華の香りに惑う

@ushitora_shock

第1話 華の香りに惑う〜咲乱〜

華の香りに惑う〜咲乱〜


◆台本

金飾艮之介


◆使用条件

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※作品の著作権は放棄しておりません。無断転載や自作発言等、著作権を侵害する行為はお止め下さい。また、無断での改編や再配布も禁止致します。

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※アドリブ等はストーリーを捻じ曲げない、雰囲気を壊さない程度であればOKです。

※その他ご不明な点は以下までご相談ください。

Twitter:ushitora_shock


※不倫や浮気をテーマに添えていますのでR15及び苦手な方は閲覧しないよう願います。


◆キャラクター

葛西 華菜(かさい かな)(♀):専業主婦。

『インテリアか、薬か、猛毒か。』


神崎 寛咲(かんざき ひろさき)(♂):新進気鋭の若手エリート社員。

『咲き誇るもそれは果たして美しいのだろうか。』


旭 麻妃(あさひ まき)(♀):寛咲の彼女。OL。

『薬と毒を飲み込むには遅すぎた。』


葛西 香哉(かさい こうや)(♂):大手上場企業の役員。

『手を焼くべき花には水と栄養とほんの少しストレスを。』




『華の香りに惑う〜咲乱〜』作:金飾艮之介

https://kakuyomu.jp/works/16816452221225497286/episodes/16816452221225527291

葛西 華菜:

神崎 寛咲:

旭 麻妃:

葛西 香哉:


本編


(ホテルの一室。)


【寛咲】

んっ……華菜さん……?


【華菜】

……起こしちゃった?


【寛咲】

あはは……"また"寝かされちゃいましたね……。


【華菜】

ふふっ、いつになったら私に音を上げさせてくれるのかしら?


【寛咲】

いつでもそのつもりなんですけどね……。

本当に華菜さんは激しくされるのが上手で……すぐへばってしまいますよ。


【華菜】

そんなことないですよ?

今日の神崎さんだって、激しくって情熱的で……久しぶりに奥が熱くなってしまったわ。


【寛咲】

褒められてる……んでしょうか?

そこまで言わせて、今、ベッドに沈んでいるのはやっぱり恥ずかしいですね……。


【華菜】

かわいらしくていいじゃないですか。

こうやって相手して貰う人って、大概強がりで見栄っ張りで、変にプライドがあって面倒なのよ。

その点、神崎さんは素直でお気に入りよ?


【寛咲】

まったく……敵わないなぁ、華菜さんには。


【華菜】

ふふっ。


【寛咲】

時間、まだありますけど……。

良かったら……。


【華菜】

ええ。

今度はちゃんとエスコートしてくださる?




【寛咲M】

華菜さんとベッドを共にするのは、もう4度目になるが、しかし未だに華菜さんは僕のことを『神崎さん』と呼ぶ。

当然といえば当然なのだが。

僕は……華菜さんに浮気をしている。

華菜さんもその事を分かっていて、それでもこうして身体を重ねてくれる。

華菜さんとの"ソレ"は、砂漠より熱く、柘榴(ざくろ)のより紅く、囁きよりも甘く……僕の脳を溶かして止まない。

今まさに、僕の上で跳ねる華菜さんの表情で、また僕は抜けられない沼の底へと沈んでいくのだ──。



(葛西家、リビング。)



【華菜】

久しぶりね〜麻妃!!

少し痩せたかしら?


【麻妃】

もう……すっかり話し方まで上品になっちゃって、華菜ったら。

ふふ、久しぶり。


【華菜】

そうかしら?

って、そうね、麻妃の前でこんなに丁寧に喋るのも野暮ってものね。

何年ぶりかしら?


【麻妃】

ゼミ生以来……ひゃー!! 数えたくなーい!!


【華菜】(笑いながら)

数えてしまったら最後よねぇ……。


【麻妃】

華ー菜ーは、いいわよ!?

旦那さんは大手上場企業の役員で、こんな立派な家に住んでてさぁ?

専業主婦で家にいるだけでいい……(んだもんねぇ!?)


【華菜】(被せて)

ちょっ、ちょっとちょっと!!

これはこれで大変なのよ!?

掃除しなきゃいけないところとか、料理だって香哉さん好き嫌い多いから考えて作らないと……(いけないこともいっぱいあるし)


【麻妃】(被せて)

えぇ、えぇ、どうせ私はぁ? まだぁ?

一緒に住んでもいないしぃ? 食事は1人だしぃ?

えぇ、えぇ、週3カップ麺よ!!


