第28話
【帰還門】から【街】に戻ってきた僕は、そのまま真っ直ぐに
「シリエルさん、待った?」
「はい」
「そこは『ううん、今きたとこ』って言うべきところだと思うな」
「トオルは常時変なことを言いますね」
「安定のシリエルさんだ……」
金色の瞳がキョトンとした表情で僕を見つめてくるんだけど、【
「ところで、これからどこに行くの? とりあえず合流しましょうとしか聞いてなかったけど」
「訓練所です」
そう言うとシリエルさんは、フワリと髪の毛をなびかせながら歩き出した。
「トオルが取得した新【
「それで訓練所……どういう所なの?」
シリエルさんに追いついた僕は、隣に並びながら尋ねる。シリエルさんからフワリといい匂いがしてきて幸せマックスになるが、顔に出すと怒られそうなので真面目な顔を保つ。
「ヘイ、シリエルさん。どうして無言で離れるのかなあ?」
「勘でしょうか」
無駄に鋭い。
しばらく歩くと、円形の建物があった。ちょうど
「ここは
「へー」
受付でダイバーズウォッチをかざして認証を受けて中に入る。受付の女性が可愛かった。今はちょうどガラ空きらしい。
建物中央にあるスペースはドーム球場くらいの広さだった。これなら、どんな訓練でもできそうだ。
「新【
周りを興味深く見回していたら、シリエルさんが軽く腰を捻って準備体操をしていた。
「何とは? 検証と言ったではないですか、トオルはちゃんと聞いていたのですか」
「いやいや、まさかシリエルさんを相手に【
驚く僕を気にする事なくシリエルさんはいつの間にか用意していた細い剣を軽く振った。
「!」
風圧が訓練スペースに土埃を舞い上がらせた。咄嗟に顔を風圧から庇った腕の隙間から、細い剣をクルクルと巧みに操るシリエルさんの姿が見えた。
「大丈夫です。支援精霊ではありますが私も少しは戦う術は持っています。トオルの検証相手をする事は可能です」
少しはって……なんか無茶苦茶できる剣士の風格があるんですが!? おかしい、支援精霊なのに主人公らしさがハンパないぞ、うちのシリエルさんは。
これは最終的に僕がボコられる展開になりはしないだろうか。そんな恐怖を感じて躊躇っていると、シリエルさんが不思議そうに首を傾げた。
「そろそろ始めたいのですが、あまり気乗りしてないような感じがしますね」
「え、そ、そうかな? 実はちょっとお腹が痛くなってきてさ、いやー体調不良なのかんがぐごごご!?」
「訓練所で無料で使える回復ポーションです。治りましたね、さあ、やりましょうか」
シリエルさんのやる気がみなぎっておられる!
「ふむ、まだいまいちトオルのやる気が見えませんね」
あかん、これは何としてでもここから脱出せねば回復ポーション前提のリンチが始まりかねない。シリエルさんの隙を見て……。
「そうですね、わたしに一度でも攻撃を当てたら何かご褒美をあげることにでもしましょうか」
……ほほう?
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