第16話 ビャウォヴィエジャ大森林

シノスを出発したタケミとアリーシャは、ビャウォヴィエジャ大森林の入り口となる街、「ハイヌフカ」と「ナレフカ」のうち、近い方であるナレフカに向かう事にした。


森へ入れば魔物はいくらでもいるだろう。しかし、そもそもこの地方は、普通の動物も危険なものが多く、鹿や牛、狼などの爪や牙、肉も売れば十分お金になるそうだ。


途中でLvを少しでも上げておこう


ここまでの道中でタケミは5、アリーシャは4になっているが、下手をすれば死んでしまう。(主にアリーシャが)


ナレフカには狩猟系の冒険者が多く、Bランク登録の冒険者もきっといるだろうとアリーシャは言っていた。シノスでは120名ほどの冒険者が登録していたが、Bランク掲示板の前はいつもガラガラだった。


「アリーシャ、向こうに魔物がいる。100mくらい先だ。小さな山のふもとに林があるだろ?あの辺。たぶんゴブリン。他にも色々いるけど、全部で10匹くらいだ」

タケミのエコーロケーションは100mくらい先までしか感知できない。普通に耳を澄ませば300mくらい先まで音は拾えるが、魔力探知ではないので、魔物かどうかわからない。


「行きましょう。」

アリーシャは返事をする。

シノスを出てここまでで、すでにゴブリンを5匹、スラッグを2匹、リザードを1匹倒している。ナレフカに到着するまでにもう1Lvくらい上げておきたいところだ。


林の向こうには、小山があり、ほら穴が多数。小さな水場もあり、動物でも魔物でも、住みやすそうな環境だ。

改めてタケミは意識を集中し、魔力を探知しようと試みた。


「正面のほら穴にゴブリンが4匹。水場の近くに、、さっきのナメクジが3,、、4匹。左の、小道を少し登ったあたりに別のゴブリンたちが、、、3,4匹。魔物はこれくらいか」


動物は臭いと音で把握するくらいなので、大型の動物はむしろ魔物より危険かもしれない。ズメイのような大型でも、魔物でないため感知できなかった。


「水場から行こう。」


シノスを出発する前、アリーシャと共に装備品を買い揃えた。

300銀貨の予算で、少し大きめのテントで銀貨100枚を最初に使った。

鉱物を探知するサーチャーの魔道具で10枚。トーチが壊れたので買い直し、ランプも購入して10枚。簡易用のトイレ結界が30枚。

火魔法を二人とも使えないため、チャッカの魔道具で10枚。

これだけで160枚の銀貨を使った。


残った予算銀貨140枚で購入したのは、「清めの剣」という武器だ。

小さなナイフや包丁が銀貨2~5枚程度。鉄製のメイスやハンマーでも銀貨10枚で購入出来るわけだが、魔物と戦うとなれば、壊れる事も想定し、それを複数購入しておくのが普通だ。

しかし、タケミの場合、パンチで大体の敵は倒せるわけなので、問題は「打撃が効かない敵」などの存在だ。


清めの剣は普通の鋼鉄の剣に、「清めの光」という浄化の魔法を付与しており、魔物にダメージを与える効果がある。ナメクジの魔物はパンチで倒すのが厳しそう(というか触りたくない)だったので、これが役に立った。

