第6話 見に来ているのはアンチであり大切な証人

「人が集まって頂いたところで今回この配信を開いた理由をお話させていただきたいと思います。」




現在の視聴者は200人と少しとなっているがその視聴者が増える速度は普通に見れるものではなかった。


一部のホワイト企業、学生などが帰宅してくるであろう健康的な時間に配信を始めたこともあり興味を持つものがこの配信に集まるのは必然とも言えた。


配信の待機時間を長めにとっていたことも人を集めるのに一役買っている。すべてが考えたとおりとは行かず、人の話を聞きに来たと言うより罵詈雑言を浴びせにきたと言う人物は想像より多く、肝心の質問を求めたところでそれに答えてくれるかが心配になった。




「1つ目に今回話に上がった事件に付きまして私公月冬は関連しておらず、また面識等の関わりがなかった事を証言させてください。ネットに出回っている写真に付きましても撮られた記憶はなく、捜査等の協力につきましては来ていない、もしくはインターホンの故障により出ることが出来ませんでした。今回の騒動が落ち着き周りの影響が少なくなった時点で行こうと思います」




『矛盾点すごくない?警察行く気なかったでしょ』


『言ってることとやってること意味不明すぎて頭の悪さがにじみ出てる』


『 ネ ッ ト の お も ち ゃ 』


『説明が足りない、だからやらかしたのでは?』




説明する順番を間違えたか、忘れてはならないよう大切なことのため最初に言ったことが仇となり、煽るようなコメントが増えたがこれは仕方がない。後で揚げ足を取られるようなことになり後出し報告をしてしまう方が信用が低くなるため誠実さの演出には必要だった。噂とは違い混乱を招くが、事実から話すことで後から紹介する事柄にも納得がいきやすくなる。




「これらの事を前提として皆さんに聞いていただく内容としては無実である証明をするとともに疑われている内容に答えることで今持たれている不信感を払拭するために配信を開きました。もちろん信じてもらえるかはわかりませんがネットに広まっている内容が全てではありません」




『話が早いじゃん、自首しよ』


『言い訳すれば墓穴掘るだけって一番言われてるから』


『犯罪者がなにか言ってる。』


『前置きはプラス10点、やったことはマイナス10万点くらい』




反応は早くそれぞれが思い思いの意見をコメントしていく、来ている人たちは元々ネットの住人なのかふざけたような返しをしている。まだ話を聞いてもらえはしないだろうと思い考えていた案を出す。




「皆さんに信じてもらうため、気になっている、または疑っている部分を質問されれば順次答えられる質問に答えていき、疑いを晴らしていくことで、私の人となりを知っていただければ印象が変わると考えています。プライベートであっても個人のプライバシーを考えた範疇であればお答えします」




コメントの流れは急激に早くなり、増える視聴者と追いきれないような質問の数々、途中に紛れる罵倒も霞んで見えるほど早い流れだ。質問の策が功を奏したようで一安心だが質問にまとまりがないため答える側が選ばなければならない。


こういった時に事前にSNSなどで告知や質問を募集し集計すればよかったと考えるが、そうすると炎上の勢いに呑まれ様々な反対を受け配信ができなくなる危険性があり、更に言えば今回自分が犯人に疑われた理由だって流れの良さを見るとはめようとしている人がいる可能性も否定できない、こちらからの行動を起こすことでそういった相手の行動を後手にさせることが出来る。


だからといって安心できるわけでもない、今は敵の多い状態で油断や付け入る隙を見せれば流れはまたたく間に向こうの手に渡るだろう。この配信は博打に近くそれだけの重要性がある。




「たくさんのご質問を頂きありがとうございます、こちらの方で目で追える限りはまとめていきます、少々お待ち下さい」




そうしている間にも様々な質問は飛び交うが目についたものを片っ端からパソコンのメモ帳に書き込みそれを配信画面に写す。とっさに考えたにしてはうまく行ったようで見ている視聴者がそれを基準に多数決を取るような形でコメントしていく。やっぱり一番はこれか。




「皆さんからの聞きたい質問が多い方から答えていこうと思います。コメントを正確に追えているわけではないので見逃しがあればすいません。『被害者や事件に関して何を考えているのか』これは一番最初に話すべき内容でもありますね、私から分かっている範囲と個人的な意見についてお答えします」


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