第17話 ナレフカ

ナレフカへ到着したのが遅い時間だったため、一泊してからギルドへ向かった。


冒険者ギルドはシノスよりもずっと大きかった。街の人口もずっと多い。

ギルドの入り口の扉を入ると、各ランクのクエスト掲示板を見ると、左方のB・Cランク掲示板にも冒険者が何人も居た。

「BランクCランク掲示板にも人が居るな。」

タケミは珍しそうに見ながらアリーシャに声を掛ける

「そうですね。シノスでは見かけない光景です。」

アリーシャも返事をする。今日は随分と機嫌が良さそうだ。

「アリーシャ。何か機嫌が良さそうねだ。どうしたの?」

「昨夜の宿、良かったですよね!広くて、ベッドも大きくて。シノスの宿と同じ銀貨3枚なのに、驚きました!」

アリーシャは興奮気味に話す。よほどうれしかったのだろう。

「ナレフカへ来るのも初めてですし。ちょっとワクワクしますね。」

そんな話をしながら、タケミたちはギルドの受付に声を掛けた。


「シノスの街から来た冒険者です。途中倒した動物の牙や皮、肉を買い取ってもらいたい」

タケミは慣れた感じで受付に話をする。まだこの世界に来て一カ月も経っていないが、もういっぱしの冒険者風だ。


「はい。では、計量しますので、あちらのカウンターへ」

促されてそばのカウンターへ並ぶ。

空港の荷物を預けるカウンターのようだ。


数分後、順番が来て、タケミたちは空間収納魔法の中から肉や牙を出して台座に乗せる。


「・・・・・猪、狼、ヘラジカ、バイソンの肉、合わせて22kgと。」

肉は希少部位や希少種の動物以外は種類にかかわらず一律のようだ。

「狼の牙10本。ヘラジカの角2本っと。」


肉は1kgあたり銀貨1枚⇒合計22枚

狼の牙は2本で銀貨1枚⇒合計5枚

ヘラジカの角は1本で銀貨4枚⇒合計8枚

全部で銀貨35枚になった。


魔物の核が30個で銀貨60枚


全部で95枚になった。ゴブリンの洞窟で見つけた銀貨袋などの収入も合わせれば

昨日だけで銀貨128枚。二人で分ければそれぞれが64枚分の銀貨を得たわけだ。


(日本円で言えば64000円か、それ以上ってことだよな。食事と宿泊で一日銀貨5枚くらい必要だけど、これなら2~3日狩りをすれば一カ月生活出来てしまうな)


案外効率よく稼げたようで、少し自信が付いた。

だが、清めの剣一本で140枚の銀貨だったので、装備品については日本での金銭感覚など全く通じない。

「まあ、なるべく節約するに越したことは無いか」

トーチやテントなどの魔道具で、日常生活を便利に過ごす事が出来るし、それが案外安価で普及しているのは驚きだった。


魔王とか魔族とかの脅威が無ければ、科学技術の世界より、魔道科学の方が良いかもしれない。火を使わないトーチの魔道具は、明るくて暖かいのに木材も使わないし二酸化炭素も出さない。


そんな事を考えてる間に、換金が終わった。

「昨夜の宿泊費を差し引いて、銀貨124枚か、、、」


とりあえずすぐにお金が必要な装備の買い替えも無い。とりあえずしばらくは

防具無し、武器は清めの剣or素手で十分だ。


「タケミさん、掲示板の右端、見てください」

アリーシャに促され、掲示板の方を見る

「赤い札があるな、なんだろう」

「あれは緊急クエストです。E・Fランク掲示板ですけど、緊急クエストがあるということは、難易度は高くないけど急いでるってことじゃないかと思います。」

「なるほど」


そう言って赤い札のあるクエストを見る。

タケミは15m以上離れていても掲示板の張り紙の文字が全部読める。


「【大型エルクの立派な角を求ム】って書いてあるね」

エルクとはこの地方に出没するヘラジカだ。昨日も見たが、二階建ての家くらいのサイズのヘラジカが普通に歩き回っていた。

熊も狼も、驚くようなサイズが普通に歩き回っていて、ゴブリンなんかは熊に食べられたりもするらしい。

「日本、、、っていうか地球世界とは栄養価が違うんだよな。マナが大気中にあるだけで、、、こんなにも世界が変わるんだな」

マナが在るか無いか。それだけの違いで、魔法や科学の違い。生物の違いが生まれる。

この世界についてもっと知りたいと思うようになっていた。


「タケミさん。このクエストやってみましょうよ!」

アリーシャは楽しそうに話した。

「報酬は、、、大型エルクの角1本で銀貨15枚!普通のヘラジカの角の4倍近いな」

さっき換金した角は銀貨4枚だった。普通のサイズのヘラジカだったし、当たり前だろう。という事は、この大型エルクというのは、昨晩見た家のように大きいエルクを指すのだろう。


「よし、行こう!」


タケミとアリーシャは意気揚々とナレフカでの最初のクエストを受注した。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る