第34話
「シリエルさん……?」
『行きましょう。どうやら他の
僕の曖昧な呼びかけに、シリエルさんがきちんと意図をくみ取って答えを返してくる。
『五階層までは
駆け足で移動しながらシリエルさんの話に耳を傾ける。戦闘の音は続いている。
『助けが必要かは分かりませんが、とりあえず様子を確認しましょうか』
「そうだね! イクイップ・スワイプ!」
曲がり角に到達する。右手の中剣を握りなおすと、僕は迷宮の石壁に張り付いてそっと曲がり角の向こう側を覗き見た。
「やっぱり
四、いや五体の
「シリエルさん、この状況で【電光石火】使っていいかな?」
『やめておいたほうがいいでしょう。トオルの今の技量では他の
「じゃあ、【聖域】で一気に吹き飛ばす?」
『まともに姿が見えないのに
よし無理だ。
ううむ、何だか僕の【
仕方ない。【
「シリエルさん、とにかく行ってくる! 早く助けないとまずいかもしれないし!」
僕はそうシリエルさんに告げると、勢いをつけて迷宮の床を蹴りつけて飛び出した。
「
あえて大声を出して
正面の
よし! 一体少なくなった! この調子で
慌てたような声と僕の呆けた声が重なる。と同時に、迷宮通路内にドンドンドンドンと腹に響くような音が連続で響いた。
な、何だこれ! 何だこれ!
立ち竦む僕の頬を何かが掠めそうになり、迷宮の壁が爆発する。
「わー!?」
「う、動かないでね! じっとしてて!」
「どわー!!!」
腹の底に響く音が止まらない。パニックになる僕の周りでは、
だが、それでもなお。
「あ、あのー!! もう攻撃止めてくれないかなー!! もう
攻撃が止まない。
「む、無理ー! この【
砂埃の向こうから女性の声が聞こえてくる。
「い、一定時間!? ぎゃあああ、足元の床えぐれたぁ! 全自動って、つまりは僕を避けることもできないって事か!?」
「それが【闘圏乱舞】の効果なんで! アタシの認識外の敵でも滅せるんだから!」
「そ、それはすごいけど! その一定時間ってどのくらい続くのかな!? かなり危ないんだけど!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「あ、あの」
「がんばって!」
僕の悲痛な叫び声が迷宮にこだました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます