第11話

【聖域】という新たな力を手に入れた僕は、意気揚々と三階の探索に乗り出し――。


「これって、どう使うんだろう……」


 早速、暗礁に乗り上げていた。


 インフォメーション・スワイプで目の前に表示した文字列を、再度確認する。


 迷宮深度:3

 潜心:2

 潜技:2

 潜体:1


 【聖域】:1


『星屑のごとく多種多様な世界から集まる【技能スキル】は、あまりにも数が多くその効果もはっきりとはしないものが多いのです。確かに【聖域】は神聖魔法の発達している世界で使われていましたが、扱える者の数も多くはなく、その詳細も明らかにはなっていません』


「ダイバーズウォッチとか物凄い道具が存在する狭間の世界なんだから、他の世界の情報なんてなんでも手に入りそうなイメージなんだけどなあ」


『世界をまたぐというのは簡単な事ではありませんよ。【構造理解】などの【技能スキル】も永遠ともいえるほどの長い年月をかけて解明されていったのです。いつか、【聖域】もそんな風に当たり前に【技能スキル】リストに並ぶようになるのかもしれませんが、今はまだその時ではありません。トオルは、自分でこの【技能スキル】の詳細を突き止める必要がありますね』


「手伝ってもらえるかな、シリエルさん」


『はい、こういう事こそ支援精霊の私の役目です』


 とりあえず、この【聖域】は、ダイバーズウォッチでいつでも呼び出せるように登録しておこう。


 ダイバーズウォッチの画面の下から上に二本指を走らせるスワイプ操作が、スキル・スワイプだ。


 スキル・スワイプは、スワイプ動作の後に簡易なジェスチャーを行う事によって【技能スキル】を操るらしい。【火球】などはスワイプ後に、目標を二本指で指すことで着弾させるのだとか。慣れてくると、いくつもの【火球】を両手で操作したりもできるらしい。ずるい。無茶苦茶かっこいい。次に【技能スキル】とるときは、是非【火球】を候補に挙げとこう。


『指を鳴らして空中に何本もの【水槍】を浮かべて一斉放射する【潜る者】ダイバーもいるそうですよ』


 素晴ら浪漫を理解する人たちが多すぎやしませんかね……。


 まあ、それはともかく今は【聖域】をスワイプできるように設定しよう。ダイバーズウォッチの画面を操作しながら、スキル・スワイプの先頭に【聖域】を登録する。いまのところ、僕が扱える【技能スキル】は一つだけ。だから、スワイプすればそれは自動的に【聖域】を選んだことになる。これが複数になってくると、登録したスキルの中からどれを選択するのか意識しながらスワイプ操作をすることが重要となり、そのために潜技だけではなく潜心も鍛える必要があるんだとか。心技体が密接に関連するのが【潜る者】ダイバーの力らしい。どれか突出しても意味はない。


「よし、登録完了」


『さっそく試用する事をお勧めします』


「だね、名前から想像すると、シールドとか防御系のような気がするんだけど」


 中剣を消して、二本指でスワイプする。


「スキル・スワイプ!」


 さあ、どんな効果が出る?

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