第8話
「おかしい……あれだけ戦ったのに、数値が伸びない……」
迷宮深度:
潜心:1
潜技:1
潜体:1
迷宮深度が表示されていないのは、ここが階段の途中だからである。二階へと降りる途中、僕は階段に座ってインフォメーションを見ていた。
間違っているのだろうと、何度もインフォメーションの表示を繰り返す。
しまいには、呼んでもいないのにシリエルさんから『何度も同じ操作をしないでください』と叱られてしまった。
「普通、こういう数値ってもう100ぐらい伸びてない……?」
『何が普通なのか理解できませんが、システム上なんの問題も発生していません。通常通りです』
シリエルさんが、優しそうな声で優しくないことを言う。
「ふむ……思ったよりも経験値が必要って事かな……? シリエルさん、後どのくらいで数値は上がりそうか教えてください」
『私には分かりかねます』
「知り得るシリエルさんが知り得ない……?」
『不思議そうな顔をされても困惑します。
「つまり、
『そういう事です。トオルがどう迷宮に向かい合っていくか。それによって、進化の度合いは変わっていくのです』
「なるほど……」
『ちなみに例によって例のごとく、この辺のくだりは
「……え゛」
『階段はいわゆるセーフティゾーンとなっています。
「ちょ、シリエルさん」
『いいですか、そもそも貴方は』
そして体感時間で一時間ぐらいシリエルさんの有り難いご高説を承った。インフォメーションをスワイプしたら、実時間でもそのぐらいだった。その間、ずっと階段で正座していました。えーと、なんだこれ。癖になりそう。いや違う。まだ、その境地にはいたってない。いたってない……はずだ。だよね?
だいたい、シリエルさんに叱られたのはクリケットさんがまともに教えてくれなかったからだ。あの意味不明な念仏を延々と聞き取るような説明を眠ることなく全部覚えるなんて不可能だ。そうだ、すべてはクリケットさんが悪い。そうだ、そうだ。
「おのれクリケット……!」
『なんで、すごく感謝してそうな顔で言ってるんですかね……』
それは、シリエルさんの気のせいである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
迷宮深度:
潜心:2
潜技:1
潜体:1
ちなみに、ふと確認したところ、潜心が「2」に上がっていた。何故。叱られたから?
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