第23話
「イクイップ・スワイプ!」
左手首のダイバーズウォッチに、右の二本指を左から右へと走らせる。スワイプを感知したダイバーズウォッチが、僕の右手にあらかじめ装備品として設定していた「中剣」を握らせる。刀身の長さは腕の肘から先までの長さとほぼ同じ。片手で扱えるバランスのいい武器だ。槍のほうが間合いが広く剣よりも安全に戦うことができるけども、五階層までで言えば通路の幅が狭く槍の利点を生かす場面が少ない。それに、小回りでかく乱する僕はどちらかというと剣で戦う方があっているように思う。
猿に似た
前方の
「スキル・スワイプ!」
間に合った。右手にサッカーボールほどサイズの柔らかい光球が宿る。眼前に
【聖域】――僕が認めたモノだけが入れる領域を作りだす【
逆に認めてないものは弾かれる。牙で僕をかみ砕く寸前だった
【
一対一なら、この
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
迷宮深度:4
潜心:2
潜技:2
潜体:2
【聖域】:1
【街】で、色々な物資を購入した僕は早速迷宮へと潜っていた。シリエルさんとは、例の建物の前で別れた。ちなみに、あの建物はクリケットさん達が所属する
僕と別れた後、シリエルさんはポータル内に設置された支援精霊がダイバーズウォッチに意識を移す間の【
「どういう感じの場所なの?」
『そうですね、トオルにわかりやすいイメージで言えば死体安置所でしょうか』
「言葉のチョイス」
だが、わかってしまう自分がいるのも事実。シリエルさんがぴくりとも動かずに寝ているのかー。添い寝してみたくあるね。
『トオル』
「咎められるようなことは一言も発言してないよ」
『トオル』
「すみません」
『疚しい事がありすぎるから謝るのですよ。それと、勘違いしてはいけません。
「マジで」
後ろから
「……ぐっ!」
後方に飛ばされる。迷宮の石壁に激突した。背中に強烈な痛みが走る。
足がふらつく僕に向かって
「ちくしょうめ!」
無理やりに距離をとる。防御だけでは戦闘は終わらない。小型円盾を消す。
「攻撃しないと! イクイップ・スワイプ!」
長爪を弾いた。
「ふう、危なかった」
『油断大敵です、トオル』
「うん、慣れてきて注意散漫だった。いてて、あの
傷の痛みに顔をしかめる。思えば迷宮に入って怪我らしい怪我は初めてかもしれない。
「確か軽い怪我なら強化された自然治癒力で治るんだっけ」
『そうですね、今のトオルなら大抵の傷は治ります』
「でも、感じる痛みは無視できないよね。いてて」
『痛みに気を取られて戦闘がおろそかになる危険もあります。治療するのが望ましいですが……』
インフォメーション・スワイプで地図作成画面を開く。今いる場所は四階層のど真ん中あたりで上と下どちらの階段にも遠すぎる。セーフティゾーンも当然ない。何も考えずに傷の手当など悠長にしていたら、
『五階層への階段を目指しましょう。そちらの方がわずかばかり近いです』
「いや、ここで治す」
僕はそう言うとダイバーズウォッチに二本指を走らせた。
「スキル・スワイプ」
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