瞬で現実に引き戻されたぜ、畜生め。




ビックリしたサクラが足につかまってくる。




「大丈夫だよサクラ、遠いから大丈夫」




「くぅん」




気を取り直して散歩を再開。


左の住宅街にゾンビがいるようだな。


距離も離れてるし、こっちの見晴らしはいいので奇襲の心配はない。




おおかた、何かが風で倒れてその音にゾンビが反応しているんだろう。




そのまま川沿いに歩くと、大きな橋にぶつかった。


普段北区に行くのに使ってる橋は、秋月町寄りの方だ。


・・・そういえばこっちは使ってないな。


渡った先には・・・たしかコンビニがあったはずだ。




「サクラ・・・渡るか、橋」




「わん!」




同意も取れたので行くとするか。


最近移動は車ばっかりだったから新鮮だなあ。




橋の前で左右を確認する。


・・・橋じゃない方にはゾンビなし。


・・・橋の方は・・・両車線とも放置車両がごった返しててわからん。


歩道と車道の間は手すりで区切られているし、大丈夫だとは思う。


この歩道は広いし、端の方を歩こうか。




サクラはご機嫌でてふてふ歩いていく。


時折俺を振り返る仕草がたまらなくかわいい。


はあ、幸せだなあ。




こちら側の放置車両には人が乗っていないなあ。


逃げたか、それともゾンビになってどっかへ行ったか。


向こう側は・・・うわ、ガラス越しに大変なことになった死体がチラホラ見える。


ううむ、こちらとあちらの違いはなんだろうなあ・・・日当たりとか?まさかなあ。




丁度橋の中間地点まで来た。


流れる川がよく見える。




「サクラ、あそこにちっちゃい中州があるだろ?昔あそこまで泳いだんだよ」




「わふ」




サクラを抱え上げて川を見せる。


まんまるな目をキラキラさせてじっと見つめている。




懐かしいなあ・・・あの時は友達が溺れかけて大変だったんだ。


元気かなあ田代・・・専門学校出て修理工になったんだっけ、確か。


「お前が車買ったら格安で整備してやるよ!」って言ってたなあ。


龍宮の整備工場で働いてるんだったか?


・・・生きてるといいけどなあ。




さてさて、散歩再開。




ん?


何だこの音・・・うおお!?


ひっくり返った放置車両の中から、ゾンビがドアに体当たりしてる!


半身ゾンビじゃないけど、事故の衝撃か手足がボキボキになってるな・・・


ああなると哀れだよなあ、おそらく誰かに処理されるまで延々とあの行動を取り続けるんだろう。


体当たりくらいで、ガッチリロックされたドアは開かないだろうしなあ。


いつか警察や自衛隊の手が届くことを祈ろう、南無南無。




おや?


サクラの歩みが遅くなってきた。


申し訳なさそうに俺の顔を見上げてくる。


ああ、疲れてきたのか。


自宅からだいたい3キロは歩いたもんなあ。


子犬の体力では辛かろう。




「おいで、サクラ」




「きゅ~ん・・・」




「なんだよ気にすんな、子供なんだからお父ちゃんに任せな」




しょぼくれた顔のサクラを抱き上げ、ポシェットにIN。


回復するまでこのスタイルで歩こう。


引き返すのも中途半端だしな。




そのままゆっくりと歩き、対岸に到着した。


車道が下りていく先に、目的のものを発見。




あったよ!コンビニが!


・・・マジか!?裏にペットショップまであるじゃないか!!


今までは興味がなかったから気付かなかったぜ・・・




とりあえずコンビニから物色するとしよう。




・・・なんにもねえ。


店内がビックリするほどがらんどうだ。


念の入った略奪ぶりだなあ・・・煙草もない。


残ってるのは・・・おいおいマンドレイクが5カートンもあるじゃないか!!


不人気ぶりが嬉しくも悲しい。




バックヤードに入る。




ううん、酒と・・・つまみしか在庫がないな。


つまみだけ持っていこう・・・


あ、プロテインバーがあるな。


・・・これ不味くて有名な奴じゃないか。


まあ、カロリーになるし最後の砦的な意味で持っていくか・・・




サクラは興味深そうに周囲を見回している。


大冒険だもんな、今までに比べると。




さてと、では裏のペットショップに行くかな。






と言うわけで到着、なのだが・・・


このペットショップ、デカい。


デカいから何が問題かというと・・・ペットそのものを販売していた可能性がある。




正面のガラスから中を覗き込むと、やはり奥の方にケージらしきものが見える。


うう・・・どうしようかな。


餓死したペットの死体と対面したくはない・・・可愛そうだし、臭いもすごそうだ。


なんというか、見知らぬ人間が死んでいるよりよっぽどダメージがデカいのだ。


映画なんかでも、犬猫が死ぬ展開の方がきついし。




どうすっかなあ・・・サクラの食料はまだ潤沢にあるし、わざわざここで調達する必要も・・・


とりあえず臭いだけ確認しておこうか。


肉の腐った臭いならこの騒動で嫌って程嗅いだし。




不思議そうな顔をするサクラをベストの中に入れ、開けた扉の隙間から鼻を突っ込む。


・・・しないな、腐臭。


中にペットはいないのかな?