【華菜】

…………。


【麻妃】

…………。


【華菜】

……ぷっ。



【二人】

あはははは!!



【華菜】

やだ、もう久しぶりよ!!

こんなにキャーキャーしちゃったの!!


【麻妃】

私だってそーよぉ!!

大人になっちゃうとなかなか出来ないもんねぇ!!


【華菜】

あー安心したわぁ。変わってなくって!!

会えて良かった。


【麻妃】

こっちのセリフよ……。

気が付いたらすごい玉の輿に乗っててさ?

まぁ華菜は美人だからこういうのもあるかと思ったけど……。


【華菜】

麻妃だって、今の彼氏はいい所で働いてるんでしょう?


【麻妃】

あ……うん……それ、なんだけどさ……。


【華菜】

……LINEで話してたやつね?


【麻妃】

本当……いい時に連絡してきてくれたな、って思った。

あのね────。





(大手上場企業会議室。)





【寛咲】

……という訳でございまして。

御社の白浜様から頂きましたお話は白紙という形で弊社では回答を、と。


【香哉】

…………。


【寛咲】

白浜様で着手頂いた事業拡大……大変魅力的でありましたが、手前の方で着手しておりまして。

案件の詳細は私で預からせて頂いてますので、今回私の方からのご回答が弊社決定ですので。


【香哉】

……わかりました。


【寛咲】

……まぁ、タイミングとしてはほとんど同じでしたが、弊社はご存知頂いてるかとは思いますがなにぶん、元々の事業としてアドバンテージがありましたから。


【香哉】

ええ……。

実権を握られてるのは神崎様だとか。


【寛咲】

ははは。

とんでもない……決済なくしては私など何ができるという訳でもありません。

御社……ひいては葛西様もそうではありませんか?


【香哉】

まぁ、その通りだが……。


【寛咲】

葛西様……。


【香哉】

いや、申し訳ない。

弊社まで新進気鋭の若武者が出向いてくれたことは誠に感謝する。

断りの話などしにくかろう?


【寛咲】

…………。


【香哉】

おっと、失礼。

言葉が過ぎてしまい……。


【寛咲】

ああ、いえ。

むしろ先程のように話して頂いた方が、かえって恐縮してしまいまして……。


【香哉】

いいや、私も言葉を選べなくて申し訳なかった。

この件についても、白浜に任せていたのだがどうにも動きが鈍いと思っていたらこのザマだ。

少し、苛立ってしまっていてね。


【寛咲】

ふむ……少々、意見を?


【香哉】

……ほう?

いいのですかな、御社とは、神崎様とは……。


【寛咲】

『様』なんて……是非、『君』でお願いしますよ、葛西様。


【香哉】

……なら、君もだ、神崎君。

楽に呼んでくれたまえ。


【寛咲】

……では、葛西さん、とお呼びしても?


【香哉】

構わないよ。

……さて。

いいのかね? 神崎君と私は企業としてライバル。

君の意見が君の首を絞めることになるかもしれんよ?


【寛咲】

確かに。

ですが、白浜様とやり取りをさせて頂いてる内に思ったのです。

葛西さんが手がける事業体系に白浜様は少々……荷が重すぎるかと。


【香哉】

若さは恐ろしいな。

そんなこと普通は思っても言わんよ。


【寛咲】

ええ、私も普段であれば言いません。

しかし、葛西さんならば、と。


【香哉】

そうだな……。

白浜……というよりも私の采配への意見だろう?

面と向かって、しかも他社で私からすれば若手だ。


【寛咲】

はい。


【香哉】

とんでもない侮辱だ。

……君の、その瞳を見なければね。


【寛咲】

恐縮です。


【香哉】

我が"自慢の部下"を出し抜いた、若武者の先見、ご教授願おう────。




オーセンティックバー・プライベートルーム。




【寛咲】

……ってことでさ、僕なりのメソッドを話してあげてさ。

逆に、経験ででしか得られない話もして貰えて勉強させてもらっちゃったんだ。


【華菜】

そうなのねぇ……素敵な出逢いだったみたいで良かったわ。


【寛咲】

白浜って人がやってたから僕の仕事になったけど、あの人がやってたら危うかっただろうね。


【華菜】

お仕事ひとつで男の人は命の取り合いをしているようね。


【寛咲】

その人にも若武者……なんて言われたなぁ。

命のやり取りしてるつもりなんてないんだけど、

まぁ男としてならかっこつけたい、見栄を張りたいとこあるかな?


【華菜】

あら、そんなことしなくても神崎さんは素敵よ?

