第15話
石畳の床というおよそ寝るには一番最低な条件だったにもかかわらず、僕はぐっすりと睡眠をとっていた。
起床時刻は、六時に設定した。
今の所、周囲が時間経過によって明るくなったり暗くなったりはしていないけど、一定のリズムで生活していくことは悪い事じゃない思う。
それにだ。
『……六時になりました。トオル、起きてください』
「はい、喜んでー!」
ダイバーズウォッチに宿る支援精霊シリエルさんの可憐な声でモーニングコールしてもらえるのは幸せすぎやしませんか?
一時間かけて頼み込んだのは無駄じゃなかった。これから毎朝ハッピータイムがあるかと思うと、心が震える。
準備を整えると、セーフティゾーンの広間を抜け、探索を開始する。
「さて、と。二日目開始だ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
迷宮深度:3
潜心:2
潜技:2
潜体:2
【聖域】:1
「潜体」も「2」に上げることができた。
大きな猫のような動きが素早い
残念ながら、【
「飛び道具が欲しいなあ。ヘイ、シリエルさん。装備できる武器を増やす方法ってどういうのがあるの?」
『迷宮内で言うと、一番多いのは
「ほほぉ、エクスカリバーを手に入れることも夢じゃない、か」
まあ、そういった人物が
「待てよ? 確か星屑世界の中には、SFな世界もあるんだったよね? すると、マジか! ライトセーバーでフォースな戦いもできるって可能性が!」
いかん、これは胸熱な可能性ではなかろうか。赤石、積極的に獲得していきたい。
『もちろん、身に余る武器は使いこなすことはできません。心技体がその武器にあっていないと、装備として呼び出すことすらできないでしょう』
「イクイップ・スワイプしても不発になるって事か」
それは恥ずかしいかもしれない。格好つけて空手だったら耳が真っ赤になりそう。
「ん、出たな
そんな事を考えていたら、先の方の突き当りに
「イクイップ・スワイプ」
小さく呟いて、二本指を左手の甲に向かって走らせる。中剣を構えると、僕は
それから、一日の探索時間を使って、迷宮を進んでいく。そして、探索時間が七時間を経過したころ、五階層から下に降りる階段を発見した。
「……や、やっと見つかった。マッピングの一番最後の最後に見つかるとは……」
しかも、ここに行きつくには五階層の外側をぐるりと一周するような長い通路になっていた。ひどい階層物件だった。正気を疑うレベルでのデザインである。責任者出てきて欲しい。性格悪くない?
階段を過ぎた通路の先。今まで見たことが無かった扉があった。重厚な扉で、見るからに重要そうな雰囲気である。
「ヘイ、シリエルさん。扉見つけたんだけど。もしかして、これが例の門?」
『はい、【帰還門】です。ここから、最初の門まで戻ることができます。前にも言った通り、一度戻りますよ』
「了解」
地図作成画面に階段と【帰還門】を書き込む。
閉じられた扉に近づく。最初の門にあったような何やら複雑な彫刻がここにも彫られていた。芸術性高そうだけど、あんまりよく分かんないんだよね……。
「ふんぬ」
扉を押すか引っ張るか迷って、引っ張ってみた。お、重い、が、動かないほどじゃない。ゆっくりと扉を開けていく。
「うわ……」
黄色と白が混じったような光の乱舞が、部屋の中央にある小さな門から溢れていた。リンリンと小さな鈴のような音が聞こえている。
『これが【帰還門】です。門をくぐれば一瞬で転移します』
「綺麗だなぁ」
『……トオルは、これから何度でもこの門をくぐっていくでしょう』
「という事は、下の階層にも幾つもあるんだね」
『はい、
「なるほど」
迷宮にただひたすらに潜っていくのかと思っていたのだけれど、思ったのとはちょっと違うみたいだ。なにやら面白そうな感じがする。
「じゃあ、これが一回目の帰還だね」
『行きましょう』
そして、僕は【帰還門】をくぐった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます