第6話
戦闘は思ったよりも呆気なく終了した。
曲がり角から飛び出した僕は、
手に返ってきたのは、わずかな感触。
床に激しく衝撃とともに
青白い炎が陽炎のように、
それだけだった。それが、その
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
しばらく呆けたように佇んでいた僕は、ピシャリと両頬を叩いた。
「……うし、メンタル回復するか」
いつまでもウジウジしてられない。先は長いのだから。こんな調子では、いつまでたっても最深部には辿り着けない。気分を変えよう。こんな時は癒しだ。傷つきまくった僕の心を、ホンワカ暖まらせてくれる存在が必要だ。
「ヘイ、シリエルさん! リザルトです! 初回討伐ボーナスください!」
あと偉かったねって可憐な声で褒めて欲しいです!
『戦闘開始までの判断が遅すぎます。もし、先ほどの
「まさかの厳しい採点!?」
『剣を振りぬくのも感心しません。せっかくの奇襲だったのですから、二の手三の手に繋げるように、初手は細かい動きで相手の動きを奪うぐらいにすべきでした』
「……はい」
『このあたりの戦い方は、前にも言いましたが、事前に説明が行われていたはずです。
寝てました、と言ったらヤバいのは僕でも分かる。その後も、シリエルさんの採点は続いた。続きまくった。いつの間にか僕は正座でハイハイと首を垂れる下等生物と化していた。
『――反省点は以上です。次の戦闘では、これらの事を反映して、向上に努めてください』
「はい、ありがとうございます!」
『返事だけは合格点です』
素敵な台詞ともにシリエルさんが頭の中から消えていく。五体投地なみに、頭を伏せていた僕は歯ぎしりと共に呟いた。
「おのれクリケット」
あんな講習をうけさせたクリケットさんが悪い。逆恨みのようだが気のせいである。
『それと、トオル』
「はいいいいい!」
次会ったら、どんな悪態ついてやろうかと考えていると、ふいに鈴の音のような声が響いてきた。ピンと背筋が伸びる。
『初めての戦い、お疲れ様でした。怪我もなく……良かったです』
そんな言葉を残して。また存在が消えていった。
……正座を崩して、膝を抱え込むように座る。自然と、体が揺れていく。
「初回討伐ボーナス……最高じゃん」
小さい笑いを押さえきれない。気分はとっくに変わっていた。
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