男前で、仕事出来て……ベッドの上も男らしいわ。


【寛咲】

……ええ、あんなに情熱的になれるのは華菜さんにだけです。

華菜さん、今夜は?


【華菜】

ふふっ……落ち着いて。

せっかくなら、男の武勇伝語って女をその気にさせてみては?


【寛咲】

はは……参ったな。

言葉で語るのは男同士の特権だと思ってたけど……。

(顔を寄せて)僕はカラダで語るのが好きなんだけど?


【華菜】

……ええ。

それはもちろん楽しみ。

だからこそ、男の人の成功も私にとっては『後の楽しみ』のスパイスよ?


【寛咲】

やっぱり華菜さんには敵わないなぁ!!

ここはお姫様をしっかりエスコートさせて頂かないとね。

今日は紳士な男、神崎寛咲を見て貰おうかな。


【華菜】

楽しみね。

今回はどうやって成功を収めたのかしら?


【寛咲】

……内緒、と言っても華菜さんが誰かにどうこう言う話ではないと思いますが。


【華菜】

例え私が関係者だったとしても、漏らしたりしないわ。

貴方に抱かれなくなるのは寂しいもの。


【寛咲】

(咳払い)

今回の話はね、提携先からリークして貰ってたんだ。

話が進むのを聞いて規模としてはコストを割くかはうちの会社では否(いな)とする声は大きかったんだ。


【華菜】

……あら、そうだったの?

なら、どうして今回の話になったのかしら?


【寛咲】

だから。

僕は提案したんだ。

時間と労力、コスト使わせるだけ使わせて横から取ってしまおうと。


【華菜】

…………。


【寛咲】

マナー的にも、その後の立ち回りにも誠実さはないんだけどね。

……まぁ提携先の担当が女の人だったから出来たことだろうね。


【華菜】

……私と同じように?


【寛咲】(笑いながら)

まさか!!

華菜さんと比べたんじゃ、彼女は存在しないのに等しいよ!!

ただただ、今回の事業提携の話を聞き出してその話の進行を全部聞かせてもらってた。


【華菜】

まぁ……悪い男ね。

いつかバチが当たるわ。


【寛咲】

かもね。

けど、こんなこと提携先の取締役はおろか、自社の人間ですら知らない。

どうやってリークされていたか、なんてね。

ましてや競合他社諸々、知ろうとしたところで彼女は僕に逆らうことはない。


【華菜】

……どうしてかしら?


【寛咲】

『今回の件、成功すれば君にプロポーズしたいんだ。大仕事の報酬と役職を婚約指輪に添えて。』

……ってね。


【華菜】

女の敵ね。

貴方にその魅力があるのは頷けるけども。


【寛咲】

そう、あくまで僕は僕の武器を使っただけさ。

そんな言葉を信じて口も股も開いてしまう浅い女だ。

ああ、アッチの方も浅くてつまらなかったよ。


【華菜】

もう、下品よ。

紳士さはどこいっちゃったのかしら?


【寛咲】

あはははは!!

ごめんごめん、華菜さんの前でほかの女の話をするなんて話の流れにしてもマナー違反だったね。


【華菜】

ずっと紳士的でいる方が女性には優しくてよ?


【寛咲】

どうにも華菜さんには情熱が抑えきれなくなってしまってアグレシッブになってしまうね。


【華菜】

…………。


【寛咲】

さぁ……華菜さん……。

そろそろお店を……。


(SE:着信)


【華菜】

あら……ちょっとごめんなさい。


【寛咲】

あ……えぇ、どうぞ。

……なんだよ、この後っていう流れ出来てたのに。

今夜こそはモノにして、アイツとはおさらばって時にさぁ……。



(間)



【華菜】

ごめんなさい、お待たせしちゃったわね。


【寛咲】

えぇ、大丈夫ですよ。

さぁ……。


【華菜】

ごめんなさい、私もこの後も楽しみたいのは山々なんだけど……。

夫が今日は帰ってくるみたいなの。


【寛咲】

……今日は帰ってこないって言っていたのに?


【華菜】

仕事がどうやら片付けられたみたいなの。

本当にごめんなさい。

こればっかりは揺れてしまうと貴方との夜を過ごせなくなってしまうから……。


【寛咲】

……そうですね。

次は必ず、夜も楽しませますから。


【華菜】

……その日を、楽しみにしているわ。

今日は『有益』なお話ありがとう。



(間)



【寛咲】

……ちっ。

クソ旦那め。

あーあ、仕方ねぇ。

……もしもし? 麻妃か?

