第16話
【帰還門】をくぐった瞬間に、黄色と白色の光の乱舞に包まれた。あのリンリンという心地よい音が、はっきりとわかるくらいの大きさで聞こえてくる。それが、少しづつ消えていき――気が付くと、僕はあの門の前に立っていた。
「本当に……戻ってきたんだ」
門を見上げる。ばかばかしい程の大きさだ。周りを見渡せば、以前のようにまばらに人影が見える。
「
あの時の僕と同じように初めてダイバーズウォッチを扱うのか、おっかなびっくり触っているのが見える。あ、あの女の子、白目になってる。なるほど、
ちょっと引きながら、門から離れる。
便宜上『階層外』と呼んでいるここには、迷宮に入ることができる巨大な門と小さな町のような建物が密集している区域がある。
最初の時は、クリケットさんと話が終わった後にすぐ迷宮に向かったので、周りを確認しようだとか言う気も起こらなかった。
迷宮に潜る「だけ」と思っていたから、関係ないと思っていたし。でも、定期的に戻ってくることができるのなら話は別だ。
つまり、それはここには戻ってくる必要があるという事になる。迷宮を攻略するにはただひたすらに潜っていけばいい、わけじゃないのだろう。
さてとシリエルさんに言われて戻ってはみたけれど、これからどうしようかな。シリエルさんに聞くか。
「ヘイ、シリエルさん。とりあえず、どこ行こうか」
『インフォメーションを開いてください』
問いかけたら、こう言われた。ので、スワイプスワイプ。
目の前に表示されたのはいつもの画面。ではなく。
「
なんか、派手派手な感じの文字がデカデカと表示されている。え、なにこれ。内容も気になるけど、この派出派手な文字が邪魔過ぎてしょうがないんですけど。
右手でどかそう、くっ何だこれ、ビクともしないというか何故か重さを感じるんだけど!? ええい、どかないかこんちくしょう!
『
シリエルさんの頭の中に響いてくる声とともに、デカ文字も消えていった。力を込めて文字をどかそうとしていた僕は、そのまま地面にすっころんだ。
「イタタ……適正試練?」
『ここからのお話は、昨日トオルに講習した男性に委ねられます。詳細は、彼に確認してください』
「え、クリケットさんに?」
『はい、説明は彼が行う事になっています』
「了解……説明をクリケットさんが……」
僕はちゃんと聞くことができるのだろうか。僕はクリケットさんを訪ねるために立ち上がった。不安しか感じない。
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