再びサクラをポシェットに入れ、扉をこじ開けて店内へ。


恐る恐る奥を確認したが、ペットがいたであろうケージは全て空になっていた。


・・・店員か誰かが逃がしたのかな?


まあ、可哀そうな死体がないなら探索を続行しよう。




「いっぱいあるなあ、サクラ、どれが食べたい?」




「わふ!」




「・・・これは猫用だな。魚好きなのか?」




ふむ、変わった犬だな。


とりあえず犬用の魚缶を探そう。




店内を回り、サクラの食料を回収する。


あ、大木くんが言ってたドライササミも回収しよう。


俺の非常食にもなるし。




しばらく物色し、リュックサック一杯に荷物を詰め込んだ。


よし、これで在庫がまた増えたぞ。




腕時計を確認すると丁度いい時間だったので、昼食にしよう。






コンビニまで戻り、裏にあった脚立を使って屋上へ登る。


ここならゾンビに襲われる心配もないしな。




「・・・よし!」




「わふ・・・ふもも!」




許可を出すと、さっき回収したばかりの犬用ツナ缶に突撃するサクラ。


おーおー、よく食うなあ。


やっぱり魚が好きなのかなあ。


やはり、今度釣りに連れて行ってやろう。




屋上の縁に腰かけ、煙草に火を点ける。


サクラの方には煙がいかない風向きだ。


あ~、うまい。


平和だあ・・・




暖かい日差し。


流れる雲。


飛ぶ鳥。


子供の悲鳴。






・・・悲鳴?






慌てて立ち上がってあたりを見回すと、前方にある団地から子供が走り出てくる。


後ろには追いかけるゾンビの姿。






「おおーい!こっちだ!!こっちに来おおおおい!!!」






大きく手を振る。


さすがに目の前の子供を見殺しにはできん!




俺の声に気付いた子供が、こちらへ必死にダッシュ。


野球帽を被った元気そうな子だ。




「サクラ!お父ちゃん仕事してくるからな!」




「ひゃん!」




置いたリュックにリードを手早く結び、木刀を掴んで屋上から飛び降りる。


着地するなり、勢いを殺さず前方へ駆ける。






「コンビニの屋上に逃げろ!脚立があるからそれ使え!!」




「う・・・うんっ!!」




「よっしゃ!後は俺に任せろ!!」




スピードを緩めずに子供とすれ違いながら、先頭のゾンビに手裏剣を投擲。




左目にずぶりと棒手裏剣がめり込むが、ゾンビの足は止まらない。


くっそ!やっぱり手裏剣は人間用だな。




「あああっ!!」




先頭のゾンビの顔面に、木刀をフルスイング。


棒手裏剣を脳に押し込む。




振り切った勢いを殺さずに、さらに踏み込んでもう一撃。


後ろのゾンビの首をへし折る。




「おらぁっ!!」




続くゾンビの腹に前蹴り、後ろのゾンビにぶつける。


その反動で一旦跳び下がり、残敵を確認。


残りはコイツ含めて3体!




「ぬうあっ!!」




俺に伸ばす腕を上から叩き落とし、柄頭で喉を砕く。




ぐっ!?


別の奴に掴まれた!