今から行くからシャワー浴びておけよ。




(麻妃宅、明朝。)

(SE:着信音が鳴り響く)




【麻妃】

ん……ひろくん……電話、鳴ってるよ……。


【寛咲】

あ……? んん……なんだよ、朝から……。

提携先……?

……もしもし、お待たせ致しま…………え?

白紙……?

い、いや!! ちょっと待ってください!!

一体、どうして……。

……はい、はい。

後ほど伺わせて頂きたく……。


【麻妃】

…………。


【寛咲】

……別の人間を、ですか。

はい……はい……わかりました……。

はい、失礼します……。

…………。


【麻妃】

ひろくん……?


【寛咲】

クソォ!!!!


【麻妃】

っ……!!


【寛咲】

どうなってんだ!?

なんで……どうして!?


【麻妃】

ひろくん……あの、さ。


【寛咲】

……なんだ。


【麻妃】

────浮気で得た仕事が、飛んじゃったんじゃない?


【寛咲】

っ!?


【麻妃】

あはは……やっぱり……今の、そうだったのね……。

そっか……華菜の言ってたこと、本当だったんだ……。


【寛咲】

華、菜…………?

華菜さん……? ど、どうして、華菜さんのこと……。


【麻妃】

……友達なの。

私、ひろくんのこと写真で見せたことがあって────。




(回想。葛西家にて華菜と麻妃再会の日。)





【麻妃】

……彼、ひろくんがさ。

最近冷たいっていうか、すごく大事にされてないって感じることが多くて……。

愛情よりも、性欲の吐き出し口みたいだったり、わだかまりの吐き出し口みたいな……。


【華菜】

あの、さ。

ずっと気のせいにしておこうって思ってたんだけどね。

神崎さん……女の人と、その、ホテルに入るところを……ね。

見ちゃったの。


【麻妃】

……えっ…………。

どういう、こと……?


【華菜】

黙ってたのはもちろん勘違いかもって思ったからなのもあるし、

その、相手の女性がね、夫の仕事の関係の人に見えて……。

だから夫にも聞いてみて、確信を得られたから今日、麻妃に連絡してみたの。


【麻妃】

…………それ、で?


【華菜】

女の人、夫の仕事先の取引相手だったみたい。

その話を最近聞いて、いてもたってもいられなくて……。


【麻妃】

やっぱり……そうだったんだ────。





(回想終了。麻妃宅。)





【麻妃】

……ねぇ、『華菜さん』って、どういうことなの?


【寛咲】

それ……は、いや……。

っ……!!

まさかっ…………!!!!


(華菜に電話をかけるも繋がらない)


【寛咲】

朝だからか……!?

くそっ……!!


【麻妃】

ひろくん……?

ねぇ、どういうことなのか、説明しなさいよッ!!!!

アンタ、私の親友である華菜……

葛西華菜にまで手を出してたりしないでしょうね!?


【寛咲】

そんなことは……何も、いや……。

……え? か、さい……?


【麻妃】

…………いいわ、話はまた聞く。

今日はもう帰って。

というか、『後始末』付けられてこないとなんじゃないの?


【寛咲】

かさい……うそ、だろ……。


【麻妃】

……早く出てけッ!!!!

この、クズ男ッ!!!!


【寛咲】

あっ!?


(寛咲、麻妃宅から締め出される)


【寛咲】

そんな……





(葛西家。)

(SE:着信音)




【香哉】

……熱烈なラブコールじゃないか。

出なくていいのかい?


【華菜】

あら、酷いこと言うのね?

誰のおかげで契約の裏が取れたとお思いかしら?


【香哉】

ああ、感謝しているよ、華菜。

元々男心として、いけ好かないとは思っていたが……。

まったく、とんでもない男だったな。

ホストにでもなった方が天職だったんじゃないかな。


【華菜】

あら、ダメよ?

あの子は顔はいいけど……アッチの方は可愛かったわ。

とっても残念。


【香哉】

……夫を前にはしたないな、華菜。


【華菜】

ふふっ……それも朝にね。


(SE:鳴り続ける携帯)


【香哉】

うるさい電話だな、よっぽど物言いがあるらしい。


【華菜】

まぁ、彼にしてみればそうなのかもしれないわね。

あの子に傷付けられた子達の方がよっぽど言いたいこと、聞きたいことに溢れているでしょうに。

香哉さん、少しだけいいかしら?


【香哉】

構わんよ。

お決まりのアレかい?


【華菜】

(微笑む)ええ。


(SE:電話に出る)


【寛咲】

っ!!

おいっ!! いったいどういう……





【華菜】

ごめんなさいね、神崎さん。

──これからは、『他人の関係』よ。



─了─

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