「1,、、2,、、3!」

水場に居たナメクジの魔物「スラッグ」3匹を淡々と仕留める。


「次は、、、ほら穴だな。正面の4匹。」

タケミは慣れた感じで声を掛ける。


今回は2人だけだ。入り口付近でアリーシャがライトの魔法を使って奥を照らして、タケミが一気に攻め込む作戦だが、奥行きが深そうなら、入り口まで戻る事にした。

「ライトっつ!!」

入り口でアリーシャが光の魔法を使ってほら穴の中を照らすと、ゴブリンはそこには居なかった。

「もっと奥か。。。」

暗闇の中、洞窟を進むのはちょっと危険な気もする。

「ここは止めておこう」

タケミはほら穴に入るのをやめて、入り口付近の岩壁を殴って崩落させてほら穴を塞いだ。

「これで当分出てこれないだろう・・・」


ほら穴の入り口を塞いで、二人はもうひとつのほら穴へ移動する

「こっちは、、、入り口に見張りがいるな。一匹だけだが、、、」

拾った石ころを思い切り投げると、ゴブリンに命中した。メジャーリーガーの100マイルボールよりも強い威力で投げられた石ころは、一撃でゴブリンを仕留めた。

タケミはさっきと同じように入り口の岩壁を蹴っ飛ばして、小さな入り口を壊して広げた。


ドォォォォォ。。。

崩れた岩壁の向こうにはゴブリンの巣の「広間」があった。そこにゴブリン3匹がくつろいでいた。

「無防備だな。。。」

すかさずタケミはゴブリン2匹の頭部を殴り、ぶっ飛ばした。

残り1匹はびっくりしてうろたえているところを、アリーシャが杖でぶっ叩いた。

木のバットでも思い切り殴れば数回で死ぬだろう。攻撃用の杖というわけでは無かったが、それでもゴブリン程度なら十分倒せる。


「アリーシャ、、、無理しなくていい。僕が倒すよ」

タケミはアリーシャに言ったが

「いえ、私も少しは戦わないと。タケミさん、、全然けがとかしないし。出番無くなっちゃいますから」

アリーシャはそう言って健気にも戦闘に参加してくれた。

これでスラッグ3匹、ゴブリン4匹。


ほら穴の外へ出て耳を澄ますと、ガラガラと音がする。

どうやらさっき入り口を破壊して崩落させたほら穴のゴブリンたちが、外へ出ようとしているらしかった。

「アリーシャ、さっきのところへ戻ろう!」


急いで下のほら穴の前に行くと、数匹のゴブリンが崩落した入り口の小岩をどけて外へ出ようとしているところだった。


「ちょうどいい、これでやっつけてやる!」

タケミは思い切りゴブリンが出てこようとしている穴に向けて魔法を唱えた

「水魔法、ウォーターガンッ!!」


風呂桶をひっくり返すような勢いで水色のマナから水が放出されていく

ブシャァァァァァァァァァァァっ!!!!


穴の隙間に直接水流を送り込んだ。

しばらくして、送り込んだ水がほら穴いっぱいを埋め尽くしたらしく、穴の中から水が逆流してきた。


「これでしばらく放っておけば、溺死するだろう」

アリーシャとタケミは周囲を警戒し、他に魔物や動物、モンスターが居ない事を確認する。


「よし、頃あいだ。入り口を壊すぞ」

タケミが穴の隙間のがれきを蹴り飛ばした


ガラガラガラガラ・・・・・・


どかしたがれきの向こうに、おぼれ死んだゴブリンの死体が5つ。

引きずり出して核を回収する


エコーロケーションで探知しても、奥に魔力の反応はない。

「もう居ないな。よし、奥まで探索してみよう」


ランプとトーチの灯りをたよりに奥まで進み、物資を探る。

錆びたナイフや肉などがほとんどだったが、銅貨30枚、銀貨30枚ほども見つけた。

「やっぱりだ。冒険者を襲ったりして奪った銀貨なんかがあったな。」


そうして魔物を討伐しながらナレフカへ向かう途中、巨大な池に差し掛かった。

「ここはシェミアヌフカ池ですね。」

どんな魚や動物がいるか分からないので、水場には近づきすぎないように距離をとった。


「あれは、、ビッグバイソンですね。イノシシもいますね・・・」

アリーシャが動物についても教えてくれる。イノシシですら、個体によっては軽自動車くらいのサイズだったりするし、ビッグバイソンなどはハイエースくらいの大きさの個体が普通に歩いていた。

「ゴブリンよりも動物のが危険じゃないか。。。」


一番びっくりしたのは「エルク」と呼ばれる巨大な鹿だった。

ヘラジカがめちゃくちゃデカイといのはなんとなく知っていたが、二階建ての建売住宅が歩き回っているかのような巨大なヘラジカにはさすがに驚いた。

「低ランクの冒険者にとっては、ゴブリンよりもオオカミやバイソン、サソリやヘビの方が危険生物です。まあ、ズメイも魔物ではありませんでしたし、村や街の外へ出れば危険がたくさんですよね。あまり野宿はしたくないですね。」

アリーシャが言う意味がよく理解出来た。


認識阻害の魔道具や結界をしていても、あの巨大なヘラジカが歩いて来て、気づかないまま踏み潰される可能性もある。


結局野宿を避け、暗くなってからも歩き続けて、なんとかその日のうちにナレフカの街に辿り着く事が出来た。

道中さらに魔物を10匹ほど倒して、タケミのLvは6、アリーシャはLv5になっていた。


タケミ・ナカタLv6ヒト族 ファイター

武器 清めの剣

防具 服、靴

武神の加護、タケミナカタの寵愛

アビリティ「童帝」

魔法Lv 水1、風1、無1、重力1

所持アイテム:ボード、トーチ、ランプ、テント

所持金 銀貨63枚

割り振りSP残10


討伐報酬:魔物の核(小)30個(60銀分)

銀貨30枚、銅貨30枚(銀貨3枚分)

イノシシの肉5、オオカミの肉5、牙10、ヘラジカの角2、ヘラジカの肉8、バイソンの肉4


ナレフカの街についた時には、街の大時計は22時を過ぎていた。

とりあえず宿に泊まり、朝ギルドへ行くことにしよう。





















































































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