第4話 見つめ直し出来ることを探した
しんどさを訴える体が起きる時間だと起こしてきた。
新しい生活のために整えた健康的なリズムが太陽を遮るカーテンを無視して朝だと告げる。
体内時計の優秀さを恨みながら元々考えていた使い方をする機会は訪れるのだろうかと考え、その頃にはもう一度鍛え直すことになりそうで努力が無駄になったと辛くなった。
しかし起きてしまったからには時間を不意にするわけにも行かないだろう。なんとか寝れたことによって憂鬱な思考をある程度リセット出来ていた。なにか現状が打開できたわけではないが、それだけでも行動ができる余裕が生まれるためリセットする意味はある。
まずはSNSチェックだった、トレンドを見ればそこには殺害事件関するワードがいくつか並んでいる。
『JD殺害事件』
『公月冬くずきふゆ』
『あの事件について語るスレ』
昨日は出ていなかった名字にトレンドに上がるほどの掲示板、昨日の話題は鎮火することなく掲示板を出火元に広がっているようだった。事が事だけに食いつく人も多いだろう、女子大生と若い男、内部情報に過去を語る者。カメラが回りに待機していることも誰かが書き込み被害者加害者共に同じマンションに住んでいたという話に信憑性が増す。
話の一部が事実とわかればストーリーとして完成度が上がり、それを考察した動画やその動画を見た人が日常の話題として使われる。広まるには要素が揃いすぎており、掲示板に書かれるコメントは増え、その中には人格否定や見てもいないことをわかったかのように書いてくるもの、家族や育った場所に妄想を押し付け心無いことを書いてくる悪辣さである。
仕返しをすれば相手と同じレベルになると言うが正義側に立てば相手を殴る口実になる、現代においては匿名と言うリスクを払うことなく叩ける場所が出来たことで悪人善人関係なく正論を言っていれば世に適した正義としてみなされ、ストレス解消や愉悦、己をより良く見せるための材料として使われる。
普段なら何も思わないその光景は冤罪をかけられさらされている身からすると地獄だった。
覚悟をしていたためダメージは少ないものの響くものがある。
現状を確認する程度に留め感情的にならないようサイトを閉じ、誰かからメールが来ていないか確認した。すると春からいくつかのメールと同級生からテレビに名前が出ているというメッセージだった。
同級生からのメールを受けテレビをつける。普段はゲーム機のモニター程度にしか使っていない画面にニュースが映し出される。
見出しはこうだった『JD殺害事件の容疑者と疑われる人物が立てこもりか』
立てこもりとはいかにも物騒で誰かを人質にとってもいないし出てこいと言われてもいない。
周りにカメラがうろついてる時に家を出ようと言う人は猛者だと思う、一番は真犯人が捕まって素知らぬフリするのがいいだろう。名前は残るが殴った相手が無実だったとすればその話題にも触れにくく、更に相手が殴り返してこないのであれば傷付けた事実は永久封印だ。
見出しの破壊力は印象として強く残る。だが肝心の内容は事実に迫ることが少なくインタビューをさせるためか事実が不鮮明な内容をちらつかせこちらを煽っているように感じる。
話の規模が大きくなってきたのもあり現実感のなさから他人事のように感じ落ち着いて見られるようになっていた。外の光景はお前が当人だと言っているだろうがカーテンを開けるつもりはないため関係ない。
春からのメールを読もうと開いてみる、そこには
『大丈夫?あれから返信ないけど』
『ネットのコメント見た?結構ひどいこと書かれてるよ』
『流石にそっち行くわけにも行かないし落ち着くまで待ってるね、荷物はそのままでいいよ』
と相変わらず心配してるかわからないくらいあっさりしてる文に冷たさを感じる。
しかしこれは自分が昔、春にしてしまった行為あってのものだった。
少しの間嫌気に浸ったが今はそれを考えるときではないと思い、やるべきことを考える。
状況を整理しよう周りはカメラだらけで、警察に行こうものならカメラにさらされ警察署についても良い待遇は考えづらい。
掲示板の書き込みに参加しようものならせめての土台でこちらに勝ち目はないだろう。
一番いい策は何もせず鎮火するのを祈ること、これが一番楽で考える手間を放棄できるだろう。これこそ天に身を任せ結果にすべてを委ねることになる。それは嫌だった。
自身の身の潔白を証明したい、してやられたままは結果がどうあっても後悔するだろう。
いい方法がないか考えた上で推しを思い出す、配信サイトでやりたいことをして炎上してもなお謝罪と活動方針の明確化をすることで流れを変えるその姿に強さを感じ心を打たれていた。
周りがどう言おうと自分は無実であるため芯を持ちコメントに答えていけば信じる人も出てくるだろう。
結果として有罪がくだされようとやりたいことをして気持ちを言えることに後悔はない。
無罪をくだされれば行動に無駄はなくなり配信者として活動するのもありだろう。
心にそう言い聞かせ行動しようと決めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます