俺はドデカミンストロングだった

あq

俺はドデカミンストロングだった

困った。俺は人間なんだが、さっきまではドデカミンストロングだった。自動販売機に時々売ってる、300mlの缶々のやつ。誤解しているかもしれないが、ドデカミンとドデカミンストロングは違う商品だ。どう違うかと言うと、ドデカミンストロングはMonsterやRedBullのような錚々たるエナジードリンクに肩を並べる度胸はないが、ドデカミンのようにそこらの炭酸飲料の顔色を伺うつもりは無えと言いたげな、半グレみたいな感じ。もちろんこれは謙遜で、ドデカミンストロングはドデカミンよりも誇り高い。当然だ。

まあ今は人間になっているが、本当に、ちょっと前まではドデカミンストロングだった。

とは言ってもドデカミンストロングには目も鼻もない。君達が大事に保管してくれたからといって育つものでもないし、そう簡単に腐るものでもない。勿論そのことに文句もない。そもそも、ドデカミンストロングが自分がドデカミンストロングであることを認めることはない。ドデカミンストロングたるもの、ドデカミンストロング然として自然に存在しているものなのだ。そういうことを、さっき知った。人間になって初めて、自分がドデカミンストロングであったことを知ったのだ。

疲れた。ドデカミンストロングの頃の俺は疲れることを知らなかった。俺はドデカミンの中でも、いやドデカミンストロングの中でもそこそこに優秀な部類に入っていたのではないか。

また、ドデカミンストロングになりたい。この際ドデカミンでもいい。しかしどうだろう。ドデカミンが人間になることはあっても、人間がドデカミンになることはないように思える。こう、必要なエネルギーというやつがケタ違いな気がする。

せめて、ドデカミンストロングを買いに自動販売機まで走っていこう。これが元ドデカミンストロングとしての矜恃というものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺はドデカミンストロングだった あq @etoooooe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