重心を落とし、腰の回転でゾンビの体勢を崩す。


そのまま木刀ごと突き飛ばし、剣鉈を抜く。




「っし!!」




寄ってくるもう1体の首を、力任せに骨ごと撫で斬った。


コイツで立ってるやつは最後だ。




「・・・ふう、武器が多いと取捨選択できていいな」




よし、残りにトドメ刺すか。








「おーい、もう大丈夫だぞ」




コンビニの屋上に声をかけ、脚立を登る。




「ひゃん!ひゃん!」




「おう、ただいまサクラ」




屋上には俺に飛びつかんばかりに興奮するサクラと、先程の野球帽の子供。




「あ・・・ありがとう、おじさん」




「どこも噛まれてないか?」




「うん、大丈夫!」




パッと確認するが、確かに怪我をしている様子はない。


よし、とりあえず一安心だな。


年齢は美玖ちゃんより少し上・・・6年生くらいかな。




「よかったよかった。俺は田中野、その子はサクラだ」




「・・・新、山中新やまなか・あらたです」




いかにも野球少年って感じだな。


まだ春なのに日に焼けて真っ黒だ。




「まあ、色々聞きたいことはあるんだが・・・腹減ってないか?」




見れば、頬がこけている。




「うん・・・3日、食べてない」




おおう、そりゃ大変だ。


ベストには・・・あるある大量のチョコバーが。




「ほれ、食え」




「・・・いいの?」




「遠慮すんな、まだまだいっぱいあるんだから」




「い、いただき、ます!」




おずおずと手を伸ばした新くんが、黙々とチョコバーを齧り始める。


久しぶりの食料に涙目だ。


追加で3枚渡すと、頭を下げながら受け取った。


しっかりした子だな。




「わふ・・・」




「サクラはさっき食べたでしょ」






3本のチョコバーと野菜ジュース(リュックに常備)を消費し、新くんはやっと人心地ついた様子だ。




「本当にありがとう、田中野さん」




「おう、気にすんな」




さて、腹も膨れたろうし色々聞くかな。




「で、だ。新くんはどうして・・・」




「あの!お願いがあるんだ!!」




あらら、出鼻を挫かれた。




「お、おお・・・どした」




「姉ちゃんを・・・姉ちゃんを助けて、田中野さん!!」




新くんはそう言うと、屋上で土下座した。


・・・むう。


子供ながらしっかりした頼み方だ。


土下座はやりすぎだが。




「・・・わかった、と言いたいがまるで状況がわからん、詳しく説明してくれ」




「うん!・・・あのさ、僕と姉ちゃんはそこの団地で暮らしてるんだけど・・・」




「ふむ、両親は?」




「お父さんは元々いない。お母さんは仕事に行って・・・まだ、帰ってこない」




「なるほど、中断して悪かったな・・・それで?」




聞けば、一緒に暮らしている高校生のお姉さんは、小学校の時の事故で片足が不自由なのだと言う。


この騒動が起こってからは彼が食料を集めたりしていたが、最近は中々収穫もない。


お姉さんは彼に気を遣ってここ4日ほど、ほぼ水しか飲まず、絶食の生活なのだとか。


・・・なるほど、そいつは大変だ。


高校生なら食べ盛り・・・水だけならもう長くはもたないだろう。




「・・・団地の他の家は頼れなかったのか?」




「鍵が閉まってる家も多いし、いても分ける食べ物はないって・・・」




・・・まあ、そうだろうな。


この状況下だ、家族や親戚を優先するのは当然だ。


俺なら留守宅を物色するが、さすがに小学生にそこまでやれというのも無理だろう。




「・・・わかった、とりあえず家に案内してくれ」




「ありがとう!」




・・・ここまで聞いちまったら、帰るに帰れないなあ。


俺もそこまで外道じゃないし。


助けちまったんだから、せめて避難所に行くまでは面倒を見よう。


避難所が駄目なら、俺の家に連れて行くしかないな。


こうまで首を突っ込んだんだ、責任ってもんがある。




リュックを背負い、サクラをポシェットに入れて準備する。






団地の中を歩く。


俺が前方、アラタくんが後方だ。


さっきの大騒ぎでもうゾンビはいないと思うが・・・念のためだな。




「ここ、僕のうち」




団地の4階の角部屋がそうだった。


足が不自由なお姉さん、ここじゃたしかにしんどいだろうな・・・




新くんがカギを開け、中へ入る。




「姉ちゃん!」「新!大丈夫だったの!?」




お姉さんだろう声を聞きつつ、俺も中に入る。




「・・・こんちはー」「ひゃん!」




「だ、誰ですか!?」




玄関先でアラタを抱きしめているお姉さんが、こちらをキッと睨んでくる。


うん、怪しさ百点満点だもんな、俺。




「姉ちゃん!この人が僕を助けてくれたんだよ!」




うん、説明はアラタくんに任せよう。






「あの、申し訳ありません、弟の恩人に・・・」




「いやいや、それが普通の反応だからね」




アラタくんの説明を聞き、気の毒になるほど頭をペコペコ下げてくるお姉さんを手で制す。


礼儀正しい姉弟だなあ、きっとお母さんの教育がよかったんだろう。




「改めまして、田中野だ・・・お近づきのしるしにチョコバーどうぞ」




「山中志保やまなか・しほです・・・あのいいんですか?」




「新くんから聞いたよ、食べてないんだって?まだまだあるから遠慮しないで食べな」




「あ、ありがとうございます!」




「きゅ~ん・・・」




「だからさっき食べたでしょサクラは」




涙目でチョコバーを齧るお姉ちゃんを見る。


・・・危険なほど痩せてるな。


弟に食料を大分譲っていたらしい。


片足・・・なるほど、右足は義足か。


走ったり飛んだりするのは無理そうだ。




「まだまだあるからどうぞどうぞ・・・新くんも食え食え、育ち盛りなんだから」




言いつつ、各部ポケットからチョコバーを放出。


フハハ、追加で8枚じゃい!




「田中野さんのポケット、すげえ・・・」




「便利だぞ?釣り用のベストは」




玄関先でチョコバーをひたすら齧る姉弟を微笑ましく見ながら、俺はこれからの算段を付けていた。








「きゅ~ん、くぅん」




「・・・ササミだけだぞ」




「わぉん!」




全く、甘いね俺も。

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